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最終話。大魔王。

   『翅舞』空に佇み


   『胴造り』その瞳に的を宿し、


   『尾構え』針を向け


   『打起し』尾を振り起し


   『引分け』針を構え


   『会』心に映すは空白にして完全


   『離れ』その矢を放ち


   『残心』その命を奪うまで放ち続ける。


私はそのように『お母様』から習った射法で未熟ながらも尾針を撃ち続けます。

逃げるつもりはありません。

お母様ももしや勝てぬと思っていたのかもしれません。

それでも己が勝者と信じて戦い続け、

シンリュウソウを一時は全滅させ、世界樹を倒しかけるに至りました。

しかしあと少し届かず斃れてしまいました。





そして再び世界樹の根元から発生したシンリュウソウが私たちを攻めてきています。

きっと私では勝てない。

そう思うのは簡単でしょう。

ですが、妹たちですらお母様の在り方を、強者の在り方を体現しようとしている。

そんな中で私だけが逃げるなんてできませんし、

逃げようとも思いません。


そう思い針を撃ち続けていた時でした。


「……そっくりね。スペルヴィアと。

代わりなさい。大丈夫、安心して。

貴女よりはもっとうまくできますから。」





   『翅舞』空に佇み


   『胴造り』その瞳に的を宿し、


   『尾構え』針を向け


   『打起し』尾を振り起し


   『引分け』針を構え


   『会』心に映すは空白にして完全


   『離れ』その矢を放ち


   『残心』その命を奪うまで放ち続ける。


全矢違的同一点着的。

全ての竜の額と中央部を撃ち抜いては弾き飛ばしていく。

その構えは、その射姿は、まるでお母様のようで、

その先にある完成形のようで―――――――――――





―――――――――――∮∮――――――――――――――――




私は姫蜂達が庇う遺体を眺め思いました。




      また、護れませんでした。




あと少し早ければ、あと少し先に芽を摘んでおけば……、

後悔は消えません。

しかしスペルヴィアの表情はどこか吹っ切れたようなものでした。


何を思って死んでいったかはわからない。

ただひたすらに強さと勝利を求めて戦ったのか、娘たちを護りたかったのか、

スペルヴィアがそれを語ってくれることはもう二度とありません。


ですがその答えの証明はここにありました。

勝てぬと判ってなお戦おうとする、虚勢であっても自身を強者と信じ抜く姿勢、

容姿だけではない。その在り方までもが生き写し。

「……そっくりね。(スペルヴィア)と。」



もっと貴く、もっと強く、もっと美しく、

嘗て妹が目指した到達点。

それが私の誇りの名――――――『傲慢(superbia)』。

始祖様ただ一度だけ傍流であるこの身がその名を背負うことをお許しください。


始祖様、いるのならばどうか私に力を。

仇をたった後には、この魂ごと直ぐに御宗家にお返しいたします故に。


正統な直系でなく誇りを何度もひた隠してきた私ですが、

それでも、護りたいものが護りたかったものがあるのです。


<それが汝の誇りか。いいでしょう。

但しその強さは貴女が手にした誇りだけで証明しなさい。>


始祖…様?








