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機甲猟竜DF  作者: 結日時生
第四話「そんなに泣かないで」
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第四話「そんなに泣かないで」〈1〉

 人造恐竜・アルバートサウルス〝サラ〟のブリーダーとなった希人。

 同時期にカルノタウルス〝レモン〟のブリーダーになった修大。


 互いに恐竜を大切に思う気持ちは同じだが、活き餌の是非や性格の違い等からついに衝突してしまう。

 しかし、その事がきっかけで彼らは互いを理解し、受け入れる。


 それは希人にとって、心から信頼できる初めての友人ができた事も意味した。


 春の終わり。やさしい春の夕日が彼らを照らしていた……




※あとがきに登場人物の紹介もあります!

今回は希人&サラ、修大&レモン、ちかげ&ミリーについて紹介します!

「そういえば希人、昨日俺の部屋にパンツ忘れてたぞ」

「マジ? すまん、今日帰りに取り行くわ」

 木々の若葉が青さを増し始める五月の終わり。窓からは朗らかな日差しが差し込んでいる。

 食堂の四人席に設けられた壁際のソファーに修大と希人は腰かけていた。何の変哲もない(?)会話をしている男二人を冷たい視線が見つめる。


「なんかキモイ……」

「えっ? 翁さん何か言った?」

「いや、何でもないです……」

「そ、そうですか……」

 机を挟んだ希人の対角線上にある椅子にはちかげが座っている。

 機嫌を損ねた覚えもないのになぜか渋い表情をしている彼女の顔を、希人は不思議そうなに覗き込む。

「お待たせー♪ じゃあみんな揃ったし、お昼にしよっか! ……って、ちかげちゃんどうしたの? 青汁飲んだみたいな顔してるよ?」

「いえいえ、最近の青汁は抹茶風味とかもあって飲み易いんですよ。それより全員揃ったんですし、早く食べましょう」

 きょとんとする夕海の質問をちかげは適当にあしらい、彼女へ席に着くよう促がした。

 夕海の持つトレーの上では、皿に乗った文庫本くらいに分厚い豚カツが存在感を放っている。

「よっこいしょ! じゃあ今日のいただきますの号令は篭目君ね!」

「(子供っぽいのかオバサンなのか、いまいちわからんなこの人……)」

「ん? 今何か言いたいのかな?」

「い、いえ! 別に何も……じゃあ皆さん、手を合わせてくださいね! いただきまーす!!」

「「「いただきまーす!」」」

 少し声の上擦った希人の号令に他の三人も続き、それぞれ昼食を取り始める。


* * * * * *  


 同じ頃。獣医舎では亘と瀞が、真剣な面持ちで言葉を交わしていた。


「……ということです。崎乃獣医、貴女の意見を聞きたい」

「仕方ないわね。まぁあまり気乗りはしないけど、実際に戦力が足りていないのも事実だし」

「ありがとうございます。貴女の協力に感謝します。では、私はこれで」

「あっそうだ!」

「何でしょう?」

 立ち去ろうとした亘を瀞は呼び止める。彼女の呼びかけに男は足を止め、振り返った。

 今後の彼にとって、瀞は非常に重要な存在である。DFを指揮して部隊を運営する上で、彼女の協力は必要不可欠だ。

 不快感を与えないよう、亘は柔和な表情を一切崩さずに向きあう。

「私からもひとついいかな?」

「構いません。どうぞ続けてください」

「最近ね、貴方のバディであるテリジノサウルス……体調があまり良くないのよ」

「はぁ……一昨日に拝見した定期健診の結果では目立った症状もなく、理想値に近い数値でしたがまだ何か?」

「えぇ、身体的には健康そのものよ。ただ、メンタル面がね……」

 瀞曰く、亘のバディであるテリジノサウルスの抱える精神的なストレスが大きくなっているらしい。その最たる原因が、手厳しい指示をする彼にあると考え、もう少しテリジノサウルルスを労うようにと瀞は進言した。

