表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/6

第4章:「初めての血」(後編)

凍りついた。


それは鋭く、喉から出る、間違いなく人間ではない音だった。


俺の左から来た。森のより深い部分から。


別の悲鳴が応えた。それから別の。重なり合う声が、ある種の原始的な方法でコミュニケーションを取っていた。


*くそ。*


ゆっくりと、非常にゆっくりと、立ち上がり、音の方を見た。


木々の間、約30メートル離れたところに、彼らが見えた。


ゴブリン。


三体。


想像していたよりも醜かった。子供ほどのサイズの人型の生き物だが、ねじれて奇怪だった。いぼだらけの緑色の肌。大きくとがった耳。悪意に満ちた知性で輝く黄色い目。ぼろを着て、粗末な武器を持っていた。釘の付いた木製のメイス、錆びた短剣。


そして彼らは俺を見つけた。


一体が俺を指さして何かを叫び、他の二体が振り向いた。


一秒間、誰も動かなかった。


それから、見えない合図が鳴ったかのように、三体全員が俺に向かって走り始めた。


*走れ!*


俺の体は心より先に反応した。振り返って走った。


枝が顔を打った。ブーツが根や石を踏んだ。背後でゴブリンが追いかけてくる音が恐ろしかった——鋭い悲鳴と速い足音が混ざり合っていた。


彼らは速かった。予想よりも速かった。


肩越しに振り返った——


失敗。


足が根に引っかかった。うつ伏せに倒れ、地面に激しく打ちつけた。肺から空気が苦しい息で出た。


メイスが頭があった場所に叩きつけられたちょうどその時、転がった。石が砕けた。


後ろに這い、震える手でナイフを引き抜いた。


三体のゴブリンが俺を囲み、半円を形成した。笑っていた——あるいはその歪んだ表情が彼らの顔で意味するものは何でも——鋭く黄ばんだ歯を見せていた。


一体が一歩前に出て、メイスを振った。


ナイフを上げた——


メイスが俺の手を残酷な力で打った。ナイフが飛んで行き、数メートル離れた場所に着地した。


指から爆発的な痛みが放射した。


*だめだ、だめだ、だめだ——*


---



二体目のゴブリンが錆びた短剣を持って突進してきた。


横に転がり、刃がシャツを裂き、脇腹をかすめるのを感じた。鋭い痛みだが、浅かった。


ナイフに向かって這った——


肋骨への蹴りが俺を止めた。肺から空気が出た。咳き込み、喘いだ。


*ここで死ぬのか。*


*追放されてたった一日後、ゴブリンの手で死ぬのか。*


*なんて哀れな。*


三体目のゴブリンが頭上にメイスを上げた。すべてがスローモーションで見えた。木に付いた錆びた釘。その顔のサディスティックな笑み。死が降りてくる——


*いやだ!*


俺の中で何かが壊れた。


いや。何かが*目覚めた*。


ここでは死なない。


これまでのすべてを経て、死ぬわけにはいかない。


戦わずして死ぬわけにはいかない。


持っているすべてを使わずして死ぬわけにはいかない。


たとえそれが皆が笑ったスキルだとしても。


たとえそれが「役立たず」だとしても。


それが俺が持っている唯一のものだった。


*『縫製』*


「起動しろ!」と叫んだ。


---


世界が止まった。


半透明のウィンドウが目の前に現れた。空中に浮かぶ輝くテキスト。


【スキル:縫製】

【機能を選択:】

▸ 切る

▸ 測る

▸ 縫う


考える時間はなかった。メイスはスローモーションで俺の頭蓋骨に向かって落ちていた。


*切る!*


心がコマンドを叫んだ瞬間、視界が変わった——


ゴブリンが固体の生き物ではなくなった。


彼らは……布だった。


緑色で奇怪な布ではあったが、布だった。


そして彼らの体に、はっきりと見える点線があった。仕立て屋がパターンを切る前に付ける印のように。


*よし!見える!*


ゴブリンに向かって手を伸ばした——


【エラー】

【対象として選択できません】

【対象のレベルがユーザーの能力を超えています】


*何?*


必死にもう一度試した。メイスは俺の顔から数センチだった。


【エラー】

【対象として選択できません】

【レベル制限が有効です】


*だめだ!だめだだめだだめだ!!*


【エラー】

【対象として選択でき——】


