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「ねえ見て」
犬が二匹、白と黒。犬種は知らない。
「黒い方、すっごく可愛くない??ちょこちょこちょこって」
「そうだね」
「速く行っちゃうもんだからさ、たまに後ろ振り返ったりなんてして」
白い方は大きく鈍重で草を臭うのに夢中だった。
「人間もああだったらいいのに」
?
「ねえ、何聞いてるの?」
僕はスマホの画面を見せた。
『君の瞳に恋してる』
彼女はさぞ不愉快そうに眉を顰めた。
「椎名林檎」
「なに?」
「僕はspotifyでさ 」
「そうなんだ、私はねapple music!!」
「課金はしてない」
「だから?」
「曲は選べない。」
「え、見して」
彼女は僕のスマホを手に取り、操作した。
「うっわほんとだ、シャッフル再生しか選べないじゃん、うけるwww」
彼女はスマホのblootooth をoffにして僕にそのスマホを返した。
「アイラービューベーイベー」
彼女は歌い出した。手を後ろに組み、歩調に合わせて体を大きく左右に振りながら、
「テラタルトゥットゥ」
And if it’s quite all right
「アイラービューベイーベー」
I need you baby
「トゥラーラロンリーナーイ」
to warm a lonely naight
「一番好きな曲って何?」
彼女は急に歌うのをやめたことがおかしかったのか、にひひ、と無邪気にこちらを向いた。腰を30°程度曲げたまま。
「さあ」
「じゃあ、一番好きなアルバムは?」
「『日出処』」
彼女は自分のスマホで調べはじめた。あ、こんな漢字で書くんだ、と呟いて。
「うそ、私もこの金髪のやつ好きっだったのよ」
彼女はこれでもかというくらい目を細めて楽しそうに体を揺らしていた。
「パーパッ、パーパッ、パーパパッパッパ、パーパ、パーパ、パー」