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人狼少女と桜の守護者 前編その1

*で視点が変わります。最初が霜月 茜で*の所で早花咲 那岐、霜月 茜……と入れ替わります

目の前に広がるのは見渡す限りの木、木、木。

そのなかで僕は、僕達は。呆然と立ち尽くしていた。

そして僕は深呼吸し、叫んだ。

「ここ、どこだよ!!」





――何故こんなことになったかと言えば、僕達はとあるカフェの店長、旭さんに

「とある廃ビルに行った人達が次々と行方不明になるっていう事件っていうか、都市伝説があるんだけどオカルトマニアの茜くんと琴葉ちゃんはどう思う?」

という情報を聞き、もしかしたら人狼がいるのではないかと僕、霜月 茜と人狼のシオン。後輩の一条 琴葉、その人狼のシグレ。私立カトリック敬愛高等付属中学校の水無月 葵、その人狼の師走のメンバーでその廃ビルの場所を聞き、行ってみることにした。

……てかオカルトマニアじゃねーよ!!

しかし実際行っても人狼も、行方不明者も、誰もいなかったし、何も無かった。

少し落ち込みながら最後の部屋を調べ終わり、さて帰るかと入り口の扉を開けた瞬間。

――突然白い光が飛び込んできた。




そして今に至る。

「うるさい。耳がもげるでしょ、その減らず口少しは閉じれないの?」

僕の絶叫にまず反応したのは水無月 葵。今日一発目の毒舌。全然喋ってないのに減らず口とか言われた。

「そうですよ先輩。てか誰もここが何処かなんて分かるわけないじゃないですか」

続いて一条 琴葉。まぁ、確かに誰も知るはずないんだけどさ……

「とか言いながらイッチーが一番動揺してたじゃないスか!! さっきまで俺の袖掴んで離さなかっいだぁ!?」

一条の鉄拳が今余計な事を言った――シグレの頭に降り下ろされた。

「あはは、イッチー可愛いっスね!!」

「黙れクソ馬鹿ぁぁぁ!!」

あぁ、今度は蹴りが……

「でも、本当にどうするの? 見たところ森? 山……っぽいけど」

僕の人狼、シオンが辺りをキョロキョロしながら声をあげた。

「そうなんだよなぁ……」

駄目だ。打開策が全く思いつかない。

「二手に別れて人がいないか探せばいいだろーが。ケータイなら一応圏外ではないみたいだからな」

先程から全く喋らなかった水無月の人狼、師走が呆れ半分で提案する。

「あ、本当だ」

シオンが僕のケータイを勝手に覗き、嬉しそうな声をあげる。

「うん、そうだな。師走グッジョブ。おーい、一条、シグレ!!」

じゃれあっている二人を呼び戻し、師走の提案を告げる。

賛成してくれたので、二手に別れることになったのだが……

「どう別れる?」

そう、これが問題。3人ずつに別れればどこかしらの主従ペアが別れてしまう。

すると。

「男女で別れましょう!」

一条の提案。

「はぁ!? ふざけんなよ!! そんなことしたらペアが……」

「いいね!! 琴葉に賛成!!」

「私も賛成よ。悩んでるならこうした方が早いし」

僕の反論を打ち消すようにシオン、水無月が賛成の声をあげる。

どうやら後の男二人はどっちでもいいようで。つまり3対1、無念だ。

「じゃあ、何かあったら連絡しますね!!」

それだけ言うと女子軍はさっさと行ってしまった。

「……行くか……」

ここでウジウジしているのも癪なので二人に声をかける。

「もう、そんなに落ち込まないでくださいよ〜」

「どうでもいいから早く行くぞ」

そして僕らは女子軍とは違う方向……道とは言い難い道を歩きだした。







「あああああ!! もう!! なんでこんなことしなくちゃなんないの!?」

山中に木霊する私、早花咲 那岐の絶叫。こんなの理不尽だ。

「仕方がないでしょう。今日は年に一度の桜祭なのですから、外から来る人も多く、こんな山に囲まれている町ですから迷子がいないか、桜の守護者の海班、風班がパトロールするしかないんですよ」

