33 回帰
賑やかな艦橋に戻って数分寛ぐと、ついに一等航宙士のフェルナンド・ミリオリーニが告げた。
「全員、ただちにベルト着用の上、着席してください」
モニターに映った全員の姿を素早く確認する。続けて、
「磁気モーメント異常性解除。慣性質量は一光秒二パーセントの割合で徐々に増大。微細構造定数安定化。出口が近づいています」
ワイスコップが叫んだ。
「エブ、ゲートから抜け出したら、ただちに救難信号を発してくれ。この片肺飛行じゃ、いつまでエンジンがもつかわからんからな」
「了解、船長」
無線通信士のエブリン・パーネルが答えた。
「リーザ、ご同様だ。素早い位置の探査をお願いする」
「了解、船長」
航路算定士のリーザ・ペトローヴナが答えた。
「ジョン、計器の異常があったら、すぐに教えてくれ」
「了解、船長」
科学班長のジョン・カウフマンが答えた。
「ロイ、燃料庫を火災から死守してくれ」
「がってんでさあ、船長!」
機関士のロイ・メルが答えた。
「ドグ・温、怪我人が出たときには、よろしく頼みます」
「了解、船長」
温麗華が答えた。
「それから、先生。もし万一、またしても可笑しな処に抜け出たときには、お知恵を拝借しますよ」
「了解です、船長」
惑星免疫学者の佐伯啓介が答えた。
そしてゲートを抜け出る直前、稀土類金属採鋼船〈マリー・アントワネット二世号〉の船長、けむくじゃらの大男、リチャード・A・ワイスコップはこういった。
「おれは、諸君たち全員が大好きだよ!」(了)




