第二十四話。自分の身が一番大事です。戦闘相手への思いやり?ないない。
翅の周囲を纏うように毒水を発生させた私は一気に2匹の翼竜へ加速します。
こういうのはいたぶるのではなく一気に決めるのが大事です。
まずはガンナープテラ。
不意を衝いて作りだした有利な状況で仕留めるのなら、
より厄介な方。
但しこの時注意するのは防がれたり躱されたときに深追いしないこと。
私の速度に反応できたガンナープテラが私の翅による斬撃に対応する姿勢を取っています。
このままではその爪で受け止められもみ合ってるうちにもう一匹の攻撃を受けるかもしれません。
ガンナープテラが対応姿勢を取りながら、
シュータープテラはまだ一気に攻めてきた私にビビっているのか狙いも定めずに、
その名が示す通りの射撃を口から放ってきます。
半無尽蔵に再生する歯が変形して前方に向かって生え変わりながら弾丸となって撃ち出される様は、
まさに弾丸のベルトを回しながら撃ち出すマシンガン。
…まぁ、マシンガンってなんなのか私にはわからないのですが。
しかし、この一撃で致命打を与えるつもりで挑まないと相手を激昂させるだけの結果に終わるのもまた事実。
ばら撒かれる散弾や狙って飛んでくる弾を集中力を高めて小移動で躱したり、
不規則に軌道を変えて照準を外させて回避しながら私が来てもいい様に構えたガンナープテラに接近します。
私の翅とガンナープテラの翼が接触する寸前、加速した勢いをなるべく殺さぬまま後方に回転します。
回転の為、若干遅れたタイミングであったものの私の翅を受け止めたガンナープテラには称賛を送ります。
―――――――――しかし、それも織り込み済みです。
回転した私の翅を受け止めたガンナープテラでしたが、
残念ながら私の尾針までは止めることはできなかったようでした。
回転がちょうど360度で元の位置に戻った瞬間、
私の尾針は下からガンナープテラの喉元を向いていました。
後方回転の勢いを殺さぬまま尾を上に跳ね上げた上での尾の『部位延長』。
ザシュッという皮を突き破る音をたて、私の尾針の先端がガンナープテラの後頭部から出ているのが見えます。
直ぐに私は尾針を抜き、
その場から一度離脱しなければなりません。
シュータープテラへの警戒を忘れたわけではありません。
尾針を一体の身体に刺したままという状態がどれだけ戦闘に不利かは理解しているつもりです。
身体を右下方に回しながら尾針を引きぬきながら、
シュータープテラの攻撃があってもいい様に翅を逆立てながら回転し一閃します。
運よくシュータープテラはまだ状況が飲みこめていなかったようだったので私の攻性回避は無意味に終わりました。
私はまずその場でシュータープテラから離れ、かつ把握できる位置、
シュータープテラの真上にそのまま飛行して移動します。
しばらく状況を飲みこめていなかったシュータープテラでしたが相方が力なく落ちていくのを見てようやく理解したのか、
私に向き直り攻撃しようと口を開こうとしました。
―――――――――しかし、それは遅すぎました。
結局私の尾針によってその口を縫いとめられたシュータープテラは口の中で歯の弾丸を暴発させてしまい、
更にその口の内部には私の尾針からドクドクと毒水が注がれ、暴発によって裂けた口の隙間や、
喉の奥に流し込まれていきます。
相方を殺されて悔しかったでしょう、恨めしかったでしょう、憎かったでしょう。
でも私にはそんなことは関係ありません。
別に見下しているわけではありません。
そんなことに構って自分の生存率を少しでも下げたくないんです。
利用できることは徹底的に利用し、
不利な条件はできるだけ排除する。
それが一般虫の私にできる戦い方です。
グラシリスはスキル『斉射』『連射』を手に入れた。
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「相変わらず容赦もなく無駄もない戦い方ね。」
私はシリスの戦い方を見て思う。
正直に言うと少しでも危なくなったら参戦しようとは思っていたけれどその必要すらなかったみたい。
先程の2匹の散弾に傷つくことなく接近し、
一匹を翅での斬撃をフェイクにした尾針の刺突により殺傷。
続いて最低限の安全を確保したのちまだ状況を飲みこんで行動に移そうとしたばかりのもう一匹の口を貫いて、
そのまま身体に水分を強制的に注ぎ続け破裂。
僅かに生きていたもののまだ水分が溜まった身体で羽ばたくことも姿勢を取ることもできず地に墜ちて行った翼竜は墜落死。
私はルヴィアには悪いけれどもシリスこそが伝説のヴェスパ。
いつか世界をバグズの支配下に変える大魔王。
十二翼纏う最強のヴェスパに至ると思っている。
「では墜落した翼竜2匹を持って帰りましょうか。――――シリスが大きい方で。」
「あ、っはい。………ところでさっきのオスの紹介の件ですけど…。」
「……そういえば言っていたわね。わかったわ、夫に聞いておくわね。」
「有難う御座います。私貰えるものは貰っておく主義なので。」
何より恐ろしいのは、
これだけの戦闘を行ってそれを特別なことだとは思っていないことね。
「シリス……恐ろしい娘。」
「えっ?今何か言いましたかファデータさん。」
「いえ、何でもないわ。それよりあまり血を零さないことね。勿体ないわ。」
「はい、わかりました。」




