外伝 ある冒険家の話
世界各地に天空の島や城などの天空に浮かぶ浮遊物の伝説や童話は無数に存在する。
黄金の宝玉によって支配されている城が空高く浮かんでいるとか、
巨大な鳥の力を借りて辿り着くことができるとかいうものや、
選ばれし者しかたどり着けない滅びの力を持っている要塞城が飛んでいるというもの、
空からゴミが降ってくるというもの、
空から魚や魚の骨、カエルや巨大な蜥蜴や羊、果ては深海魚までが降ってくるというものまである。
一体空の上には何があるのだろうか、
人は様々な想像を張り巡らせ、様々な説を紡いだ。
空の上には何かがある、と。
その中には異常気象が引き起こしたというようなもっともらしいものもあれば、
天に城やら島やら湖や海などが浮かんでいるというような荒唐無稽なものや、
大型の飛行可能なモンスターが喰ったエサを落としたというようなこの世界ならではもっともらしいものもある。
そのいずれが正解で間違いかはわからない。
その全てが正解かもしれないし、間違えなのかもしれない。
それらの真実を知るのはそれらを引き起こしているものだけだろう。
ところで話は変わるが水中で最強だと言われるものはなんだろうか?
水田の王者タガメ?
凶悪なホオジロザメ?
それとも海のギャングシャチ?
……ホオジロザメとシャチを選んだ貴方、この世界に来たなら長生きはできないだろう。
この世界の常識で考えるに貴方は危機管理意識が低いと言われるだろうから。
タガメを選んだ貴方、
貴方はきっとこの世界では長生きできそうだ。
でも少しだけ残念な所がある。
この世界の最強の水棲昆虫はカメムシ目のタガメではなく、
ぶんぶんと飛ぶ、あのハチなのだということだった。
仮に貴方がこの世界のものでない場合説明しておかねばならないであろうことがある。
この世界の昆虫系統のモンスターは決して弱くはない。
それどころか圧倒的強種族であるということ。
他の世界で最強とされる生物、例えば竜。
そのポジションに存在するのが強者たる昆虫族においてもなお強者たる蜂族だということ。
そしてその中でも女王蜂は他のゲームでいうところの神竜とかそういう反則域の存在であること。
この世界の竜はあくまで女王蜂からしたらただの獲物だということだ。
水棲昆虫。
おおよその場合陸、水中、空の3要素全てに適応し、
その肉食性を持って獲物の体液を啜る昆虫が多く、
若しくは幼虫の期間のみを水中で過ごすものが多く挙げられる。
その中には魚に水中で勝てるものも少なくはない。
水に落ちた虫とは違い水の中に住む虫は間違いなく強者である。
しかし、この世界における水棲の蜂の中には、
そのような強者が霞んで見える程の強者が存在する。
即ち、その生息域の全生態系の頂点。
それが、蜂モンスター、アクアワスプ系統である。
時代的に進めば、アクアワスプに後れシーヴェスパやシーアイスヴェスパなど、
総合的にはより強力な水棲の蜂族の系統が出現するが、
純粋に、『水を操る』という点においては単純にこの系統の頂点に座したモンスターを超えるものはいないであろうと言われている。
とある資料では、
1個体が地形を大きく変化させるだけの水を支配したというものもあるくらいだ。
最もその資料の信憑性は空に海が浮かぶという資料と並ぶほど少ないものだが。
しかし恐ろしいことにその荒唐無稽な資料は全く持って正しいというのだ。
空に浮かぶもはや一つの海といってもいい、淡水の巨大すぎる水たまり、
そこにアクアワスプ系統の頂点たる存在が巣を作っていた。というより海そのものが巣だった。
更に恐ろしいことにその海を空に浮かべているのは、その巣の女王蜂だということだ。
今回はそんなアクアワスプの巣
…………を研究する人間たちのお話。
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吾輩の名はガリ・ガリクントスイカ・バー。
世界を股にかける高名な冒険者である。
親しいものはバーさんとか、ガリとか呼んでいる。
諸君には特別にガリバー様と呼ぶことを特別に赦そう。
吾輩は様々な場所を冒険し、様々な話を聞いたし、
様々な体験もした。
そんな吾輩が今日はとっておきの話をしてやろう。
アレは吾輩が飛行機に乗った時のことだった。
…何?嘘だ?
