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アリシア・ウィンスレット

王女アリシア・ウィンスレットは超の付く箱入り娘である。

極細の輝くシルバーブロンドの髪はフワフワとキメの細かい純白の細面を縁どり、

藍にも見える深みのある大きな青い瞳がキラキラと輝く妖精のような容姿は

あまりにも浮世離れしていたためか父国王は彼女の身辺から若い男性を締め出した。

そして生まれ落ちて16年の歳月の大半を王宮内の王女宮で過ごしている。

しかし、想像されるような物静かな深窓のご令嬢ではなかった。

むしろ溜め込まれた好奇心はとめどなく、侍女や護衛の近衛 (女性)、

さらにはメイドたちから聞き出す噂話が大好きである。

市井で流行(はやり)の小説も好んで読むが各地の風物や歴史、貴族家間の関係なども学んでいる。

噂話や小説を楽しむためには王宮外の常識を知ることが必須なのである。

兎にも角にも姫君は王宮から外に出ることを渇望していたのだ。


成人のお披露目後に父国王から婚活…じゃなく定期茶会を命じられた時には

すまし顔で了承したのだが、心の中のアリシアは小躍りしたものだ。

なにせ、お披露目では多くの貴族から挨拶を受けはしたが

儀礼的なものだけで早々に退場させられて、

王宮外の面白い話を何も聞けなかったのだ。

同世代の貴族の男性が自分に何を語ってくれるのか期待が高まるばかりであった。


♡♡♡♡♡


お茶会も5回を数える頃、アリシアはもう無駄な期待はすまいと心に誓った。

アリシアを美しいと誉めそやした後に延々と続く自慢話。

相手は変わっても判で押したようであった。

相手が気に入れば次の茶会にも招いてよいことになっていたがアレはない。

ただの日常でいいから外の世界、生きた本物の世界に触れたいという想いを

誰も汲みとってくれなかった。

毎回、事前に相手の情報を読み込んで準備万端。

語ってくれそうな事柄に水を向けてもすぐに自慢話に繋げる令息達は強敵すぎた。


「そういえば、ご領地で水害があったそうですね。

お見舞い申し上げます。何かご不便はございませんか?」


「いやあ王女殿下のお心を煩わせて申し訳ありませんが、

気にかけていただいて、不謹慎にも喜んでいる自分がいます。

はい、すでに当家の優秀な家臣どもが指導にあたり復興は進んでいると聞きます。

ご心配には及びません。」


「貴方も領民をお見舞いしたと聞きました。

どのような状況だったのでしょうか?」


「ああ、なるほど。

見舞いはしましたが、私は被災地に直接行くほど空気の読めない男ではありません。

民草が私を歓待したがって復興の手を止めさせてしまいますからな。

靴も汚れますし、ハハハハッ!

その代わりに被災した家庭の子どもたちに

王都で流行りの菓子を振る舞うように侍従に申し付けました。

貴族というものはこういう時こそ慈悲の心を示さねばならないのです (ドヤァ)」


間違いじゃないけどなんか違う気がする…っていう微妙な話は

後ろに控える侍女や近衛 (女性)にはウケた (肩を震わせていた)が、

コレジャナーイ!と心の中のアリシアはポカポカと壁を叩いていた。


そんな地獄のようなお茶会が毎日のように繰り返されてほぼ作業と化した頃、

噂のレディ・キラー(淑女殺し)がやってくるという。

自慢話であったとしても彼の話には興味がある。

上辺の取り繕いは許さない。

是非ともレディをキラーする話を引き出そうと決意を固め、

侍女と近衛 (女性)とともに王宮の庭園の四阿にて静かに待ち構えていた。

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