第一話。 私、平凡ですから。
此処は古代のとある森、
小型草食恐竜モンスターであるカンプトサウルスを追っている巨大な肉食恐竜モンスター、レックスドラゴン。
レックスドラゴンはこの周辺の生態系の頂点であるかのような強力で凶悪な体つきをしている。
カンプトサウルスはその小回りの利く体で丸太などの障害物を巧みに利用して逃げていくが、
当時の爬虫類系モンスターでも強力な種であるレックスドラゴンはその脚力と巨体を生かし、
倒れた木を飛び越え、踏みつぶしカンプトサウルスを追っていく。
その距離はやがて縮まり、カンプトサウルスの上にレックスドラゴンの影が重なり、
凶悪な顎が獲物を捕えようと上に軽く振り上げられた瞬間だった。
レックスドラゴンの背から血が飛び散り、
レックスドラゴンは一瞬眼を大きく見開くがやがてその眼を白く濁らせ、
弱弱しく嘶くと地に伏した。
その背後にいたのは真の生態系の頂点捕食者、蜂族モンスター、ヴェスパである。
その背後から2匹の別の蜂族モンスターがやってきた。
レックスドラゴンを仕留めた蜂が一匹の蜂に言う。
「ほら、簡単でしょう?シリスもやってみなさい?ほら向こうにヘルレックスドラゴンが。」
「いやいや無理ですって。私を貴方達ジャイアントヴェスパの直系宗家と一緒にしないでください。
私はか弱い水生昆虫。色んな意味で場違いですって。」
「それでも最強種、蜂族ならもう少し誇り高くありなさい。始祖様に笑われますよ。
場所が悪いから無理などと…だったら私、海に行ってきてプレデターX位ならまた狩ってきてもいいのですけれど?」
「この規格外。しかも『また』ってなんですか、『また』って。ほらスペルヴィアちゃんもなんか言ってください。」
「私は……、シリスさんも全然大丈夫だと思いますよ。」
「あぁもうこの規格外姉妹は…。」
「蜂族に生まれただけで贅沢に思っていればいいのに。シリスは謙遜家ね。」
「えぇ、その強さでまだ自分は弱いとさらに高みを目指そうとする姿勢。私は好きですよ。」
「…どうしてそういう解釈になるのかな。天然って怖い。
…だってしょうがないじゃないですか。私だって死にたくないんですもの。」
「………貴女を狙って狩ろうなどという相手がいて?」
「…ご自分の事を全然わかっていませんね。」
「全く、恐れて川辺に近づけず衰弱死するものもいるというのに…。」
「何それ怖い。」
「姉様が言っているのは貴女の事ですよ。シリスさん。」
「………マジですか?」
これは、
この星の生態系の頂点に位置する昆虫種蜂族モンスターの一種でありながら、
ちょっと庶民的なミズバチ系のモンスターのシリスことグラシリスの物語である。
グラシリス
この物語の主虫公。
蜂族でもやや変わった、いやかなり変わった種族と性質を持つ。
やたらプライドが高い蜂族に生まれたものの低姿勢で庶民的。
しかし誇りを持たないわけではなく、表面的には表れていないだけ。
彼女の中で譲れないものごとに直面した時、
『最強種・蜂族』たりえる存在へと変貌する。
ヴェスパ
この星における最強種族。強大な力を齎す称号七つの大罪『傲慢』を受け継ぐ。
始祖スペルヴィアの血を現在最も強く受け継いでいるのは直系の一族の、
長女ファデータ、次女のスペルヴィア、そしてその妹たち。
ファデータとスペルヴィアは規格外のくせに庶民的なグラシリスと仲が良いが、
折を見てはその血に眠る誇りの力を引き出そうと画策している。
ファデータ
とてもヴェスパらしいヴェスパ。
お嬢様でプライドが高く、妹想いな姉蜂。
スペルヴィア
直系の先祖である偉大なる始祖スペルヴィアに倣って名付けられた宗家次女。
本虫は自他ともに認めるほど、とても真面目なのだが、キレると怖い。あと天然。
ちなみに遥か未来の話をすると血を継ぐものに強者至上主義な蜂が出てくる予定。
多分その仔はこの話には出ない。多分。
レックスドラゴン
ティラノサウルスのモンスター。身体能力は高い。酸性の胃液を吹きかけたりもする。
ヘルレックスドラゴン
レックスドラゴンの数段階上の高位体。
プレデターX
深海を好む超大型海生爬虫類。顎の力が強い。
慣性無視の連続攻撃ができるプレデターXXに進化する。