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レディ・ローズ②

「ええ、禁書なのです。」


「まさか!」


「約100年前に当時の王家によって禁書に指定されてから

抄録(しょうろく)が貴族家のマナー本として採用されるようになりました。

それまでは原書がマナー本でした。

今は貴族の人口が減り、公には語られませんが庶子(しょし)が多く存在するでしょう。

当時は貴族の人口が増えすぎて国全体が財政難になりかけていたようですので

その辺りが背景としてあるのかもしれませんね。

原書は夜の夫婦生活を愉しむためのノウハウが書かれており、

抄録に採られた部分は悪い例として書かれたものです。」


「それは…王家として正さなければならないことですね。

ご指摘いただきましてありがとうございます。

しかし、これは先ほどの質問にどのように繋がるのでしょうか?」


「政略結婚により若くして夫婦になった貴族の夜の営みは

最初からマナーの通りに()されているわけですね。

基本的には他を知りませんから。

これは件の伯爵家においても例外ではなかった。

嫡男をもうけるまで継続されますがそれだけです。

これは単なる作業ですよ。

彼らは義務を果たして自由となった。

さて、伯爵様はレディ・ローズを抱くでしょうか?」


「なるほど。そこは分かりました。

レディ・ローズの伯爵家以外も右に同じということですね。

で、もう一つの質問のお答えはいいかがかしら?」


「あまり言いたくはないのですが、私は上手いらしいのです。」


「へ?」


急な生々しい告白に好奇心旺盛な姫君は真っ赤になった。

キーファーは可愛らしいと思ったが態度には出さずに続けた。


「貴族の女性は耐えることしか知りませんが、男性は耐えていたわけではありません。

しかし美しくとも反応のない女性に興味は続かないわけです。

これが娼婦や普通の平民の女性ならばどうでしょうか?

彼女たちは身分差から貴族の男性に物申すことはないでしょうが

経験や聞いた話から平民の基準と比較して(つたな)いことは分かります。

それに女性は静かに耐えるべきというマナーなど知るべくもないのです。

金持ちの貴族に気に入られるようにいい反応を演技すれば悪いようにはならないと思うのは当然です。

ゆえに、おしなべて貴族の男は愛人を持っても下手クソなままなのです。」


「貴方は原書に触れたから違うということですか?」


「それ以前に女性の実際を教えてくれた人がいるのですが今話すことではありません。

原書にある通り、行為の本来は女性に忍耐を強いるものではないのです。

抄録に学んだ貴族男性のやり方が間違っているだけです。」


「なるほど。

しかし、それが分かるのはその、し、親しくなってからですよね?」


「実際の私を知るのはそうですが、彼女たち同士は頻繁に情報交換しているでしょう?」


「え、社交界ってそういう!?」


「まあ、それだけではありませんが色恋の話はとても人気がありますね。」


「コホン、非常によく分かりました。

で、レディ・ローズとは今もその…関係を持たれていらっしゃるのですか?」


「レディの誕生日に近いある日、薔薇の花束を贈ったのですが、

そこで珍しく彼女が伯爵様にもこれくらいの気配りが出来ればと(こぼ)されたのです。

美しい貴女の顔を曇らせる理由をお聞かせくださいと水を向けると」


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