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河川敷。昼の二時。木漏れ日。
「何からしたらい?」
「何ができるの」
「」
4カポ。CM7,B7,Em,Am7。ローコード。
異性への無用な期待に目を眩ませた男がそのやり場の無い虚しさにかまけて”君”に向けた思いを吐き出す歌。その決して直接的とは言えない言い回しは確かに他の”君”を歌う曲にはない特異的な香りをはらんでいる。恥ずかしげもなく僕はこの歌を大声で歌っていた時期もあった。
「そのコードなら」
D#M7.(5弦6フレット,4-5,3-7,2-6)D7.(5弦5フレット,4-4,3-5,2-6)Gm7.(6弦3フレット,4-3,3-3,2-3)A#7(6弦6フレット,4-6,3-7,2-6)
春に散る桜の花弁、花冷えの春の雨にあの頃の”君”を思い出し記憶を想起させ、霞んでいく愛しげな記憶を、秀逸な色彩描写、詞の対比によって
「ちょっと待って」
「♪~/…?どうしたの」
「そのコード何」
「Just the to of us」
「ん?」
「丸さ進行」
「どういう意味」
「さっき弾いてたじゃん、これ」
CM7,B7,Em,Am7。ローコード。
「うん」
「それをカポを使わずにさ、」
「いや、え、メジャーセブンスってこうじゃないの」
セーハ。5弦ルート。4-8,3-7,2-8。
「それもメジャーセブンスなんだけど、コードってただの音の構成の話だからいくらでも作り変えられる」
「めげそう」
「僕も覚えてるのはそれと、これくらいだよ、後はローコード」
彼女は初めて見るハイコードのメジャーセブンス、巷でよく言うジミヘンコードの7度を半音上げた形を必死に真似している。後は小指だけ。筋が良い。ひくひくと動く小指とともに、んお~と唸りながらやっとのこと、アルペジオでそれを弾いて見せる。
「♪~/…これ、すごく、いいね、ぜんぜん違う」
「でも同じコード」
「私これ好きだわ」
次に半音下がったジミヘンコードを弾いて見せる。
今回はひと目、一回で弾いてみせた。Gm7、A#7これは知っていたようで、コードチェンジも上手く言っている。
「この3つはなんかみたことあるよ」
「対応する、メジャーセブンスとか、セブンスとか、マイナーセブンスとかは全部これで代替できるよ」
「ほほほ~ん、なるほどね」
さっそく、拍を刻んで弾いている。やはり、初めてのM7のコードチェンジで少しつまずくが、あと少し練習すればものになるだろう。
「なるほどね、わかった。さっきのさ、もう一回聞かせてくれない?」
彼女はギターをベンチに置いてそう訪ねた。
春に散る桜の花弁、花冷えの春の雨にあの頃の”君”を想起し、霞んでいく愛しげな記憶を、秀逸な色彩描写、詞の対比によって表現した妙実な曲。
「いい曲だね」
ああ、わかる。
「もう一曲いいかな」
「うんっ」
キーを全音下げる。
色の拔けた生活に苛立ちながら、頭上で降る惨めなみぞれに”君”のいたあの頃、”君”の上に降った儚くしんしんとつもる雪を思い出す。
いつもは”愛だ恋だ腑抜けた””巷にあふれるラヴソング”を皮肉にやじる彼が珍しく歌った二曲の失恋歌は、そのモチーフとなる季節、歌詞の構成による綺麗な対比によって双極を成し、まるで一本の糸を通したかのように同一のメジャーなコード進行を有している。
「もしかしてさ」
「うん」
「それが一番好きな曲?」
「さあ」
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「あのね」
一通り、お互いの弾ける曲を交換し合って、僕らは喉の疲れもほどほどに、夕焼けが照らす緑の芝を眺めながらお互いに持っていたギターを傍らにおいた。
ガコーン。
おっと。
「私さ、ちょっと変な趣味があって」
「聞かないでおくよ」
「趣味と呼べるほどたいしたことないんだけど」
?
「聞いてよっ、ちょっとくらい」
痛。




