<03> -クラスメイトが厨二病すぎてやばい!!-
「どうしました?紅月さん」
あれ?あんな女子いたっけ?長いブロンドヘアーをツイテールにしていて、2つのテイルが今にも地面につきそうだった。
ここからじゃ後ろ姿しか見えない。だが、昨日までこのクラスには黒髪しかいなかったはずだ。ついさっき参上した銀髪は論外として。
なんだ?彼女は昨日髪を染めたのだろうか?うちの学校はその辺の校則はゆるいので悪いことではないが………。
「少し気分が悪いので保健室に行きたいんですが」
「なら保健い―――」
「伊藤。お願い」
「お、俺?」
なんだよ今日に限って。このクラスじゃあまり目立たない存在だっていうのに。つか俺、保健委員でもなんでもないんだけど。ただの帰宅部なんだけど………。
なんかクラスの男子がさらに殺気出してる気がする。「我がクラスのアイドル、紅月さんが伊藤を指名………」「伊藤………覚えてろ」
先に出て行ってしまった紅月を追って、殺気出つ教室を後にした。
しかし俺のクラスに紅月とかいう女子、いたっけ?
俺の記憶の中には紅月という苗字の女子に心当たりがなかった。さすがに半年近く過ごしたのでもうクラスメイトの顔と名前は一致してるはずなのだが。
「なぁ、紅づ―――」
彼女の名前を呼ぼうとしたとき、先を歩く彼女はこちらを振り向いた。
切れ目に碧眼。整った綺麗な顔立ち、そしてこの巨乳。
確信した。俺はこんな巨乳知らない。
「何?」
その鋭い切れ目と同じくらいコイツの声はキツイ声だった。それだけで第一印象をつけるなら、コイツはSだ。
急いで視線を胸から顔に向ける。
「………お前、誰だ?」
紅月は俺の質問に眉をひそめたあと、「へぇ………」と口元をゆるめた。
「さすがは愛しのクソダーリンだ。よく気がついた」
賭けてもいい。こいつ絶対Sだ。
「むしろなぜクラスの奴らをお前を知っている。俺は紅月なんて女子は知らないんだが」
「あら、半年以上も共にしたクラスメイトを知らないっていうの?」
腕を組み、そのたわわな胸を強調させ、目を細めて笑う彼女。おい、そんな凶器を俺に向けるんじゃない。まともに立てなくなるだろ。理由は言わんが………。
なんだろ………。すごく頭のどこかで引っかかる。
俺はコイツを知っている。クラスメイトとかではなく、忘れたい記憶の中に。
「お前………ウルド?」
そうだ。ベルダンディを見た瞬間に気づくべきだった。
コイツの名前は紅月舞。真名は『ウルド』。金髪ツインテのツンデレ美少女。それに『人の過去を改竄する能力』を持っている。名前がどこかで聞いたことあると思ったら、当時好きだったアニメ、厨二の目力で人操って世界統一しようとするナントカ・ギアスとかいうアニメ。その登場キャラクターから取ったんだっけ。
紅月は白い歯をこぼし、ご機嫌に笑って見せた。
「覚えててくれるとは嬉しいぞ。クソダーリン」
しかし口が悪いな。こんな口が悪い設定だっただろうか?
