<07> -幹部が厨二病すぎてやばい!!-
実は隣人は幹部でした。
そして連れてこられたのはさらに近所の松田さんの家だった。
しっかし………。
「なんでシュレッターされたものが復元されて額縁に入れてあるんだよ」
うわ。なんだこのシュレッターにかけた幼稚園のお知らせは。幼稚園の参観日に出席するかしないか丸つけて提出するやつだ。
なぜシュレッターにかけた。そして参加しなくても丸つけて提出しろよ。かわいそうだろう。
しかし家の中は予想以上に綺麗になっている。ゴミ漁りしてるもんだから家の中はゴミ屋敷と化してと想像していたんだが………。
一軒屋の一階のリビングに通された俺達四人はソファーに腰を下ろした。
「知ってるか?」
俺の近くに座ったミーシャに松田のことを聞いた。
ミーシャは首を横に振って答えた。
「申し訳ありませんがワタクシ達自身、組織の人間を全て知ってるわけではありません。特に幹部周辺は下の者である私達に知らされておりません」
謎の幹部ってか?誰だよそんな設定作った奴は………。
「お待たせしました」
突如として現れたのは太った体を黒の革ジャンにムッチムチの革のズボンに身を包んでた松田だった。おいおい、グラサンかけてハードボイルドでも決め込んでるのか?
「まさか皆さん組織の者だとは知らずにお恥ずかしい姿を見せてしまったことをお詫びします」
さっきまでの口調とはまったく違う。むしろさっきのが素だったんじゃないのかと疑いたくなるほどに別人だった。姿以外はな。
「んであんたは何もんなんだ」
「申し遅れました。雷帝トールと呼んで頂けたら幸いです」
まさかのトール神きたーーーー。
一番の驚きは主要神の名を冠した男の趣味がシュレッターパズルってこととロリコンだってことだ。ロリコンは全滅すればいいんだ。お、俺はロリコンじゃないから問題ない。
「雷帝トオル?」
「トー・ルだ!!おを発音するな!!」
変わらん気もするが怒った拍子に体中、青い電撃が飛び散った。怒らせると何が起きるかわからないのでここは従うことにしよう。
すると疑っていた横にいる三人組がその場で跪いた。な、何?俺も跪くべき?
「失礼致しましたトール様。ワタクシ達『ノルン』と申します」
「ほぉ。かの有名な情報部の三人組。それで、そこの少年は?」
「『裁刃氷牙』様です」
俺の真名を聞いた瞬間、表情を変えて俺を見つめた。俺はというとどうしたらいいのかわからず、ふてぶてしくソファーに腰掛けていた。
なんだろ………すごい睨まれてる。もしかして結構無礼講すぎたか………?
冷や汗と心臓バクバクの俺は、睨むトールに視線を向ける。だめだ、眼力ありすぎて怖いから目じゃなくてその間を見ることにしよう。うん、これならいいだろう。
そんなことをしていると、俺の顔面数センチ左を蒼白の雷撃が槍のように突き指した。
はぁ?
「ほぉ、いい根性ですね。殺気を込めた雷槍だったんですが………常人なら飛んで逃げるか、はたまた反応できないところなんですが」
「さすがヒョウガ様なの。ピクリとも動いてないの」
「アタシには何が起きたのかさっぱりだったよ」
いや、ごめん………。俺も何が起きたのかさっぱりだった。ていうか左側の襟が焦げてるんですけど!!まじかよ。今の本物の雷か?さすがは雷帝トール。まったく誰だよこんな壊れて、もろ北欧神話パクって設定作った奴はよぉ?あと数センチ右だったら俺のこの世にいないよ?いいの?
「なるほど。貴殿があの『ヒョウガ』なのは認めましょう。それで?『ヒョウガ』と『ノルン』がこんな辺境な地に何のようだ?」
ここを辺境と呼ぶのならお前も何してんだよ!!とツッコミたい。けど怖いので肘を立てて硬く口を閉じる。
「この地に『ロキ』がいると聞きまして、ちょうどこの地にいるとの連絡を受けていましたので『ヒョウガ』様と行動を共にしていたのです」
「『ラグナロク』か―――」
「はい」
ロキの名前を聞くや、トールはすぐに回答の『ラグナロク』を導き出した。それほど組織にとって大きなことであり、大事件なのかと予想されるが、
「もうそんな時期ですか」
ん?聞き間違いか?時期って聞いたような―――磁気か、そうだよね磁気だよね。大変だって聞いてるんだもん磁気だよな。
「はい。もうまもなく」
「懐かしいものですね」
なんだその運動会とか一年に一回あるような学校行事を思い出すような目は、何?もしかしてラグナロクって対したことないのか?
「血が滾りますね。また暴れまわれるようだ」
前言撤回。ラグナロクは絶対阻止しよう。嫌だよ俺。こんなのが暴れまわるようなお祭り参加したくないよ。最終的に俺が止めろとか言われそうだもん。
「―――ッ!?それならば一番ロキと親しかった『ヒョウガ』であればすぐ見つけれるのではないのですか?」
「そう思っていたのですが………見て解ります通りヒョウガ様の左目の魔力が失われて力と一緒に記憶も無くなってしまわれたようなのですよ」
蚊に刺されただけだっていうのにこの左目の話はどこまで発展されるのだろうか?
「なるほど。理解しました。魔力を感じられないから貴殿を感知できなかったのか。ならば仕方ない少々お待ちを」
そういうなりトールは左手の人差し指にはめた指輪を俺に向かって投げ渡した。さすがはあの巨漢だ。指にはめようにもでかすぎて親指でもブカブカだ。
「その指輪を貸しましょう」
「もしかして―――それは」
「雷帝の指輪です。一時的にも私の能力である『雷を操る』ことができる指輪です」
それを聞いていても立ってもいられなかった俺はブカブカな指輪をはめて念じてみるも、何も起こらなかった。
「自分の心の扉をあけるように蛇口を開けるのです」
意味が解らない。
「なんっていうんだろうな―――鼻から息吸って腹を膨らませる感じ?」
さらに意味が―――わかった。腹式呼吸か。腹式呼吸の際に何か満ちたような気分にして念じると指輪をつけた右手からバチバチと電撃が発電した。
さすがは紅月、こいつは絶対頭で理解するよりも体で覚えた方が覚えるタイプだ。
それにしても面白い。電撃で球体を作ったりもできる。あれ消えた。
「言い忘れましたが使えるのは一日二回までですので今日の分は終了だと思います」
え?二回だって?
「私の蛇口を経由してるので使われると私の魔力が著しく消費してしまうのですよ」
どうせ毎日シュレッターパズルしかしてないんだからいいだろうが、とさっきから思っているがトール神が恐ろしくて声が出ないとは言えない。
俺は了承の念を込めてゆっくり頷いた。
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