8話 夢みたいだね
また執筆活動ですか?
シウスの病室
シウス「書きたいことを
好きなように書いてるだけ」
ノートが積まれてる数が増えた
ソマ「がんばりますね?」
シウス「がんばると言うか
シウス「このくらいしか
何もないから
ソマ「(・・・このくらいしか
・・・何もないか
ソマ「(・・・胸が痛む)」
ソマ「(・・・それに
・・・これだけの
・・・才能があるのに)
ソマ「(ぜんぶ
”精神障害者”と言う理由だけで
何もできない
夢を追うことも
そのために働くことも
勉強することも
努力することも
挫折することも
成功することも
ソマ「・・・
・・・何もかも
・・・ぜんぶ
回想
ソマの友人「・・・もう
・・・やめたい
・・・もう
・・・夢を追うことに疲れた」
ソマ「・・・・・
夢で苦しめるのが
どんなに幸せかを
思い知りなさい?
回想 終了
ソマ「(こういう仕事”精神障害専門医”
してると そう思えてしまう)」
回想
ソマ「バンドや作家になりたかったと?」
シウス「そうしたかったんですけどね」
ソマ「では まず
最終的に寛解を目指すとして
そのために
働くことも考えて」
シウス「先生?
俺の身体で
働けると思ってますか?
ソマ「・・・」
シウス「先生が一瞬でも
俺の身体を味わったら
口が裂けても
”働く”って言葉
出てきませんよ?
回想 終了
ソマ「・・・」
ソマ「(・・・いかに
己が無力なのかを思い知る
精神障害者の
知識 データ
関わった経験があっても
精神障害者になったことわない
ソマ「(だから
本当の意味で理解することは
永遠にできない
想像で どれだけ苦しいのかを考えても
所詮 想像
・・・私は・・無力だ)
翌朝
いつも
今日を告げて来る人が居る
いつもの
優しい声で
ぶきみな挨拶を
リリア「おはようございます
今日もお互い死に損ないましたね?」
リリア「・・・」
その いつもの
朝の挨拶をして
黙り込んだ
リリア「・・・」
シウス「どうした?」
リリア「・・・
・・・死ぬのが・・怖くなった
リリア「こんな苦しい身体なら
死んだ方がマシ
そう思っていたのに・・・」
シウス「・・・リリア?」
リリア「・・・
・・・幸せ・・過ぎて
リリア「死ぬのが怖くなった!
シウスのせいだからね!?」
シウス「じゃあ 明日から
朝の挨拶 変えてみるか?」
リリア「え?」
シウス「たとえば
おはようございます
今日も お互い生きてたね偉い
シウス「とかは?」
リリア「それ良い!!」
リリア「えっと
おはようございます
今日も お互い生きてたね偉い!!
シウス「フフ」
リリア「どうしたの?」
シウス「純粋で子供っぽいなぁって」
リリア「!!!!!!!」
シウス「上品で
おしとやかな性格は
どこに行ったの?」
リリア「・・・あ・・あれは
ネコ被ってて」
リリア「シウスなら もう
飾らなくてもいいかな~って」
シウス「・・・」
リリア「・・・幻滅した?」
愛おしく思った
リリア「!!!!!!!」
シウス「本当のリリアを見せてくれた」
リリア「・・・そ・・そういうこと
サラっと言う?」
ソマに呼び出されるリリア
リリア「なんだろう?
行ってくるね」
シウス「頑張ってな?」
リリア「だから
頑張りようがないんだって」
1時間後
リリア「・・・どうしたリリア?」
リリア「・・・・・」
リリア「・・・」
リリア「・・・・・・」
リリア「・・・・・・・・
・・・余命を
・・・告げられちゃった
シウス「・・・え」
リリア「・・・・・・・」
シウス「・・・どのくらいだ?」
リリア「・・・長くて・・1年」
シウス「・・・」
シウス「・・・・・・」
シウス「・・・・・・・・」
立ち上がり向かう先
リリア「ちょっと!シウス!?」
ソマの診察室
どういうことだよソマ!?
ソマ「・・・」
ソマの
胸ぐらをとり
リリア「シウス!?」
シウス「なに
ふざけたこと言ってるんだよ!?
ウソだよな!?
リリアに言った事
ウソだって言えよ!!??」
リリア「シウス!?」
ソマ「・・・・・・・
・・・・・・・・・」
シウス「ふざけたこと
言ってんじゃねええぞ!?
取り消せよ!ウソだって言えよ!!??」
ソマ「・・・
死ぬ準備を
しろおおおおおおお!!??
シウス「・・・」
リリア「・・・」
ソマ「急に死ぬやつだって居るんだ!!
まだ
死ぬ準備ができるだけマシだ!!