平坦な口調で現実を告げるのはフレイヤ。

「そんなの町の人がやればいいじゃん!! 私は屋台見たりしたいの!! お祭り満喫したいっていだぁ!?」

殴られた。痛いです。

「町の人は花火の準備やら何やらで忙しいんです。だから、私達がボランティアで参加することになったんです。他に文句は?」

うぐぅ……返す言葉がない。

「とは言ってもなぁ……いい加減こんな木しかない山中を歩くのは疲れるし退屈だよなぁ……」

後方から同じ桜の守護者海班の桜木 龍我が声をあげる。

因みに、桜の守護者の中では海班、風班に分かれていて、私達は海班。風班は違うルートをパトロールしている。

「まぁ、しょうがないとしか言えないが夜は自由時間らしいからその時に屋台とか見ればいいんじゃね?」

同じく海班のレギネ・ストランディアが唯一の希望を口にする。

「まぁ、そうだよね……はぁ、退屈。誰かいないかなぁ……」

口から出るのはため息ばかり。だって、かれこれ3時間山中歩いてるし。

そういえば。

「今日不思議な夢見たんだよね〜」

「夢ですか?」

フレイヤが疑問の声をあげる。

「そう。白い空間に、少し暗い茶髪の男の……年は同じくらいの人がでてきて笑いながら妙なこと言ってたんだよね〜」

「妙なこと?」

レギネが眉をひそめる。

「もうすぐ世界は混沌におちるとか、俺が支配者になる……とか」

「ただの夢ですね」

「所詮は夢だろ」

「夢の中のことなんだから気にするな」

3人ともひどくない!? 少しでもいいから事件性を感じてほしかったな!?

……あれ?

