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マッチングアプリを始めてみた約3週間後

作者: 白藍瑚珀

 マッチングアプリを始めて約3週間。これと言って惹かれる男性には出会えていない。


 今は電話しようと言ってきた男からの連絡待ちだ。20時半にしようという約束だったのに、現在の時刻は21時02分。なんの連絡もない。

 こういう人間は嫌いだ。人の時間をなんだと思っている。

 電話の約束があったから早く帰ってきた。友達をご飯に誘うのもやめた。お風呂もできるだけ早く済ませた。この電話のために、私は様々な時間を調整した。


 本当に、嫌いだ。


 プロフィールに書いてあることを、最初の挨拶で聞いてくる男も嫌いだ。一生懸命自己紹介した後に「で、名前は?」と聞かれているような感覚。

 これを上司に話したら「そんな小さいことで」と笑われたが、私にとっては大きな問題だ。誠実さに欠ける。

 他人の無礼を、私は一切受け入れない。私の時間も心も、価値のある大切なものにしか与えない。私の誠意は、それを正しく受け取ってくれる相手にしか見せない。

 電話の約束をしていた男には、もう今日は無理なので別日でお願いしますとメッセージを入れておいた。もう連絡することはないだろう。


 無性に腹が立つ。食べても食べても満たされない。些細な出来事で、自分には生きる意味も価値もないように感じる。ああ、そうか。1週間後は生理の開始予定日だ。ちゃんと1週間前から肌荒れをし、ちゃんと食欲が爆発し、ちゃんと情緒が不安定になる。


 異様に写真を送ってほしいと頼んできた男も気持ち悪かった。やりとり4回目で家に誘ってくる男も気持ち悪かった。セフレを探している男も、自ら優しいですアピールをする男も、カラオケの点数の写真を載せている男も、ひと回り年下の女に平気な顔をしてアプローチをする男も、全員気持ち悪い。

 

「ついてきてくれる女性が好きです」

「甘えてくれる女性が好きです」

 男側に主導権がある感じが気に食わない。


 なかなか惹かれる男性に出会えない。そりゃそうだ。生涯を共にするパートナー選びなのだ。今まで生きてきた年数よりも長く一緒に生き、死ぬまで苦楽を共にするのだ。自分の両親が死んだ時、隣で支えてくれる人でなければいけない。今まで何度も感じてきた「なんか生きたくない」という思考を、殺してくれる人でなければいけない。


 足が速いというだけで好きになれていた小学生時代が懐かしい。初恋のアキトくんは元気にしているだろうか。どこでどんな仕事をしているのだろうか。もう結婚はしたのだろうか。

 実家に帰るたびに「あの子結婚したんだって」「あの子は子どもが生まれたんだって」と母から同級生の話を聞かされる。親戚に会うたびに「いい人いるの?」と聞かれる。


 個人的には30歳で女の賞味期限は切れると思う。綺麗な芸能人でさえ「劣化した」と言われるのだ。一般人の美容に疎い私なんて化け物じゃないか。


 などと色々考えながら、今日もいいねをしてくれた男性陣をチベットスナギツネの如く虚無顔で捌いていく。

 あと数週間で私は27歳になる。仕事は休みにした。サーティワンのアイスクリームケーキを食べると心に決めている。誕生日なんて死へのカウントダウンじゃないかといつの日からか素直に喜べなくなったことは、この際考えないでおこう。ここまで健康に育ててくれた両親に感謝だ。

 去年は適応障害を発症していてつらい誕生日だった。今は無事に働くことができている。今年は盛大に自分で自分を祝ってあげよう。


 さあ、明日も頑張って生きるか。

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