そんなことはない。吾輩ほどになると優先して最新の技術を手に入れれるものなのだよ。
ちなみに飛行機の開発者のレフト兄弟も吾輩の友人だ。まぁあの兄弟はがめついとここ最近評判は悪いが、
昔は情熱あふれる熱い男たちだったよ。
……ファーボル?
…………あの男の事は今はおいておいてくれ。
ええい、話を進めるぞ。
吾輩は庶民には手が出せんとはいえ、富裕層の中で最近急速に有名になった飛行機を買い、
乗ってみることにした。
吾輩は天才だから初めて乗る飛行機も使い方を聞いただけで運転できた。
だが、空には様々な危険がある。
用意周到な吾輩は飛行機に様々なものを積むことにした。
剣、投げナイフ、爆弾、発煙剤、弓矢、銃、砲、セクシーな美女の絵、ボーリングのマイボール。
それとお気に入りのボトルシップ。
…後半の三つは重量と容積に関係で泣く泣く諦めたが。
吾輩は幾人かの冒険者たちと共に空の旅に出た。
道中パピーワイバーンや、マリグナントバット、スクリーミングバードなどに襲われたが、
吾輩は準備した剣や銃器などで撃ちおとしたり追い払ってやった。
まぁ、吾輩は見ての通り凄腕でな、友人たちと手を汲めばモンスター達だってなんとかなるのだ。
勇者を除けば人類最高位の我々程ともなればさもありなん、だ。
そんなこんなで様々な場所を飛び回ったわけだ。
そんな中、友人の一人が空に光る何かを見つけた。
真昼の空に光る何か、吾輩も昔見たことがある。
それは、天空の城だとか、天に浮かぶ宝玉だとか様々な話を聞いたことはあったが、
翼を持たぬヒトでは確かめるすべはなかった。
鳥人の知り合いの夫婦がいたのだが、夫の方がそれを見つけて飛び立ってついぞ帰ってこなかった。
遥か天空、そこに本当に城があったとすればそれはきっと呪われた城だったのだなとその時は思っていた。
友人の仇ともいえるその正体を確かめんと吾輩達はそれに向かって飛びあがっていった。
途中、話でしか聞いたことのないラピュータワイバーンに遭遇し、
仲間の一人が雇っていた護衛が喰われてしまったが、それでも吾輩達はその何かに向かった。
そろそろ光ったものの正体の全貌が見えてくると思ったとき、
周囲をラピュータワイバーンに囲まれていた。
流石の吾輩ももはや駄目だと思ったね、この時ばかりは。
絶望そのものの気分だった。
しかし、救いはあったのだ。
突如水の矢がラピュータワイバーン達を貫いたかと思うと、
再度飛んできた水に包め取られるようにしてラピュータワイバーン達は連れ去られていった。
その先に見たのだ。
吾輩達は。
天に浮かぶ伝説の正体を。
絶望を吹き飛ばす希望がそこに在るのだと吾輩はおろかにも一瞬信じ切っていた。
しかし、絶望を捕食するのは更なる絶望。
実際にそこに合ったのは呪われた古城の方が遥かにマシな産物だった。
そこに在ったのは、――――――空に浮かぶ湖、魔王の居城だった。
いや、厳密にはアレは大罪の主であるはずはないはずなのだが…。
突如友人の悲鳴が聞こえた。
振り向くとそこにはいつの間にかアクアワスプ系統らしき蜂種のモンスターが友人を喰っていた。
そして、操縦手を失った飛行機はそのまま墜ちて行った。
更に反対側から悲鳴が上がった。
もう一度振り向くとそこには先程射抜かれたはずの穴が開いたラピュータワイバーン達が別の友人の乗っている飛行機を捕えていた。
吾輩は逃げた。とにかく逃げた。逃げて逃げて逃げて逃げた。
そこからはよく覚えていない。
…気が付いたら民家の近くに不時着していた。
……信じるも信じないも諸君たちの勝手だ。
だが忠告はしておくぞ。空に光るものを見つけたら決して近づくな。
そこに在るのは絶望すら絶望させる絶望だ。
とある貴族風の男との対談記録より。