「ストップ。少し静かにして」

私の声と同時に皆の足が止まる。

――すると。


「それにしてもここ、どこでしょうね? 結構歩いた気がしますが一向に人が見当たりませんね〜葵先輩、歩き始めてどれくらい経ったかわかりますか?」

「……歩いた感じはするけど、まだ10分弱しか経ってないわね。どうする? シオン」

「歩くしかないじゃん……はーお腹すいた……」


「人の声?」

 フレイヤが首を傾げる。

「聞く限り、本当に迷子っぽいな」

 レギネがニヤニヤしながら私を見る。

「嘘でしょ……」

 絶望だよ……なんなのこの状況。

「馬鹿言ってないで声かけに行くぞ」

 龍我に襟を捕まれ強制的に連れていかれる。






「で。状況を整理すると、君達はどっかのビルに行って帰ろうと扉を開けたらいつの間にかここにいた……と?」

 すると目の前にいる少女らがコクコクと頷く。

「えと……これって……」

 フレイヤ達に軽く目配せ。

「とりあえずさ、ちょっとついてきてくれないかな、えっと…琴葉にシオン、葵? だっけ」

 そう言った瞬間、フレイヤに思い切り殴られる。

「いきなり呼び捨てとか、馴れ馴れしいにも程があります」

「あ、お構い無く!! 二人も大丈夫ですよね?」

 琴葉の言葉にシオンと葵が頷く。

「じゃあ、よろしく頼むわ、那岐にフレイヤ、レギネに……さ、桜木?」

「俺だけ名字で呼ばれるのも何だか複雑な気分だな」

 ドンマイ龍我。流石にレギネをストランディアとか呼ぶのはちょってアレだしね。

「で、那岐達はなんで私達がここにいるか、わかったの? てか、ここどこ?」

「うーん……ここについては歩きながら説明するとして……」

原因はわからないけど……


「――シオン達が元々いた世界に何かが起こって、『中心世界』へのゲートが偶然開いたってことかな?」






 歩き始めて約30分。辺りは変わらず木しかない。

「はー……」

「どうしたんスか? ため息なんてついちゃって」

 シグレがニヤニヤしながら顔を覗きこんでくる。

「こんだけ歩けば少しは人とか村とか見えると思ったんだけどなぁ……」

「なーんも見えてこないっスねー!!」

 なんでこんなにハイテンションでいられるんだ……

「てか、葵さんは学校の式典で早帰りらしかったから私服ですけど、茜さんとイッチー制服でこんなとこ歩いて大丈夫なんスか?」

「あぁっ!!」

 袖を見ると時すでに遅し。泥だらけだった。

「はぁ……帰ったらクリーニング出さなきゃ……」

「あはは、ドンマイっスね!!」

 あぁ、もう最悪だ。そもそも帰れるかすら怪しいんだものな……

「そういえば、扉を開けた光の中で変なの見たんだよな……」

「は?」

 師走が振り返る。

「なんか白に水色混じりの髪の毛の女がさ、世界が混沌におちるとか、アタシが世界の支配者になるとか意味分からないこと言っててさ。お前ら見ていないのか?」

「見てないな」

「まぁ、あんまり気にしない方がいいっスよ!!」

 まぁ、確かにシグレの言う通り気のせいかもしれないし変に思わないのが一番かな……

 すると、シグレと師走が唐突に立ち止まる。

「……おい、シグレ。人の匂いしねーか?」

「少しずつだけど近づいてないっスか?」

 流石狼だな……

 てか、人いるなら喜ぶべきじゃあないのか?

「50mくらい先か?」

 師走がそう言うと、ビミョーだが話し声も聞こえてきた。


「あー……疲れた。なんで僕がこんなとこ歩かなきゃなんないの……パソコンが恋しい……」

「なんで女子が男子をおぶっているのよ!! 全然歩いてないし疲れるはずないじゃない少しは歩けニートめ」

「梓くんは普段外に出ないからどうしようもないの。許してあげよう? エルナちゃん」

「なにそれ、皮肉でしょ。絶対そうでしょ」


……なんだこの会話。

「と、取り合えずいこう、聞いた感じ悪い人ではないっぽいし」





「えっと……まとめるとここは中心世界っていう場所で、あなた達は桜の守護者という組織の風班で、能力とか魔術とか現実離れしたことができると?」

 訳が分からない。

「現実離れって言われても、人狼だとか武器だとかそれぞれの能力とかこっちと変わらないじゃない」

 エルナという少女が呆れたような表情でそう言った。

 いやいや全然違うだろ。そもそも世界とかなんだとか訳が分からない。次元が違いすぎる。

「エルナ、僕恥ずかしいから下ろしてくれないかな」

 梓と名乗る男が不満気に言うと、エルナが背中から梓を降ろす。

「とにかく。なにやら事情がありそうだからアジトに連れていくのがベストかしら?」

「エルナちゃんに賛成なの」

 エルナが同意を求めるように奈乃という少女をちらりと見ると、奈乃が頷く。

 え、これって連行される感じ?

「シグレ、一条達に連絡した方がいいんじゃないか?」

「いえいえ!! さっきイッチーから連絡きてたっスよ!! 多分茜さんのところにも来てるんじゃないっスか?」

 え、まじか。

 急いでケータイを見ると新着メールが1件。

 見てみるとそこには――


『桜の守護者っていう所の人達に保護されました。またメールします!!』





 GCアジトに到着。

「お、先輩達もこっちに向かってるっぽいですよ!!」

 琴葉が嬉しそうに声をあげる。

「ってことはエルナ達に捕まったのかぁ……その人達可哀想だね」

「エルナは普通だろ。暴力的なのはお前に対してだけだ」

 私の呟きに龍我が呆れる。

「おぉ!!このジュース美味しいね!!何のジュースだろう?」

 ソファでジュースを飲みながらシオンが不思議そうにコップを眺めている。

 てかあの飲み物……

「……なんか青紫だよ? 毒々しいよ? 何出したのフレイヤ」

「前にアルトさんから送られてきたやつですよ。えと……ト、トロピカルジュースらしいです」

「嘘だろ!? 全っ然トロピカルじゃないよ!! 毒々しいよ!! 今春だよ!! 何送ってきてだよあいつ!!」

「な、那岐落ち着いて!! 美味しいから!! 春でも美味しいから!」

 フレイヤの言葉で暴走する私をシオンが止めてくる。


 すると、誰かがアジトにはいってくる音がした。

「那岐、いる? さっきメールした人達だけど……」

 私にはエルナの言葉など耳に入ってこなかった。

 何故ならそこには――



 エルナ達に連れられてきたその先には――




「夢に出てきた厨二病野郎!!」

「光の中にいた暗黒邪神!!」

 私の夢に出てきた少年がいた……!!



--to be continued--


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