7 異常
「遅いな。いったい、エブは何をしているんだ?」
通信機の呼び出し音をいらいらした面持ちで聞きながら、ワイスコップが呟いた。
「おかしなことが起こったのでなければいいが……」
そのとき彼の通信機が返答を返した。
「すみません、船長」
エブリン・パーネルの声がいった。
「出るのが遅れてしまって」
「何をしていたんだ?」
「あの……」
パーネルが口ごもってから答えた。
「先生が変なことを口走るものですから」
「変なこと?」
「ええ、彼の顕微鏡が自分を見返してきたっていうんです」
「顕微鏡が見返す?」ワイスコップは首をひねった。「どういうことだろう?」
「さあ、私にもそれは……」
しばらく考えてから、ワイスコップが答えた。
「とにかく了解した、エブ」
ジープに袋を取りにいったロイを除く仲間の二人を振り返り、
「我々はこれから帰還する。実は少々やっかいごとに巻き込まれたようなんだ」
若干、疲れたような口調だった。
「危険はないんですか?」
「正直なところ、わからない」ワイスコップが答えた。「だが、いまのところは大丈夫なようだ」
「気をつけてくださいね」
「ああ、わかった。では以上だ」
ワイスコップは無線機を切った。