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第三十九話。誇り。

女王の娘たちの中で唯一護るべき巣を持たないグラシリスは最も早く女王の巣『跡地』へ辿り着いた。

そこには成虫幼虫、貴賤問わず幾つも転がる蜂族の死体。そしてそれに群がる死肉喰い。







     穢らわしい、触れるな




グラシリスは地中より噴き出た川で蜂族のみを周囲に引き寄せ、

有象無象を押し流した後、

食い千切られほぼ原形が無い女王の亡骸を抱きしめ、

そして喰らった。




     立ち向かわずに逃げ続けるのはこれで終わりにします。








自分の母親を大勢の蜂族の死体の上で抱きしめながら喰らうグラシリスを見て、

遅れて到着したスペルヴィアは一瞬だけ、

グラシリスの背に、グラシリスに何処か似た誰かの翅と、

自身の母の翅が一対ずつ浮かんでいるのが見えた気がしたが、

もう一度見るとそこには何もなかった。




女王の葬式に遂にファデータは来ることはできなかった。

なぜなら彼女は今まさに、母の仇と相対していたからだ。



「お母様の仇…。

あなた、仔共たちをお願いしますわ。」


「そんな、自分だけできるなんてできるわけが―――――」


「あなた戦闘はからっきりでしょう。足手まといなの。

…だからせめて避難ぐらいしていてくれるかしら。」


「ファデータ……。」


「愛しているわ。さようなら。」







     例え勝ちえぬ絶望を前にしても貴き誇りはこの胸にある。

     妹が教えてくれた大切なものを護るという私の誇りが。

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