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キーファー・ラムゼイ

キーファー・ラムゼイは執事に手渡された王宮よりの書状を見つめてため息を吐いた。


ラムゼイ侯爵家の嫡男であるキーファーは18歳。

大国であるウィンスレット王国の中でも最大規模の領地を持つ侯爵家は

建国に尽力した由緒ある家柄ゆえに富と権力が突出してしまっていることもあり、

政治的な派閥を作らず常に中立の立場をとっている。

つまり、ことあるごとに自治権の拡大を図ろうとする諸侯派と

王権の強化を画策する王宮派との間のバランサーとして

偏った政策発議に対して否と言うだけでよいので、

父侯爵はキーファーが16歳で成人するとすぐに議会への代理出席を命じて

領政にかこつけて母を伴って領地に引きこもってしまった。

議会招集も頻繁にあるものでもないので王都で独りノビノビ出来るのもいいのだが、

こういった厄介な案件には当主が直々に対応するものだろうという嘆息である。


書状はアリシア王女殿下のお茶会への招待状であった。

国王陛下は王妃陛下との間に一男一女をもうけていて、

王太子殿下はキーファーと同年の18歳、王女殿下は今年成人の16歳である。

陛下方は娘を溺愛していて政略の道具になどは考えもしないので未だに婚約者はおらず、

本人が好意を寄せる相手であれば多少の釣り合いの不足は大目にみるという方針である。

しかしお立場上、未婚男性との出会いが極端に少ないため、

目ぼしい上位貴族の子息と見合いをさせようということで定期的に1対1でのお茶会が開かれていた。


キーファーは家格と資産については降嫁先としてこれ以上はなく、

輝く金髪に透き通るような碧眼の怜悧でありながらどこか幼げな印象を残す美しい男である。

しかし、最上級の好物件でありながらご令嬢たちからの評価は最低なのであった。


レディ・キラー(淑女殺し)の異名を持つ社交界きってのプレイボーイ


貴族は基本的に政略結婚をするもので婚姻は家同士の契約にもとづいて行われるものである。

恋愛感情の有無は考慮されないため、

当主の後継となる嫡男をもうけた後はお互い干渉しないという不文律がある。

つまり、どういうことかといえば夫も妻も愛人を作ってよいという暗黙の了解である。

もちろん公には語られないのだが。


18歳にしてキーファーは多くのご夫人方と浮名を流していたのだ。

ご夫人の娘がご令嬢である。

つまりはそういうことで、どんなに好物件であっても

自分のプライベートな友人を娘の結婚相手としては認められないのである。


さすがのキーファーとて王妃陛下との間に何があるわけでもないが、

世評というのは無視できないはずで、

いくらフリーの最上級好物件であっても自分は対象外と決めこんでいたのだった。

おおかた王宮派の一部がラムゼイ侯爵家を引き込もうと画策したのだろうと思われる。

王女殿下まで巻き込んで畏れ多いことだと再度ため息がこぼれる。

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