シウス「・・・」
リリア「・・・」
ソマ「死ぬ前に
言いたいこと言っておけ」
いつもの
人の少ないフロアの
椅子に座る二人
夕方
シウス「・・・」
リリア「・・・」
黙って何も言えない二人だが
リリアが意を決したように口を開いた
リリア「・・・私・・ラッキーだよね
急に死ななくて良かった」
シウス「・・・なに・・言ってるんだよ?」
リリア「う~うん
きっとラッキーなんだよ
・・・死んだ後じゃ・・言えないし
シウス「だから何を?」
・・・私・・シウスのこと好き
シウス「・・・」
リリア「・・・・・
・・・死んだ後じゃ
・・・言えないでしょ?
シウス「・・・」
シウス「・・・知ってるよ・・とっくに」
リリア「・・・そっか」
リリア「・・・」
リリア「・・・なんで
・・・シウスは
・・・泣いてるの?
シウス「・・・泣くに・・決まってるだろ
泣くに決まってるだろ!
こんなの!!
リリア「・・・」
涙を流しながら
そう叫ぶシウス
リリア「・・・いま・・思う
・・・死に損なって
・・・居たかったなぁ
リリア「でもね シウス?」
愛しい
その人を抱きしめる
シウス「・・・」
リリア「・・・
・・・ありがとうね?
シウスが居なかったら
私は
何もなくて死ぬところだったよ
シウス「・・・」
リリア「・・・もう1回
・・・私に言って?
・・・私って
・・・何も・・なくないよね?
シウス「・・・」
シウス「・・・」
シウス「(・・・何もなくない?
そうだよな
何もなくて死ぬのは怖いよな
・・・でも)
なんで
そんなこと聞くんだ?
リリア「・・・え?」
リリアを抱きしめた
切なく
悲しい声で
震えながら
シウス「・・・
何もなくないだろ!?
俺たちの間に
何もなくないわけないだろ!?
リリア「・・・シウス」
シウス「・・・・・
何かがある
リリア「・・・」
シウス「・・・
リリアがくれた物が確かにある
俺のあげた物がリリアにはある
シウス「・・・何もないって
何もないって!
言ったら怒るからな!?
リリア「・・・
満たされた その言葉で
長くて生きられるのは1年
・・・でも
リリア「・・・
・・・幸せ過ぎて
・・・いま死んでもいい
リリア「・・・
リリアもシウスを抱きしめる
微かな声で 諭すように
リリア「・・・これだけは
・・・覚えておいてね?
・・・シウスも
何かがあるからね?
シウス「・・・」
リリア「・・・少なくとも
私があげたものが
シウスにはある
シウス「・・・」
リリア「・・・これからも・・ずっと」
リリア「何も無いって
・・・言ったら・・怒るからね?
シウス「・・・」
リリア「・・・
・・・死んでも
・・・怒るからね?
シウス「・・・
リリアが最期を迎えるまでに
できることはないかと探した
精神障害者である俺たちの
語り合った夢
”レイチェヴュアル”に
あっただろ?
決して叶うことのない
俺たちができるとは思えないことを
リリアが最期を迎える前にしよう
シウス「・・・リリア・・俺たち
旅行しないか?
リリア「・・・・・
・・・え?
シウス「そんでもって
おしゃれして
メイクして
きれいになって
リリアの
好きな服とかも買って
コスプレも
口紅 塗ってみたりとかさ
リリア「・・・
・・・覚えてて・・くれてたんだ
シウス「死ぬ気になれば
歩くことだってできる!!」
シウス「死ぬ気になれば
旅行くらいできるだろ!?」
リリア「・・・できるかな?
・・・私に」
シウス「簡単だよ!!
列車に乗って
行けるところまで
行けばいい!!
それが
旅行になる!!
リリア「・・・」
リリア「・・・フフ
・・・でも
・・・それって
・・・旅行って呼ぶのかな?
おかしくなって笑った
そんなに簡単だったんだ
旅行のやり方って
シウス「見た事のない景色を
感じた事のない世界を
感じればいい
二人
声をそろえて言っただろ?」
リリア「・・・」
シウス「・・・
外に出て
自由になりたいと
リリア「・・・
・・・夢・・みたいだね
シウス「・・・夢になんか・・させない」
リリア「・・・フフ
ありがとう
・・・シウス
二日後 病院
リリアの病室
リリア「楽しい1年にしようね?」
病院からの
脱出を試みる
シウス「1年なんかにさせない」
リリア「じゃあ 半年?」
シウス「・・・なんで
・・・短くなるんだよ?」
リリア「だって~
いつまで生きられるか
わからないし~」
悲しそうではない
むしろ
シウスにイタズラして
困らせて遊ぶような
子供のような笑顔
シウス「どこに行きたい?」
リリア「選んでいいの?」
最期くらいと
言いかけてやめた
言葉にするのは
悲しすぎる
リリア「じゃあ
行きたい場所は
レイチェヴュアル
シウス「そうだな
そこへ行こう」
リリア「夢みたいだね
行こう?
私たちの
夢をばらまいた世界へ?