【エラー】

【対象として選択——】


*くそったれ!!*


叫んだ。声ではなく、俺の存在のすべての繊維で。


*ここで死ぬわけにはいかない!!*


*切れと言ってるんだ!!*


*切れ切れ切れ切れ切れ!!*


ウィンドウがより速く現れ始め、互いに重なり合った。


【対象として選択できま……】

【対象とし……】

【対象!%/】

【エ……ラー】

【エラ34!%&】

【!@#$%】

【■■■■■】


俺の心が現実の純粋な否定で吠えた。ここで死ぬことへの絶対的な拒絶で。


*不可能かどうかなんて関係ない!!*


*それでも切ってやる!!*


そして——


*ガシャン*


水晶のような音。千のガラス窓が同時に割れるような。


エラーウィンドウが光の破片となって爆発し、空中に消えた。


【…】


沈黙。


これ以上の警告はなかった。これ以上の警告はなかった。これ以上の確認もなかった。


まるで宇宙が単に……受け入れたかのように。


鼻から何か熱いものが滴り始めた。


血だ。


しかし考える時間はなかった。


なぜならはっきりと見えたからだ。


点線。完璧に見える。


どこを切るかを正確に示している。


右手が本能的に動いた。


ナイフは持っていなかった。


必要なかった。


空中で斜めのジェスチャーをした——


そして世界が従った。


*スラッシュ*


奇妙な音。金属が肉を切る音ではなかった。むしろはさみが布を切る音のような。


ゴブリンが攻撃の途中で止まった。


その表情が悪意から混乱に変わった。


それから、ただ……分離した。


血まみれではなかった。爆発的でもなかった。


きれいだった。


上半身が横に滑り、「切った」斜めのラインで下半身から分離した。一瞬、両方の部分が浮いていた。まるで宇宙が起こったことを処理しているかのように。


それから落ちた。


他の二体のゴブリンが凍りつき、仲間の残骸を何か恐怖に近いもので見つめていた。


俺も見つめていた。何をしたのか信じられなかった。


鼻はまだ出血していた。上唇を流れる血が温かく金属的だった。


*何を……何をしたんだ?*


しかし時間はなかった。


残りの二体のゴブリンが怒りと恐怖が混ざった叫びを上げた。一体は短剣を持って突進してきた。もう一体は横に走り、側面から来ようとした。


今回は、点線が抵抗なく現れた。


システムはもう俺を止めなかった。


何かを壊したのだ。何か根本的なルールを。


そして今……切れる。


左手を水平の弧で動かした——


*スラッシュ*


短剣を持ったゴブリンが垂直に分離した。二つの完璧な半分が反対方向に落ちた。


最後のゴブリンが立ち止まり、その黄色い目が絶対的な恐怖で大きく開いた。


振り返って逃げようとした——


両手をXの字に動かした——


*スラッシュ スラッシュ*


ゴブリンが四つの完璧なセクションに分離し、バラバラにされたパズルのピースのように落ちた。


沈黙。


森が完全に静かになった。


鳥はさえずるのをやめた。風が止んだ。


三体のゴブリンの残骸の間に立ち、喘ぎ、手を震わせ、鼻から血を滴らせている俺だけ。


*やった。*


*システムを壊した。*


*そして生き延びた。*


---



*何を……何をしたんだ?*


手を見た。激しく震えていた。


鼻から血が滴り、新しいリネンシャツを汚していた。しかし今、頬を流れる温かい何かも感じた。


顔に触れた。


指が赤く染まった。


目も……出血していた。


*何……?*


世界が突然傾いた。


膝をついて、喘いだ。頭の中で何かが……壊れていた?いや。何かが……開いていた?


まるで心の中に閉じられたドアがあって、突然割れたかのようだった。亀裂が広がり、存在してはいけない場所から光が漏れていた。


*痛い。*


物理的な痛みではなかった。もっと深いものだった。もっと根本的な。


まるで魂そのものが……


断片化している。


あるいは……


融合している?


はっきりと考えられなかった。血が鼻と目から流れ続けた。世界が回転した。


*できない……*


考えを終える前に、闇が俺を飲み込んだ。


---


目を開けたとき、太陽は空低くにあった。


どれくらい……?何時間?


