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自分から告白しちゃった。

麻紀(まき):幼なじみの湊に恋する女の子、昔はニンジンが苦手だった

(みなと):麻紀の好きな人、昔はピーマンが苦手だった

玲央(れおん):高校で知り合った湊の友達、女子人気No.1、椎茸が苦手


麻紀(まき)ーーー、(みなと)くーーーん、ご飯よーーーー」


 だからそんな大声で言わなくても聞こえるってば。


「よっしゃ、メシだ、メシだ、行こうぜ」


 立ち上がった湊はもうチビだった面影なんかない。私が背伸びしても湊の肩までは届かない。これじゃ、キスする時にはしゃがんで貰わないと……そんなことを考えて、赤くなる。



「ほら」


 低い声とともに片手を差し出されて、その骨ばった大きな手を掴む。反対に湊は私の手を(()()()())とか(()()()()())って感じてるのかな。女の子なんだっていっぱい意識して欲しい。子供の頃から一緒にいるけれども、いつの間にかこんなに違う。背も声も手も。


 いつの間にか単純な好き嫌いはなくなって、湊はピーマンを、私はニンジンを克服して、だけど、好き嫌いがなくなった代わりに私の心は好きでいっぱいになった。湊が好き。湊もそうでしょう? 早く、気持ちを伝えたい、伝えて欲しい。


 何度もシミュレーションしたみたいに告白して欲しい。そして、キス……とか、それ以上だって……きゃーーー、イヤーーーー、女の子からそんなこと言わせないで。


 湊から求められたら、……私は少しだけためらうそぶりで嫌がってみせる、でもきっと小さな声で『優しく、してね』って言っちゃう。お父さんお母さんごめんなさい、麻紀は大人の階段を登ってしまいます。子供の頃から一緒に過ごしてきた湊と。




「今日は、ピーマンの肉詰めよ」

「うわっ、ハンバーグじゃないじゃん」

「ピ……」


 テーブルの上を見つめ湊が固まる。



「あれれぇ、《《湊きゅーん》》、ピーマンはやっぱりまだ苦手なのかなぁ?」


 クスクス笑いながら背中をつつく。


「ばっかやろ、んなわけあるか、たっ、ただ、久々にこんなでっかいピーマンっ見たから、び、びびってねぇし、お前こそ、皿の脇にニンジングラッセがあるぜ、へ平気かよ」

「もっ、もちろん平気よ、あた、当たり前じゃない」

「二人とも子供の頃はピーマンやニンジン苦手だったもんねぇ、すりおろしたり、細かく刻んだり大変だったんだから、今日はちゃんと食べなさいよ、ピーマンもニンジンも身体にいいんだから、さて、お姉ちゃんが帰ってくる前に、お母さんお風呂入ってきちゃうわね」


 そう言いながら手を振って脱衣所に続くドアの奥にお母さんが消えた後、二人で顔を見合わせ、自分の皿の上のニンジンを湊の皿に乗せた。ニンジンがハート型だったから。


「あ、てんめっ、ニンジン」

「好きよニンジン、今はもうニンジン好き」


 口に出した『《《好き》》』の言葉に背中を押される。いいじゃん、私から言ったって。シミュレーションとは違うけれども。


 私の気持ち、伝えよう。伝えたい、湊に。


 ドキドキし過ぎて倒れそう……。


「でもほら、だ、()()()()()()()()に、栄養をね、いっぱい摂ってもらおうって、……そう思って」


 言った、好きって言った。大好きって言った。勇気出した。ありったけの勇気を振り絞った。女の子から好きって言ったんだ。湊だってきっと……。


 そう思ったのに、当の湊には全く響かなかった。


 食卓の椅子を引いてドッカリと座ると「うまいうまい」と言いながら、皿の上のニンジンもピーマンの肉詰めもキレイに平らげた。


 好きな女の子に、大好きって言われたら普通もうちょっとこう、ドキドキするんじゃないの?


 一世一代の告白……でもないか、何となく、何でもないことみたいに言ったからスルーされちゃったのかも。


 結局、ご飯の後は二人で普通に、バラエティやニュースを見ながら過ごして、しばらくしたら湊は家へ帰って行った。


 帰って行った、と言っても家は隣だ。油の足りない蝶番(ちょうつがい)がギィーっと悲鳴を上げ、ドアが閉まるバタンという音がした。




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