 思うところはあるものの、プライドの高い亘を苛立たせない様、瀞は慎重に言葉を選ぶ。また話を聞く亘の方も、瀞の提案には真剣に耳を傾けていた。


 遺伝改造により高い知能を得た人造恐竜。

 教育により人の言葉を理解するまでに成長する彼らだが、彼らの側から人に『言葉』で不調や思いを伝えることはできない。

 また、高い知性は人類と同じく。精神的なストレスを溜めやすい諸刃の剣でもあった。

 故に人造恐竜、もといDFを扱う人間には、無言の裏に隠された彼らの意思や感情を汲み取る技能も必要不可欠になる。

「……わかりました。善処はします。用件はそれだけですか?」

「えぇ、それだけよ」

 瀞の言葉が何処まで響いたかは定かではない。だが必要な事実を伝達する事には成功した様だ。

 亘は「では失礼します」と言う一言と共に柔和な笑みを向け、獣医舎を去って行った。


「本当に解ってくれてるといいんだけど……」

 彼の背中を見つめ、瀞はぽつりと呟いた。


 * * * * * *


「篭目君のご飯、何かヘルシーだね……でもそれで足りるの?」

「えっ? これ、僕的には結構ガッツリメニューなんですけど……」

 夕海は希人の『おろしポン酢と豆腐ハンバーグ定食』を不思議そうに見つめ、彼に尋ねる。ちなみにご飯は中盛で、単品のトマトサラダを追加してある。

「これが今時の草食系男子なのかぁ」

「それ、多分意味間違えてますよ」

「いやぁ参ったねぇ~! 道理でお肌もピチピチな訳だ!」

「まぁそれは正解かもしれませんけど……(春先から日焼け止め欠かさない人だしね)」

 恐らく夕海が誤解しているであろう現代語の意味について、ちかげはジェネレーションギャップという現象の一例として放っておくことにした。

 もっとも、言葉の意味に関しての認識は違えど、希人が所謂【草食系】に分類される事に関しては、ちかげも同意見だ。

「確かにコイツ女子力高いっすよ! 昨日俺の部屋でコットンパックしてましたからね!」

「バカお前! 恥ずかしいからそういう事言うなよ……」

 少し馬鹿にした様な笑顔で、修大は希人の私生活の一部を暴露する。

 別に悪いことをしていた訳ではないが、念入りに肌のケアをしている自分の姿を異性に知られるのは気恥ずかしい。隣にいる修大を睨み付け、希人は静かに抗議する。

「えっ何それ? マジなの!?」

「……まぁ事実ですけど」

「へぇー、今時の男子って結構マメなんだね」

「いやぁ~、流石に僕ももう二十一ですからねぇ~。そろそろお肌の曲がり角かな……なんつって!! アハハハハ!」

 夕海の問いかけに、自嘲気味に答える希人。だが、その笑顔が彼女の逆鱗に触れてしまった。

「あら……二十一で曲がり角なら二十九は下り坂かしら?」

「へっ? い、いやそんな事ないですよ!! 女性用の化粧品とか良い物いっぱいありますし、ド○ホルンリンクルとかもあるからまだ……」

「〝まだ〟? 何が〝まだ〟なのかしら?」

「あ……えーっと……ドモホルン○ンクルは、〝まだ〟早いかなって! それだけです! ハハハハ~!」

「だよねー! でも私もそろそろ気を使わないといけないかなって思ってんのよ~!」


「……アホらし」

 一連の下らないやりとりに呆れたちかげは、自分から話題を変えようとする。

 それは先程から彼女が気になっていることだ。

「そう言えばなんで昨日、篭目さんは木野さんの部屋に泊まったんですか?」

「「へっ?」」

 希人と修大の声がハモる。

 ちかげの脳内に、「ひょっとして聞いてはいけない地雷を踏んだかもしれない」という不安と、あられもない憶測が駆け巡る。

《意図とせずに人造恐竜の親となってしまった青年・篭目希人。時を同じく、別の人造恐竜を育てる事になった木野修大。互いに意見を交わし合い、時に衝突してきた彼らの間には強い信頼関係が築かれていた。そして、彼らはまた新たな世界への扉を開く……》


「あぁ、昨日俺の部屋で一緒に勉強してたんだよ。ついでにサラやレモンの訓練や育成の事で色々相談。俺とコイツ宿舎別々だし、俺の宿舎の方が仕事場近いからついでに泊まらせてやっただけ」

 横では希人も頷いている。ちかげの脳裏に浮かんだ甘美な世界とは対極的に、返ってきた答えは至極真っ当なものだった。あまりにも普通の回答に彼女は肩透かしを食らう。

「あれれー? ひょっとして変なこと事考えてたんじゃなーい?」

「な、何言ってるんですか! そんな事考えてません!」

「ん? そんな事ってどんな事かなぁ~?」

「い、いやだから……」

「まぁ私的には木野君の誘い受けだと思うけどね! ちかげちゃんはどうなのかしら?」

「何言ってるんですか、夕海さん……」

 うろたえるちかげのわき腹を突きながら、夕海はニヤけた顔で質問を続ける。

「前から思ってたんだけど、夕海さんってちかげちゃんにベタベタだよな……」

「うん、これが所謂〝キマシタワー!〟って奴かな……」

「んっ? 何それ? なんか新しいビルでも建つの?」

「いや、そういうのではないかな」

「そ、そうか……」

 うっかりネットスラングを出してしまったことを後悔しつつ、涼しい顔で希人は切り分けた豆腐ハンバーグを口に運ぶ。〝キマシ〟の意味が気になった修大は今夜調べてみることにした。そして彼は〝誘い受け〟の意味も知るのだった……。