「覚えてるも何もなんなんだ。お前らは?」
「ん?どういう意味だ?」
「俺はお前達を知っている。だがそれは空想上の人物としてだ。なのにお前達がここにいる。どういうことだ?」
「言ってる意味がよくわからない。例えアタシ達が空想上だとしてもここに存在してる現実があるわけだ。それを空想と呼べるのか?」
「違う違う。俺は知ってるけどそれは俺が作った設定であって、俺の中の事実じゃない」
「………?意味がわからん」
頭がヒートしそうだった。どちらも言っても『分かり合えない、分からない』の不透明な線引きだ。
俺に取っては空想であって事実ではない。しかし彼女にとっては史実であって伝奇ではない。そんな迷路めいた討論に迷いそうになる。紅月はそんな俺を知ってか知らず、髪をいじりながら明後日の方に視線を向けていた。こんなに苦悩しながら人が悩んでいるっていうのにこの巨乳は………。
しかしけしからん胸だ。確かスリーサイズも俺が適当に考えたんだよな……。ゴクリと生唾が喉を通る。
確か………。思い出せ俺。ここは最重要ポイントだ。思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ。思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ。
必死になって探した出口とは違う出口に走っている思考。その悶々とする下半身の思考を震わせ格闘していると、背後からシャツを引っ張る者がいた。
「ん?」
「にゃー(棒読み)」
「いや、そんな棒読みで鳴かれても………」
猫と言ったが、それは猫の顔が描かれたフードを被った少女だった。
身長が小さいというのもあって、見下ろす形になるとフードで顔を隠されていてとてもじゃないが顔がよく見えない。紅月とミーシャの身長が俺の175よりも少し下の目線に対し、彼女は頭一つ分以上背丈が離れている。
もう小学生とかロリとかに間違えられてもおかしくないレベルだ。だがそのフード付きのパーカーからチラりと見える2年とは色違いのスカーフを見て1つ下なのだと直感した。女子のセーラーには学年によって色が違う。俺達2年は赤、1年は黄色、3年は白となっている。学年が変わるごとにこれが変わるわけではなく最初に決められた色が3年間使われるわけだ。簡単に説明すれば今の3年が卒業したらその1年は白、俺達が卒業したらその年の1年は赤、となるわけだ。
機嫌悪そうに紅月は首元をかき、この少女を一瞥した。
「ッチ。お前1年だろ。どうしてここにいるんだよ、スクルド」
「ス、スクルドじゃないにゃー。ね、猫だにゃー」
「恥ずかしがってる場合かよ」
ズカズカと紅月が猫と言い張る少女の背後に回り、ヒョイと首根っこを持ち上げると、さっきよりは目線が高くなり目が合う。
「にゃ、にゃー………」
「………は、はぁ」
紅月とミーシャを美人だとすると、この子は美少女というジャンルに相当するだろう。
垂れ目でショートの黒髪、頬を赤く染め、長く飛び出したパーカーの裾で口元を隠している。
スクルドと聞いて察しがつく人は多いだろう。ベルダンディ、ウルド、スクルド。北欧神話の運命の女神が元ネタだ。
この少女の名前は、『涼宮 亜衣』。真名は『スクルド』。黒髪ショートの無口の恥ずかしがり屋で妹キャラ。それに『未来予知の能力』を持っている。確かそんときやってたゲームかなんかのキャラクターから取ったはず。アニメだったかな?憂鬱だったか、望む永遠だったか。どちらも大差はないか。
名前の方は3人でI、My、Meだ。
「えっと………あい、ちゃん。でいいのかな?」
「………覚えててたんだ」
あいちゃんは目を丸くし、突如フードをさらに深く被り、っは!!と未だに紅月に持ち上げられていることに気づくと恥ずかしそうにし、ジタバタと紅月の手から逃れようと必死だった。「おい。こら、暴れるな!!わかったわかった」と紅月はその手を離すと、すぐさま少女は紅月の背中に隠れ、こっちらを見ている。
紅月はため息一つついた。
「ふぅ―――。紹介はいるか?」
「いや、いらない。それよりもなんでお前達は学校にいるんだ?昨日までいなかったんだろ?」
紅月は後ろにいるあいちゃんと目で会話すると、あいちゃんはコクりと頷いた。どうやら話してくれるようだ。
「今朝、ベルダンディが言ってただろ。『ラグナロクが近い』って」
「ラグナロク?」
後ろでコクンとあいちゃんが同意する。
記憶に残っていないってことは対した内容ではないのかもしれない。正直こいつらの設定が多すぎて、後のことはまったく覚えていない。この3人の設定を考えるのに1人10ページ丸まる使ってるはずだ。それ以外の物は単語を殴り書いて放っておいたのが多い。
『ラグナロク』。北欧神話で『神々の黄昏』、『神々の運命』を意味する言葉だったはず。内容的には世界の終わりだとかなんとか。終わりと言ってもそれは神話上の話。現に彼女達は自分達を女神とは一度も言ってはいないし、俺を神とも称していない。つまりは、『ラグナロク』と言っても何かの作戦名かもしれない。むしろそう信じたい。
「そう。詳しくはアタシ達も分からないんだけど、組織の幹部連中は緊急事態だとかどうとか」
「なんだそれ」
「逆にこっちが聞きたいのよ。実際、アタシ達は一番詳しいであろうアンタ、マイスイートクソダーリンを呼んで来いって命令しか受けてないの」
「ちょっと待て。なんかもう着いていけない」
お手上げだ。組織だの、幹部だの、緊急事態だの、クソダーリンだの。一体俺は何しっちゃったんだ?ねえ!教えて神さま!?
新キャラ一気に登場。
ここからもっと厨二くさくしていきます。