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人狼少女と桜の守護者 前編その2

「誰が暗黒邪神だよっ!!」

「誰が厨二病だって!?」

 私と厨二病との口喧嘩が始まって約20分。

「ヘタレ!!」

「白髪!!」

「変態!!」

「ゴキブリ以下!!」

 そんな言い合いをしていると――

『チャリ……』

 刃物が擦れるような音。

 ビクッと二人で肩を震わせ、音の発生源を見た。

 そこには

「お二方。いい加減にしてください……切りますよ?」

 ――日本刀を持ったフレイヤの姿。さっきの音は刀を抜いた音である。

「那岐、こっちこい」

「先輩も、来てください」

 フレイヤに二人がビビっているのを良いことに、エルナと琴葉に私と厨二病は連行されてゆく。

 そして……

「痛ぁ!?」

 安定のエルナに殴られる私。厨二病は「可哀想だな、こいつ」みたいな目でこちらを見ている。こんなの理不尽だよ……

「さて、事情を聞かせてもらおうか?」

「もちろん、聞かせてくれますよね?」

 エルナと琴葉さんまじ怖いっす。まじヤバイっす。

「何でいつもこうなるかなぁ……」

 私の悲痛な呟きは、厨二病のドンマイの一言で消えていったのだった。






 二人に散々説教をくらい、とりあえず和解。

 厨二病は霜月 茜という名前らしく、その仲間についても紹介してもらった。

「じゃあ、私達風班はまたパトロール行ってくるから喧嘩しないようにね?」

 エルナに散々釘を刺されて風班の皆(梓は使い物にならないからおいてけぼり)は外に行ってしまった。

「うちらはどうする?」

「こいつらの側についてろってさ」

 私の質問にケータイを弄りながら龍我が答える。

「六人相手に四人でつけって言われてもな」

 レギネが呆れ半分で呟く。

 まぁ確かに、レギネの言う通りだよね〜……しかし。これは好都合なのだ。何故なら……

「じゃあさ、町案内ついでにお祭り見て回ろうよ!!」

 そう。この状況を利用してパトロールをサボり、お祭りをエンジョイする!! これぞ一石二鳥!!

「却下です」

「却下」

「却下だな」

「酷くない!?」

 海班の皆に即却下された。だが!!ここで諦める訳にはいかないのだ!!

「しかしね!!こんな薄暗い所に待機させるのはどうかと思うよ!!なら町案内した方がいいんじゃないかなぁ!?」

「じゃあ、こちらの意見を言わせてもらいますけどね、どうせあなたの事ですから?パトロールサボれるし祭りをエンジョイできて一石二鳥とか思っているのでは?違いますか?」

「チ、チガウヨ!?」

 お見通しだと……!?どうしよう!?何か方法!!

「ね、ねぇ……」

 すると、シオンがおずおずと口を開く。

「私達もせっかくここにいるんだしお祭り見てみたいな〜……なんて、ダメかな?」

「いいよ!!もちろん!!さぁ!!今すぐ行こうよ!!さぁ!!」

 シオングッジョブ!!後で何か奢るよ!!

「ですが……」

 ムフフ、フレイヤがうろたえてる。

「まぁ、そいつらが行くって言うならいいんじゃねーの?何なら那岐置いて行けばいいんだし」

「なんですと!?」

 聞き捨てならないな!?それだけは勘弁を!!

