溶け合う剣(つるぎ)
少し時間は遡る。これは、アサミとマルコヴナの会話だ。
「おぉ、アサミさん、来てくれたか」
「まぁそりゃ、大事な用があるって言われたからね。━━んで、話って?」
アサミは自分の内心に気づいてはいなかったが、実は面倒くさいと思っていた。<アポロン>との全面戦争の直前だと言うのに、急に改まって何を話すつもりなのだろう、とか考えていた。
だが、実は話の内容は結構というかかなり重要であり、次の瞬間にはアサミの眼は歓喜の眼に変わっていた。
「この前、パンダを倒したと思うんだが、そのパンダの爪を使ったヒート・アサシン・ナイフの改良型が、やっと出来たんだ」
「え!?それ本当なの!?」
「あぁ、これを見てくれ」
そう言ってマルコヴナは設計図のような物が書かれたタブレット端末を見せてきた。
「全体的な熱圧縮装置の改良。更に、そこに刀身を可能な限りまで伸ばした。━━ただ、これだけじゃない。ヒート・アサシン・ナイフよりも少し条件は厳しくなってしまうが、ソードモードよりも遥かに強くて強力なモード……。それが━━」
「ヒート・アサシン・ナイフΧ、『バスター・モード』ッ!!」
アサミはそのモードの名前を叫ぶ。マルコヴナから教えてもらったモードの名を。
ヒート・アサシン・ナイフの形の刀身が伸び、巨大化し、更にそこから巨大になる。最終的にはスノウラビットの上半身ほどの大きさを誇る大剣になった。
「そんな隠し玉があったのか。だからきっちり、五分間のカウントをしていたわけだ。つまりアレだろ?ナイフがその状態━━バスター・モードだったっけか?それになったら攻めてくれるんだろ?俺とクラッシュライノスの事ッ!」
「当たり前でしょ!?そんなのッ!!」
スノウラビットは猪突猛進という言葉が似合うほどにバーニアから火を吹かせる。推進力が桁違いであるため、クラッシュライノスが逃げ出すことはできない。というより、グラマスはそんな事しない。
”ガァンッ”
クラッシュライノスの巨腕とヒート・アサシン・ナイフΧがぶつかり合う。
しかし、普通、生身と大剣がぶつかりあったら、言わずもがな大剣が敵を叩き切るはずだ。しかし、クラッシュライノスの巨腕にぶつかった大剣の刃はそれ以上進まない。
それどころか、お互いが熱によって徐々に溶け出している。
「ハァ!?何で!?こんなの、熱圧縮してる武器同士じゃなきゃ見ないこうけ━━ッ!まさか、その機体、そうなのッ!?」
「やっと気づいたかァ!!そうだよ!俺のこのクラッシュライノスは、全身に熱圧縮装置が仕込まれてて、全身が熱圧縮状態なんだよッ!」
「なっ……」
その言葉を聞いて、恐怖や絶望みたいな感情よりも先に、アサミは心配が勝ってしまった。
熱圧縮とは、鉄や鋼、つまり金属を最高の手前、ギリギリの状態まで熱を貯蓄し、それをエネルギーや攻撃に変える装置である。つまり、ASCOF全身に熱圧縮を通しているということは、金属が溶けるギリギリの熱エネルギーが全身に伝わっているということだ。
実現できれば強いのだろうが、流石に諸刃の剣すぎる。
(熱中症なんてもんじゃない……。頭痛、吐き気、熱、その全てが強い形で襲いかかってきているはず。それをASCOFを操縦しながら耐えるなんて……。グラマスとかいうやつは化け物なの!?)
「だァ、クソ。暑チィ。こうやって説明すると意識しちまうから、耐えてたものが爆発しそうになる。今でも頭痛とか吐き気とかで最悪の気分なんだよ。でも、お前が今、目の前でこうやって立ってるから!俺に剣を振り下ろしてくるからァ!戦ってやってるんだ!それだけでも軽くハイになれる!気持ち悪さなんて殆ど吹っ飛んだね!」
「あぁそう、じゃあ、早めに終わらせてあげるわよッ!!」




