最強と最強の邂逅
「なんだとォ!?前衛艦が誤射!?」
コトブキはその通信を聞いて思わず大きな声を出してしまった。
「てことは、作戦は……プランBまで既にほぼ動作不能……Cもやるには状況が絶望的……って、プランはEまでしか無いんだぞッ!?先ずはD、そうだな、Dだ。Dで一旦お茶を濁そう。それしかない」
コトブキの背中を冷たい汗が滴り落ちる。ここまで事がうまく運ばないと、この先が不安になってきた。
「コトブキ艦長。プランDとは?もう一度お聞きしてもよろしいですか?」
そんなコトブキにルネが質問をする。一度作戦を聞かせてはいるが、再度確認という意味なのだろう。
「ははッ、痛いところをついてくるな、ルネ君は……。いいだろう、何度でも教えてやる。プランDは━━」
「ゴリ押しィ!?」
コックピットの中でアサミの声が響き渡った。それもそうだろう。いつの間にか、プランA、B、Cをすっ飛ばして、いつの間にかDまで到達しているのだから。
「なんでそんなことに?」
「いいだろう、説明している暇はないんだ。君は敵の戦艦だったりASCOFだったりを適当に倒してくれさえすればそれでいいんだ」
「な、か、簡単に言ってくれますね……」
アサミは苦笑いをする。
「艦長はそんぐらいの気持ちじゃなきゃいくら脳みそがあっても足りんのだよ。まぁ、そうだな、一つだけ言えることがあるとするのならば……」
それは、応援でもなく、作戦内容でもなかった。ただ、コトブキなりに一言。
「勝つまで、死ぬんじゃないぞ」
アサミは前を見据え、今、広大な宇宙の大空へと飛び立っていく。
「な、なぁ、あれ、ASCOFじゃないか?」
<アポロン>の兵士がそれに気づいた。すると、後ろの上の階級の言わば上司のような存在の人間が、無線で叫びながらこう言ってきた。
「色だ!色を確認しろッ!その機体のカラーがもし純白ならば、今すぐ報告して逃げるんだッ!」
「中尉、確認しなくても分かりますよ……あれは……。間違いない。純白のASCOFだ!」
兵士はカメラのズーム機能すら使わずに報告した。この闇に包まれた宇宙にとって、白とは、一番目立つカラーリングと言っても過言ではないからだ。
中尉は無線のマイクに更に叫んだ。
「今すぐそこを離れるんだァ!」
「無理です!もう逃げても間に合わない!接敵します!!」
”キィンッ”
キラーアントがヒート・スピアーの熱圧縮装置のロックを解除する。
━━いや、解除したはずなのだ。なのに、一向に、モニターのスピアー温度のゲージが一ミリも動かない。
「なんだ!?こんな時に故障かッ!?」
「故障なんかじゃない」
突如、無線から聞き慣れない女の声が飛び込んできた。
「まさか、純白のASCOFに乗ってるパイロットか?舐めやがってェ……」
しかし、その声の主からすれば、そんな状況、もうどうだっていい。
結果は既に出ている。
ナイトモスキートのモニターが割れ、数秒もしないうちに吹き飛び、そのままパイロットごと巻き込んで爆発した。
既にスノウラビットがナイトモスキートを斬り倒していたのだ。
その光景を見ていた中尉は思わず口にする。
「はッ、速すぎるだろ……」
これが、噂にも聞いた、『イナバシロウサギ』の力なのか。
もしかしたら、『紅蓮の虎』を遥かに上回る力を有しているかも知れない。恐ろしくて、そんな生きる化け物みたいなやつに、普通の人間であれば、勝ち目はないと思ってしまうのが必然だ。
「でも、勝てるやつがいるんだよなぁ、ここに」
通信から突如として別の男の声が割り込んでくる。
<アポロン>側のパイロットからすれば聞き慣れていて、まるで母親の声のような安心感のある声だ。なぜって?
この声の主が、負けるわけないからである。
「よぉ、『イナバシロウサギ』。会いたかったよ。話を聞いていた時からな」
アサミのスノウラビットの目の前に、灰色の筋肉質なフォルムのASCOFがすごい速さで突進し、止まる。
「俺の名はグラマス・パナ・ゴーマス大佐。ASCOFの名前はクラッシュライノス。お前の名前も聞かせてくれよ。『イナバシロウサギ』」
「━━私の名前はアサミ・イナバ。ASCOFの名前はスノウラビット。随分余裕そうにしてるってことは……指揮官機ね」