 翌日。

 生憎の雨天ではあるが、人造恐竜のために設けられた屋内運動場では、いつもの訓練メニューが行われていた。

「行けレモン! そのままのペースでいいぞ!」

「サラ、もう少しスピードを上げてもいいんだ! 変に遠慮する必要はない!」

 希人と修大の指示を聞いたサラとレモンは、広大なオープンスペースに描かれたトラックに沿って走っていた。二頭の背中には、それぞれ人の形を模したロボットが跨っている。そのロボットは限りなく人間に近い動きで、走る二頭に合わせて重心を動かしバランスを保つ。

 アルバートサウルスやカルノタウルスの様に、高い機動力と人が跨るのに十分な大きさを併せ持った恐竜がベースのDFには、時として人間が騎乗し作戦行動に臨むことがある。

 ちかげのガリミムスなどがいい例だ。戦車では乗り越えらない段差も跨ぎ、跳び越える。またヘリコプターでは入れないビル群の谷間にも入り込み、身を隠す。

 高い戦闘能力も魅力ではあるが、車両や航空機よりも汎用性の高い機動力も、DFの長所のひとつである。まだ人間を乗せるには小さな体の二頭だが、来るべき日に備え既に訓練を始めていた。

「そういえばさ、昨日調べたわ」

「何を?」

「〝キマシ〟って言葉の意味」

「お前何調べてんだよ……」

 背中に乗る人型ロボットを気遣いつつ走るサラとレモン。二頭を見守りながら、修大が唐突に昨晩手にした新しい知識を披露する。それは昨日希人が修大の前で口にした言葉であったが、そんな言葉の意味をわざわざ調べるとも思っていなかったので少し呆れてしまう。

「お前ってそういうの好きなの?」

「別にそういう訳じゃねぇよ。暇でネットしてた時に色々と覚えただけ」

「へぇ……じゃあ〝誘い受け〟って言葉の意味も知ってんの?」

「何お前? そっちも調べたの? 木野君ってまさか…………」

 口に手を当て、修大から遠ざかるように希人は後ろへ下がる。

「はっ!? 何言ってんの? 馬鹿かお前?」

「そうだね、ごめん。もし修大と俺がホモカップルだったら、今頃俺は篭目希人(かごめきひと)から〝手込希人(てごめきひと)〟になってるわ」

「ちょいお前、うまい事言うなし!」

 希人の渾身のボケがつぼに入り、修大は噴き出してしまう。

「つーか、ちかげちゃん……そういうの好きなのかな?」

「さぁどうだろう……まぁ〝ホモが嫌いな女子はいません〟っていう格言もあるけどな。でも一概には言えないかも」

「……それ、格言なのか?」

 修大の問いに希人は「いや、知らないけど」と返し、二人は恐竜達の訓練が終わるまで〝ダチョウ竜先輩 腐女子説〟について議論していた。



「うーす! お疲れレモン♪ よく頑張ったぞ!!」

「サラ、よく頑張ったな」

 希人と修大はそれぞれ訓練を終えた恐竜達をねぎらい、喉元を優しく撫でた。サラもレモンもブリーダーから向けられる愛情を一身に受け、目を細め気持ちよさそうに喉を鳴らす。恐竜達の体についた汚れを掃い、異常が無いかを確認すると、彼らは自分が受け持つ恐竜をケージへと帰していった。

 施錠を確認すれば、今日の彼らの業務も終わりだ。ロッカーから私物を取りだした彼等はそのままの足で休憩室へと向かい、修大はベンチに腰を下した。希人はベンチには座らず、自動販売機の前から修大へ声をかける。

「今日もお疲れ。修大もなにか飲む?」

「おうお疲れさま。じゃあコーラを頼むわ」

 習熟度としては、サラもレモンも共に訓練ノルマを順調にこなしている。寧ろ予定より早く多くの事を吸収していっている位だ。これは修大による功績が大きく、希人も彼が筋道立てて訓練内容を考えていてくれている事に感謝していた。