「えぇ……僕一人で那岐の相手しなくちゃいけないの?……面倒くさ」

「よし、ちょっと表出ようか」

 梓はいつも通り、失礼な奴だ。

「まぁ、梓さんに那岐を任せるのは不安ですから連れていきますか」

「さりげなく僕、ダメな奴って言われてるよね?」

 フレイヤ、ナイス!!梓ざまぁみろ。

「じゃあ、私も行っていいの!?」

「はぁ……構いませんよ」

「よっしゃぁぁぁぁぁ!!」

 フレイヤの言葉に被せ気味に歓喜の声をあげる。

「でも、梓一人でここに残して平気か?」

「ちょっと龍我!!それどういうことだよ!!」

 龍我の不安げな声に梓が反論。

「何か問題があるんですか?」

琴葉が不思議そうに聞いてくる。

「梓は一人になるとすぐにオンラインゲームに課金するからね〜しかもGCのお金で」

「うっわ、最低ですね」

私が応えると琴葉はドン引きの表情。

「それなら、私にお任せあれ!!」

アジトの入口あたりから元気な声が響き渡る。

「だ、だれ!?」

茜が慌てている。

「エルちゃんから話は聞きました!!梓君の見張りなら、この妖怪である不知火 朱里にお任せあれ!!」

何か異常にテンションが高い朱里が登場。その手にはウサギの人形。

「射的か何かで取った?それ」

「ふぇっ!?な、なーんのことかな?」

私の問いかけにうろたえてる。

「じ、じゃあ任せるよ」

慣れないテンションにレギネが少し引き気味に言った。

「じゃあさ、行こうよ!!異世界のお祭りって何かワクワクする!!」

シオンが待ちきれないと言わんばかりにアジトを飛び出していく。

「あ、シオン!!また迷子になるぞ!!」

「ほらほらシグレ、行きますよ!!」

「イッチーこそ迷子になっちゃうっスよ!!」

「はぁ……相変わらずうるさい連中ね」

「でもお前こそ微妙に声が上ずってるぞ?」

それに続き茜と琴葉、シグレ、蒼、師走が出ていく。

「俺らも行くか」

龍我の言葉に皆が頷き、アジトを出る。





「んー!!美味しいですね!!この綿あめ!!」

一条が嬉しそうに声をあげる。

「ねぇ、次あれやろうよ!!」

「何あれ……?金魚みたいだけどこっちの世界のよりすごい……かわいい」

先をその後に続いてシオンと水無月が走っていく。

桜の守護者のアジトを出てから女子が先を行って後から僕らがついて行っている。

「それにしても、異世界ってのも悪くないッスね!!いっそ、このままここに住むってのも……」

「そういう奴ほど後になって帰りたいって泣きわめくんだよ」

シグレの言葉に龍我が応える。

「ほらほらぁ〜龍我、レギネ!!あっちに射的あるからやろうよ!!」

どういうことか聞こうとしたら、暗黒邪神こと早花咲 那岐という少女に引っ張られていった。

すると

「茜、茜。」

その声に振り向くと、そこにはシオンが目をキラキラさせながら屋台を指差して

「あれ、魔法を使ったゲームだって!!お金ちょうだい!!」

「あ、おう。お金……あれ?」

お金って……

「え、先輩まさかとは思いますけど……なくしました?」

「違う違う!!おい早花咲!!」

一条が言ってるのは全然違くて……!!

「はいはい!!なんでしょうか!!」

両手に射的の景品を山のように持った早花咲が小走りにやってくる。

「ここってお金『円』で払えるのか?」

「『円』……あぁ、通常世界とそれに似た世界で使われてるお金かぁ。いや、使えないよ。それに、あれ。読めないっしょ?」

すると早花咲は僕たちが行こうとしていた店の看板を指差す。

そこには、アルファベットとハングル文字を混ぜたような見たことのない文字が書かれていた。

「100フローラ。ここでは『フローラ』っていう名前のお金が全国共通で使われているよ。」

「え、じゃあ僕ら払えないじゃん」

「あ、そっか。じゃあ……」

早花咲の言葉に僕が少し落ち込むと早花咲は少し悩んでこう言った。


「全員の分、奢るよ」


『……』

場の空気が凍りつく。なんだ今のトンデモ発言。

「い、いや。那岐に悪いしやっぱりいいよ」

「ん?いや違う違う。お金ならうちのお金じゃないよ。正確に言うと……まぁ、いっか」

 シオンの言葉に早花咲は迷うような仕草を見せる。

「とにかく!!奢りは奢り!!ありがたくバシバシ買っちゃいなよ!!」

 え。本当にいいのか?みたいな表情で固まってる僕たち。それとは対称的にフレイヤ達は何故か納得しているような表情。

「じ、じゃあ、あれやりたい!!」

 と、早速シオンが早花咲の腕を引っ張って行った。それに続いて一条と水無月が走ってゆく。

「まぁ……いっか」

 とりあえず早花咲の善意に感謝しながら歩き出した。




 しばらくして、屋台もほとんど楽しんだ頃。早花咲達は遠くに行ってしまい、はぐれてしまった。

「どこ行ったんだあいつら……」

 そう言ってため息をつく。

 ――すると。

「あ。いたいた!!茜〜」

 早花咲が小走りにやってくる。

「おぉ、シオン達はどうした?」


「わかんない……アタシ[・・・]が目を離した隙にどっか行っちゃったっぽい」


 その一言に何故だか僕は少し違和感を覚えた。

「それよりさ、ちょっとこっち来てよ!!景色がキレイなところがあるんだ!!」

 そして僕は早花咲に手を引っ張られる。

 違和感については……まぁ、いっか。





「おい、どこまで行くんだよ!!」

「もうちょっとだよ〜」

 引っ張られ始めてけっこうたつが、一向に止まる気配がない。

「ついた!!ここから10歩くらい歩いてこっち見て!!」

 急にストップした早花咲が指差す。

「はぁ?」

 とりあえず歩きだす。

 ――すると。

「うわぁ!?」

 視界がブレる。一瞬悪ふざけで落とし穴に落とされたのかと思ったが、それにしては深い。下をよく見ると、わずかに見える鉄の棘。

「まっず……!!」

 慌てて懐から鋏を取り出して、大きくさせて突っ張り棒の要領で落下を止める。

「あっれー?生きてたんだぁ〜」

 はるか上方から早花咲の嘲笑するような声が聞こえた。

「まぁいいやぁ。そんじゃ、頑張って登ってきてね〜」

 立ち去る足音。

「くそっやっぱりアイツ……!!」

 僕の中で怒りがふつふつと沸き上がってゆく。









「はぁ〜!!楽しい!!」

 やっぱりお祭り最高だね!!

 次はどこに行こうかと辺りを見回すと、見覚えのある人物が。

「あぁ、早花咲」

 茜だ。

「どうしたの?一人で」

「さっき気になる物を見つけてさ、見てもらおうと思って」

 気になる物って何だろう?

「ともかく、俺についてきて」

「うん!!……あれ?……『俺』?」

 まぁ、いっか。




 町外れの林の近く。

「その辺にいるはず。ちょっと見てきてよ」

「う、うん」

 指差された方向に歩いてゆく。

 ――その時。

「うわぁぁ!?」

 落ちた。しかも原子を確認するかぎり、下には大量の鉄の棘。

「物は私には……効かないよっと!!」

 鉄を操りトランポリンのような力の分散をして着地。

「ちょっと茜……!!」

「なーんだ。生きてんのー?つまんねーな……」

 私が睨み付けると茜はつまらなそうにそう言った。

「まぁ、君ならここから出るのは簡単かなー。じゃあ頑張ってねー」

 ……逃げられた。

「あんのやろぉぉぉ!!」

 そして、私は怒りに燃えるのだった。




--to be continued--

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