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第二十六話。『スペルヴィア』

ファデータさんの巣で一晩留まった次の日、

女王様の巣へ向かうことにしました。


移動している間には特に何もなく、無事に女王様の巣に着くことが出来ました。

門番の働き蜂も私の事を覚えていたようでフリーパスで女王様の部屋までつくことが出来ました。

「御無沙汰しておりました女王様。グラシリスです。」

「よく来た。して何か要件が?」


「はい、スペルヴィアちゃんがもうじき羽化するということで卵から離れれないファデータさんに代わって参りました。」

「そうか。」


「はい。それとご質問が。宜しいでしょうか?」

「構わない。申せ。」


「では、―――――――――――――――――――――何故スペルヴィアちゃんが『スペルヴィア』なのですか?」

「…っ。それはそなたが『識って』のことなのか。」


「はい。始祖スペルヴィア様と同じ名を持ち、同じ数の翅と強さと美しさを持つ姫がいつの日か誕生し、

世界はバグズの巣となるであろう。―――――――――――これが『直系』に伝わる伝承。

何か間違いがありましたか?」


「それを……誰から聞いた?」



「お母様…でしょうか?」

「既に死んでいたレクティーナ…が?」


「他の可能性は…?」

「女王様はやはりファデータさんのお母様ですね。同じことを聞きますね。

その結論はありません。

なぜなら、私はグラシリス。『スペルヴィア』ではありませんから。」


「しかし、『因子』は…。」

「それはスペルヴィアちゃんの役目です。私には荷が重すぎますので。

私は、世界に勝利しなくても自身の命が保証されていればそれでいいんです。」


「だが、『因子』を前提にすれば全ての説明がつく。

レクティが不完全な変異種でありながら一代でここまで完成しきった同一種を完成させたこと。

そなたが知るはずのない知識。それらの全てが。」


「…失礼ですが、私が健康に生まれてこれたのは始祖様ではなく母の愛のおかげだと思っています。

それに私が『スペルヴィア』になるということ、その意味を、女王様は理解されているのですか。」

「スペルヴィアの死。そういうことだ。」


「失礼なことを言っているのは判っています。貴女だけはそれを認めないで頂きたい。」

「……その通りだな。確かに済まないことをした。」


「それは、誰に対してですか?」

「私の娘『達』に対してだ。」


「すみません。差し出がましいことを言いました。」

「いや、そなたが言っていることにはそなたの誇りが確かに遭った。恥じることはない。」


「有難う御座います。ところで最初のご質問の件ですが。」

「なぜ、スペルヴィアの名がスペルヴィアなのか?ということか。」


「はい。」

「そなたはこの伝承も知っているか。――――暴君より大いなる血筋が誕生する。」


「はい。」

「私の種族名は『暴君雀蜂(タイラントヴェスパ)』。―――――つまり私の血筋に大いなる血筋、

即ち伝説のヴェスパが誕生する可能性が高いと思っていたからだ。」


「ではファデータさんではなく次女のスペルヴィアちゃんを選んだ理由はなんでしょうか。」

「見えた気がしたのだ。私がスペルヴィアを産んだときに見えぬラインが見えた気がしたのだ。」


「…そうでしたか。これでわかりました。有難う御座います。

ですがお一つだけ。」

「何か?」


「伝承などに頼ることが無くても、今ある私たち自身に流れる血そのものが蜂族の誇りなのだと、

その事をもう一度だけしっかりと思い直していただければ…。

御無礼を失礼いたしました。

ではスペルヴィアちゃんの所へ行ってまいります。有難う御座いました。」









―――――――――――――∮∮―――――――――――――――――




私としたことが若い娘に諭されてしまったか。


だが、血統を重んじつつも自身の最強を持ってこそ誇りとする。

誇りとは授かるだけではなく掴み取るもの。

語られるのではなく勝利を持って証明するもの。


逢う度に謙遜と臆病さを垣間見せ『傲慢』とは程遠いが…、

先程のあの在り方は、先ほど感じた輝きは、――――――――――確かに伝承の始祖様の―――――


グラシリス…。レクティ、お前の仔こそがやはり伝説の…。

いや、そのことを先程窘められたばかりであったな。

グラシリス、いえ、始祖様の御使いよ、願わくば私の娘たちをお頼みします。

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