 もう見栄や虚勢を張り合う必要などなく、希人は修大に信頼を寄せている。自販機から出てきた二缶のコーラのうち一つを差出して、彼は修大に問いかけた。

「どうだろう? お前から見て、サラは背中に人を乗せる事に関して馴れているように見えるか?」

「ん~……乗せる事自体には抵抗ないみたいだな。ただ、もう少しスピードを出しても背中の人間は大丈夫だろ。その辺に関してサラは妙に遠慮がちだな」

「やっぱりそうか……アイツ、結構大雑把な性格だと思ってたんだけどな。」

「まぁ確かにレモンに比べて物怖じしないよな! でもおっとりした優しい性格でもあるからな…………主人に似てよ」

「んっ? 何か言った?」

 修大が最後にポツリと呟いた一言は、希人の耳に届いていなかった。

 最初こそ「人間に歯向かい、人を食った個体の子供」と警戒していたが、今はサラもレモンと等しく、修大にとって愛おしい存在だ。そしてそう思えるようになったのも、サラとレモンの両方を気にかけている慈母のような男が目の前にいるからである。

「まぁサラもレモンも予定より早く訓練メニューを消化して行ってる訳だし、そんな焦らなくていいと思うぜ!」

「だな……ありがとう。やっぱり修大が居てくれて助かるよ」

「オイ、そういうの止めろよ! 急に改まって言われるとどうしていいかわからねぇだろ……」

「えっ? あっ、ごめん…………」

 修大が希人に感謝している様に、また希人も修大に感謝していた。恐らくどちらか片方だけでこの仕事に就いていたら、手詰まりになっている部分も多かっただろう。

 しかし、ほぼ毎日顔を合わせている間柄で、そんな事を改めて言うのはよくよく考えれば少し気恥ずかしい。同様に言われる方も、心構えがなければどうしても照れが出てしまう。

 不意に自分の口から出た言葉は、よくよく考えればもう少し場所を選ぶべきではないか? 希人はその事を少しばかり反省してしまう。

「まっ、明日からもよろしく頼むわ!」

「う、うん……俺からも頼むよ」

 気恥ずかしさから来る沈黙を何とか打ち破ろうと修大が口を開き、希人もそれに続いた。

 少しばかり気まずくなった空気に耐え切れず、帰路につこうと修大が腰を上げた時、二人を呼び止める声がした。


「あ、こんな所にいたんだ。ごめん、二人ともちょっと時間貰えるかな……」


 * * * * * *


 声の主である瀞に連れられ、希人と修大は獣医舎に来ていた。

「どうしたんすか? 瀞センセ」

 ストレートな性格の修大は、呼ばれた理由を瀞に尋ねる。最近のサラやレモンは健康そのもので、瀞に呼ばれる理由に心当たりがない。

 すると瀞は重い口を開き、いつになく真剣な表情を希人と修代へ向ける。

「引っ張る話でもないから端的に言うわね。サラとレモンへの成長促進剤へ投与が決まったの」

「「えっ?」」

「人造恐竜に対して使われる成長促進剤についての詳細は今から渡すレジュメを参考にして。もし解らないところがあれば質問してくれていいわ」

 意見を尋ねるのではなく質問の有無を確認するあたり、この事はもう既に決定事項なのだろう。瀞は二人に【DD用成長促進剤について】と表紙に書かれた冊子をそれぞれ手渡した。

「ごめんなさいね、急に呼び止めて。私からの用事は以上よ。もう帰ってもらってもいいわ」

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!」

「どうしたの木野君?」

 彼らの顔をなるべく見ないように立ち去ろうとした瀞を、修大が呼び止める。あまりにも急な決定事項のみを告げられたためか、彼の声からは困惑している様子が感じ取れる。

 震えが治まらない声を精一杯に絞りだし、修大は瀞に問い掛けた。

「サラもレモンも順調に成長してるじゃないですか……なんで急に薬なんか使うことになったんですか?」

「仕方ないわ……今の現状を考えてみて。今私たちの小隊にいるDFは、テリジノサウルス、ガリミムス、モササウルスの三体よね?」

「はい、そうですけど……」

「そうなるとどうかしら? 撹乱・情報収集を主な任務とするガリミムス。水中戦もしくは水際での奇襲を仕掛けるモササウルス……こうなると、内陸部や周囲に大きな河川などない都市中心部に邪竜が出現した場合、テリジノサウルスにかかる負担があまりにも大きくない?」

