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ヤンデレ系ヒロイン

 結局、カラオケは恵梨香の体調不良を理由にお開きとなった。

 カラオケからの別れ際、和樹には見えない位置で腕を組んできたのを俺は見逃さなかった。

 あの時の恵梨香の目は、ケモノのようだった。身震いが止まらん。



 そして今はその次の日の朝だ。


「いやぁ、恵梨香。体は平気なのか?」


「もう大丈夫よ。風邪も引いてないし、熱も出ていないから」


「ならいいけどよぉ」


 二日連続で俺の目の前では和樹と恵梨香が談笑していた。

 本当に仲が良い。

 早くくっつけ。


 そして俺に話しかけてくるなよ。二度とな。


「なぁなぁ、ハク」


「……なんだ」


 言った側から和樹が話しかけてきた。


「なんでずっとこっち見てんだ? もしかして恵梨香のこと見てたとか?」


 和樹は揶揄うようにニヤついた。

 節々から間抜けが滲み出ているくせに、変なところで察しがいいから困る。


 とりあえず、恵梨香の反応を見てみよう。

 昨日の今日で俺への接し方がどう変化するか確認しておかないといけない。


 ラブファンの世界と同じ基準なら……昨日の反応を見る限りもうアウトだと思う。

 好感度は上限突破していてベタ惚れされてるはずだ。


 そうなっては、俺に逃げ場はない。


「なっ! ば、ばか! ハクくんが私のこと見てるわけ……あ、でも嬉しいし、やっぱりずっと私だけを見ていてほしいし、他の人を見てたらイライラするし……」


 アウトだ! 正真正銘のアウトだ!


 島内恵梨香は陥落した。

 既に一ノ瀬和樹のルートには修正できないだろう。


 それはなぜか、答えは簡単だ。




 島内恵梨香は極度の惚れっぽいヤンデレ体質なのだ。




 簡単に人を好きになるし、簡単に人を信用する。


 そして、一度信用したらその好感度が下がることはない。絶対に。

 だから恵梨香単体を攻略するのはチョロい。

 攻略方法は簡単。恵梨香に優しい言葉をかけ続ければ好感度が上がり続ける。


 ただ、上げ方を見誤るとヤンデレルートに突入し、今みたいにおかしくなる。


 さらにいうと、他のヒロインを攻略する時にふとした拍子に恵梨香を堕としてしまうと、その瞬間に浮気発覚ルートに分岐しバッドエンドを迎える。

 恵梨香は最初の壁なのだ。他のヒロインを攻略する時に障壁となる存在だ。


 (まさか昨日の出来事だけでここまで好かれてしまうとは……ゲーム通りとはいえ誤算だった。予想以上に朝霧ハクというキャラクターの破壊力は高いのかもしれないな)


 ゲームの都合上、恵梨香は長年和樹に片想いしてきた設定なので他の誰かに惚れることはない。

 しかし、俺というイレギュラーのせいであえなく瓦解した。


 島内恵梨香という幼馴染系メインヒロインは、もうヒロインレースから撤退したも同然なのだ。


 既に俺——朝霧ハクに乗り換える形になってしまった。


「でもでも、ハクくんならなんでも受け止めてくれるし私のことを助けてくれるし何があってもずっと一緒……だよね?」


 恵梨香は人目を気にせず俺の腕にしがみついてきた。


 柔らかなオパーイを擦り付けてくる。


 犬のマーキングみたいだな。

 でも、マーキングって固い電柱にするし、俺のキーボしたチソチソが固くなって電柱代わりにマーキングされて……って、何考えてんだ俺。


 目を覚ませ。


「……」


 心頭滅却、心身統一、煩悩退散。


 俺は無言で呪詛を唱えることで、オパーイの柔らかさを無効化することに成功した。


 しかし、その光景を見た和樹は黙っていない。


「お、おい、恵梨香? どうしたんだ?」


「んー? なにがぁ?」


「……まあ、いつもの恵梨香だよな! うん!」


 和樹を頼りにできないということが、今の一瞬で痛いほどわかった。


 いつもの恵梨香をなんだと思ってんだ、このバカは。





 仕方ない。

 恵梨香のことはもう諦めよう。


 ゲームでもヤンデレ化した恵梨香を止める術はなかったし。

 最後には和樹が苦い顔をしながら腕を組むスチルが映し出されていたし、どう足掻いても無理だろうな。


 上手に付き合いながら、残りのメインヒロインたちを和樹に押し付けることにしよう。

オパーイを押し付けられたら、男子高校生はおかしくなっちゃうよね

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