―――――――――∮∮―――――――――――――





グラシリスのその背から刃の翅がいくつも生え、

そして生えきった刃の翅からグラシリスの誇りの形である翅へと変わっていく。



一対の巨大な炎を宿した翅が生える


これは仔を託した女王の誇り




一対のグラシリスによく似た水を宿した翅が生える


これは仔に託した母の誇り




一対の優しき土を宿した翅が生える


これは愛しきものを護る姉の誇り




一対の無垢な風を宿した翅が生える


これは強さを求めた妹の誇り



「お母…様…?」

「おかあさまと おなじ」

「うん おなじいろ」


妹の娘達はその背の翅に母を見た。







そしてその総てが彼女の誇り



総ての翅が元の色を淡く残したまま大いなる水を宿した蒼き翅に変わっていく。

その数、2枚、4枚、6,8,10――12枚。

それはかの始祖たる初代スペルヴィアに並ぶ羽根の枚数。

今この時において始祖は彼女を誇りの継承者として承認した証。

すなわち、大魔王の降臨である。




「貴女達、見ておきなさい。蜂族の誇り、見せてあげます。」









大いなる水の力を宿した翅は羽ばたくことなくグラシリスを宙へと浮かべている。

グラシリスに対し世界樹の根元から倍以上の数で再生したシンリュウソウは再び一斉に襲いかかってきたが、





            ふぁさっ




そんな軽やかな羽ばたきの音がグラシリスの翅からしたと同時に全ての竜が干からびて朽ち果てた。




再びグラシリスは羽ばたくことすらなく世界樹の近くへと飛んでいく。

先程世界樹が相手をした蜂以上の威圧感と得体の知れない何かがそこには存在していた。

世界樹もその異様さをようやく理解したのかその巨大な花を向け本格的な戦闘態勢に移る。


突如干乾びたシンリュウソウ達の様にならぬよう、

しっかりと水分を吸い上げ、乾燥に対する対策も行った。


乾燥さえ防げば後は何とかなる。そう、世界樹は判断したのであろう。

逆にいえば植物族の頂点に位置する世界樹にほぼ効果のない水による攻撃なんてことをしようとするなんて、

ただの知識もない馬鹿か、

効きにくいことを知ってなおそれで勝てると思っているよほど傲慢な存在かのどちらかだ。



グラシリスは勿論―――――――――――――――









「蜂族らしいやり方でやらしてもらいますね。」








地表から水分という水分が浮き上がり、

岩が割れ砂になり周囲一帯が次々と砂漠に代わっていく。


大気中の水分を掻き集め、

その結果、空気が乾燥していく。


池が干からび、河川が干からび、

逆流してきた海の水も根こそぎ干からびていく。




そうして集められた辺り一帯の水が全て宙に浮きあがっていく。

天蓋に大海が広がる。


大海は渦を巻き初め、次第にその速度は加速し、遂には暴風を生み出す。

その渦は下向きに円錐を形作っていた。


それは、誇りと強さを兼ね備えた当代最強の蜂の針。

その切っ先は世界樹の頂点にギリギリで当たらない所に浮かんでいた。


世界樹の枝が伸び、僅かにその先に触れたが、

触れると同時にその枝の根元ごと引き千切られて渦の中に消えていった。


世界樹の全本能が恐怖を告げるがもはやそれは遅すぎた。





大魔王は祝詞という名の死刑宣告を告げる。


「輝く天から深き地へ、けれども陰ることはなく、貴き誇りはこの胸に――――――――姉妹より継ぎし王家の栄光(スペルヴィア)。」















針が世界樹を付き割り大地に突き刺さった。











「さて、御嬢さん。いえ、宗家長女よ。貴女に『誇り』をお返しします。」

背の翅の内2枚が無垢な色を取り戻し抜け落ちていき、

その翅は吸い込まれるように本来の持ち主の娘の中に溶けて行った。


同時に6枚を残し何枚かの翅が抜け落ち、宙に消えていった。



「さて、次代の魔王よ。」


「はっはい、何でしょうか。」

緊張する長女にグラシリスは告げた。



「伯母さんの巣の場所が決まりましたので、いつでも遊びに来てください。」

「ほぇっ……しっ失礼しました。」


「別にいいですよそんなの。ちなみに場所は、――――――――――――――












            空の上です。

イマージョンワスプ。 推定RANK SSS?

超古代に生息していたとされる伝説上の蜂モンスターの女王。

天に浮かぶ水球を巣として実在していたという一笑に伏すレベルの検証結果もあるとされるが、

その詳しい証拠はなくネタ的な説とされていた。

が、しかし近年天に浮かぶ水球を見たというパイロットの通信報告があった際、

カメラから送られてきた映像に、

川に存在するはずのアクアワスプ系統らしき姿が映った後、

その連絡が途切れたため、

再びその説が見直され始めている。











ファデータさんちのその後

男手ひとつで育てたせいで娘がファザコンに。

嫁に出すまでに苦労しました。


スペルヴィアさんちのその後

長女が伯母信奉家に。

でも最近伯母の所の娘がやたら可愛くてしょうがない。

時折「女の子同士だからおっけーですよね。」

とか言って伯母を戦慄させている。


グラシリスさんちのその後

折角マイホームを作ったので仔作りしまくり。

因みに嫁はほぼ働かない。




いや、時折働いてますよ。

水ごと圧死させたプレデターXX引き上げたりとか色々。

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