「…………」

 瀞は薬剤の投与が決定した根本にある原因を修大に説明した。薬剤投与の是非はともかく、その理由は至極正当なものだ。

 アルバートサウルスやカルノタウルス等の中型肉食恐竜でも、実戦投入可能な大きさまで成長する為には六ヶ月弱かかる。現実を突きつけられた修大は言葉を詰まらせた。


「今までミリーやティラミスも頑張っていてくれたけどね……でも、流石に最近苦しくなってきたのよ。亘君やちかげちゃん、夕海に掛かる負担だってすごく大きいわ。色々思うところはあるだろうけど、解ってくれないかな?」

「あの、僕からもいいですか?」

 瀞の説明を受け、状況を理解した上で今度は希人が口を開いた。

「事情は解りました……でも、やっぱり僕達としては不安です。薬剤投与により急激な成長を促した場合、各部の関節を中心に負担がかかり成長痛を引き起こす事例もあると聞きました。それに成長スピードが上がればその分実戦投入も早まり、多くの訓練をこなす必要がある。正直に言って自信ないですよ……」

 もう成長促進剤の投与自体は受け入れるしかない事を希人は理解していた。しかし、今以上の訓練ノルマをサラ達に課し、自分でそれを管理していけるという確信は持てずにいる。

 更に言えば、勉強熱心な彼は薬剤投与により急速に成長させられた人造恐竜の事例もいくつか知っていた。DFとしての実戦投入までの期間が早まり、多くの訓練をこなさなければいけない一方で、成長痛等の理由であまり動かせない状態が続く。

 結果として、未熟な練度のまま邪竜との戦いに臨まざるを得なくなる。そうなってしまったDFの生存率は、非常に低いものだった……。

「その心配はもっともね……私も心配だし。でも、私はもちろん、獣医チームからも全力でサポートさせてもらうわ。どうかお願い、力を貸して」

 瀞は希人と修大に向け、深々と頭を下げた。

 彼らに二人に多大な負担を強いてしまう事は、何よりも彼女が理解している。


 この世界に生きる全ての生き物は、常に変わり続ける世界と対峙しなければならない。

 無情に流れる時間は、時として安寧を破壊して変革を強要する。


 それは繁栄を極めた種類にも容赦なく降り注がれていく。

 かつての恐竜もそうだった様に、今を生きる人類も例外ではない。


 ……人に造られた命もまた、その原則から外れることはなかった。


登場人物紹介


篭目希人=綺麗男きれお

木野修大=キョロ充

翁ちかげ=鬼女



……ごめなさい、真面目にやります(笑)

※各キャラの年齢は四話時点のものです。


篭目 希人(かごめ きひと)

性別:男 

年齢:21歳

誕生日:12月17日

前職:ペットショップ店員(爬虫両生類・熱帯魚の専門店)

身長:173cm 体重:61kg

 本作の主人公。穏やかで強い自己主張はしないタイプだが、根底に強い意志と愛情を持つ。意外と腕っ節は強いが、持久力に難あり。何気にお洒落さんで、ベージュがかった茶髪と奥二重の優しげな目元が印象的。

ペットはコーンスネーク、ヨツユビハリネズミ、アズマヒキガエル。


サラ

 希人が育てる事になったアルバートサウルス。母体の中で育った自然発生個体。

おっとりした物怖じしない性格。現在生後1ヶ月。



木野 修大(きの しゅうだい)

性別:男

年齢:21歳

誕生日:1月6日

前職:ドッグトレーナー

身長:169cm 体重:58kg

 希人と同時期にDFのブリーダーになった青年。希人とは対照的に明るくオープンな性格。最初こそ微妙な仲だったが、現在は希人と共に認め合える良好な関係を築いている。持久力には自信アリ。はっきりした二重瞼と明るめの茶髪、綺麗なおでこが印象的なベビーフェイス。


レモン

 修大が受け持つカルノタウルス。人工子宮の中で育った人工発生個体。

少し臆病な面もあるが、人懐っこくく従順な性格。現在生後1ヶ月。



翁 ちかげ(おきな ちかげ)

性別:女

年齢:19歳

身長:9月3日

前職:フラワーショップ店員

身長:162cm 体重:53kg

 本作のヒロイン(?)。一話で希人とサラを、バディであるミリー(ガリミムス)と共に救出する。意志が強く、真面目な性格だが繊細な面も併せ持つ。その一方で、実は毒舌家だったりする。白磁の様な色白の肌と艶やかな黒髪のショートヘアの対比が美しい美少女。


ミリー

 ちかげのバディであるガリミムスのDF。機動力を生かした撹乱や情報収集や。外部武装を用いての一撃離脱戦法を得意とする。幼体の頃はやんちゃで、ちかげは手を焼いたらしい。現在1歳。



……と、こんな感じです。


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