ゆっくりと座った。すべてが痛かったが、それは遠い痛みで、まるで他の誰かに起こっているかのようだった。


顔に触れた。血は乾いて、鼻の周りと目の下にかさぶたを作っていた。


*かなり……出血した。*


近くの小川まで這って行き、水の上に身を乗り出した。俺の反射が俺を見返した。


乱れた深紅色の髪。汚れた顔。暗い涙のように肌を印す乾いた血。


しかし最も奇妙だったのは……


*俺か?*


両手を冷たい水に突っ込み、血が消えるまで激しく顔をこすった。それから再び反射を見た。


同じ顔。同じ淡いオレンジ色の目。


しかし何かが違った。


*あれは俺だ*と俺の一部が思った。


*俺か?*と別の部分が思った。


まるで心の中で二つの声が同時に話しているかのようだった。二つの視点が重なり合っている。


一つはこの顔を十五年間見てきたから知っていた。


もう一つは初めて見るかのように見ていた。


目を閉じ、思考を整理しようとした。


そして記憶が襲ってきた。


急流としてではなかった。むしろゆっくりと絡み合い始める二つの別々の流れのように。


*別の世界。コンクリートとガラスの建物。火なしで輝く光。通りを一人で動く機械。手の中の小さな箱に世界のすべての知識が入っている……*


*コンピューター?電話?インターネット?*


言葉が心に現れた。馴染みがあるが奇妙だった。知っているけど……どうやって?


*そこに住んでいたから。*


いや。


*俺がそこに住んでいた。*


頭に手を当て、頭蓋骨を押さえつけるようにして、すべてを所定の位置に保とうとした。


「これは……狂ってる」と声に出してつぶやいた。


そして声が……違って聞こえた。


音程ではない。抑揚で。


以前はズーヴェラン邸で教えられたように、各言葉を測りながら注意深く話していた。正式。礼儀正しい。よそよそしい。


しかし今、言葉は自然に出た。直接的。常に使っていた礼儀正しい貴族の層なしに。


「一体何が起こってるんだ?」と言い、その言葉が奇妙に解放的に感じた。


*以前はこんなふうに罵ったことがなかった。*


*あるいは……別の人生ではあった。*


記憶は融合し続けた。


俺、イヤホンをつけて夜の通りを歩いている。


俺、ズーヴェラン邸の図書館で勉強している。


俺、まばゆい光の下で車にひかれて死ぬ。


俺、サンスパイア大聖堂で洗礼を受ける。


俺、目に銀河を持つ少女に抱かれる。


*女神。*


その記憶が最も鮮明だった。


鈴のような笑い声。宇宙が生まれ死ぬのを示す目。粘土のように俺の魂で遊ぶ手。


*「あなたの手先の器用さが気に入ったわ〜それに物を縫うのを楽しんでいるのね」*


彼女の声が心に響いた。楽しく無邪気に。


しかしその口調には何かもっとあった。何かいたずらっぽい。何が起こるか正確に知っている何か。


*「いいショーを見せてね〜」*


笑った。短く、ほとんどヒステリックな笑い。


彼女は知っていた。


最初から、これが起こることを知っていた。


世界が「役立たず」と呼ぶスキルをくれた。貴族の笑いものにされるスキル。追放の原因となるスキル。


しかし何かもっとくれた。


ルールを破る能力。


不可能を否定する。


世界そのものの制限を切り抜ける。


「いたずらな女神め」とつぶやいたが、顔には笑みがあった。


ゆっくりと立ち上がり、まだ二つのアイデンティティの融合を処理していた。


この世界に十五年間生きてきた追放された貴族。


そして車の車輪の下で死んだ別の世界の若い大人。


今、両方が……俺だった。


完全に俺。


「オーケー」と声に出して言い、音を試した。その言葉は舌の上で奇妙に感じた——ここには存在しない別の世界の言葉。「オーケー。今分かった」


まだ切ったところに散らばっているゴブリンの残骸を見た。


「重要なレベルなんてない。破れない制限なんてない」


まだ十個の治癒ハーブが入った無傷のバッグがある場所に歩いた。


「世界が『不可能』と言うなら……」


それを拾い、肩にかけた。


「俺は……それでも可能にするだけだ」


眠っている間に現れた半透明のウィンドウを見た。


【名前:ネイサン】

【レベル:2】

【EXP:150/300】

【スキル:縫製】

▸ 切る [使用可能]

▸ 測る [使用可能]

▸ 縫う [未試験]


ゆっくりとした笑みが顔に広がった。


教養ある貴族の笑みではなかった。


自分がプレイしているゲームに気づいた誰かの笑みだった。


そしてすべてのルールを破る方法の。


「彼女が望むショーをあげよう、な?」といたずらな女神が見ているであろう空に向かって言った。


トロムウッドに向かって歩き始めた。俺の歩みはこれまでになく確かだった。


追放された貴族はあの森で死んだ。


そしてその代わりに何か新しいものが目覚めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