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火蓋を切って落とすのは神である。

 例の集会の直後、アサミとテイムは同じ宇宙用戦艦に乗り込んだ。

 どうやら、同じ艦に配属されるらしい。

 アサミとテイムがその艦の艦長室に入ると、中には一人の中年男性と、顔の整った若い女性の二人がいた。<イカロス>軍の軍服を着ているため、軍の関係者であることには違いないだろう。

 すると、中年男性の方から口を開いた。


「やぁ、ふたりとも。そっちの可愛いお嬢さんがアサミくんで、イケメン君がテイムくんか。いやぁ、最近のパイロットは顔も整ってなくっちゃいけないのか。じゃあ俺はASCOF(アスコフ)にゃ乗れんな。ハハハハッ」


 中々に陽気なことを言う、なんて、アサミは思う。


「あぁ、すまんすまん。自己紹介がまだだったな。私が君たちの配属する艦、『リーティフ』の艦長を務めている、ユーラヴェン・コトブキだ。コトブキ艦長、と呼んでくれて構わない。むしろそうしてくれ。んで、横に立っているべっぴんさんが、ルネ・アカムハインだ。まぁ、私の秘書的な人だと思ってくれ」


「か、艦長さんでしたか。失礼しましたッ!私は、アサミ・イナバ中尉であります!」


「私は、テイム・プロスル少佐であります。それで、我々を呼び出した理由などありますでしょうか?」


 テイムのその言葉に、艦長は首を傾げた。


「ん?呼び出したっけか?」


「艦長、アサミ・イナバ中尉とテイム・プロスル少佐、同時に14時27分にリーティフに来るよう、連絡をしています」


 すかさず、ルネが補足をする。


「あぁ、すまんすまん。ちょいと忘れっぽくてな。すまなかった。同時に要件も思い出したんだ。あんた達二人には同じ艦にこそ乗ってもらうものの、行動は全くと言っていいほど違う。まぁ、あんたらも得意とする分野が違うだろう。二人共前線に出すつもりだが、タイミングや状況によってコロコロと役目が変わると思ってくれ。んじゃあ、今からその作戦概要を発表する。他の艦の奴らも呼んで、作戦会議と行こうじゃないか」




 他の艦の人たちも呼んで、割と大きめの作戦会議を開いた。エースパイロットのアサミとテイムの二人が乗っているということで、リーティフが中心となる作戦になった。その際、コトブキの説明は驚くほど聞きやすく、先程とは別人のようだった。




 ━━そうして、一週間後。

 アニメでしか見たことがないような史上最大級の宇宙での艦隊戦が今、開かれようとしていた。

 既にリーティフは<イカロス>の外におり、今現在、そんな最大級の戦争の直前の準備期間、といったところだろうか。


「状況確認をしろ!」


 コトブキがルネに命令をした。


「現在、<アポロン>側のタスク達成度、94%。<イカロス>とほぼ同程度です。ですので、先に攻撃したほうが、これから先、歴史で汚名をかぶることでしょう」


「まぁ、戦争なんてそんなもんさ。歴史だなんだよりも、先ずは宇宙平和条約の規則に則って戦わなきゃならん。ピーター氏は放棄するなんて言ったがね、実際のところ、国のルールじゃなくてこの世界そのもののルールには誰にも逆らえんってことさ。宇宙全体の憲法みたいなもんが宇宙平和条約だからな」




 一方、準備が既に終わっている<イカロス>の艦の一つでは、緊張感がオーバーヒートしそうな状態であった。


「か、艦長……い、いつ、戦争は始まるんでしょうか?」


 戦艦の主砲の操作レバーはビクついた手で握っている男が言う。


「おい、まだそんな事言ってるのか。俺が数えるに、お前は既にそのセリフを30回は言ってるぞ!後だなぁ、主砲のレバーから手を離せとさっきから言っているだろうが。指示があるまでは絶対に主砲を撃っちゃいけないんだからな!」


「はっ、はいぃぃぃ!」


 やけにビクついている。

 確かに、今、この会話が繰り広げられている艦は、ほぼ最前線だ。しかし、自国に対する愛はそんなものなのか、と、艦長は思わず言いたくなる。


 その時、艦長ですら思いの寄らない出来事が起こった。

 <アポロン>の艦がモニターに映ったのだ。実際、準備をしている過程で敵に見られてしまうような位置に移動してしまったのだろう。


「う、うわァァァァァァァァァァ!!!」


 なんも驚くことはない、平静を保つんだ。

 艦長がそう言おうとしたところだった。

 その艦の主砲が火を吹いた。


「なッ、何をやっているんだァ!撃つなと言っているだろうがァ!!」


 主砲から放たれた弾は精度良く、敵艦に命中した。


「ちッ、違うんです!き、気がついたら、手の震えで、トリガーをお、押し押し押ししししッ……」


「なんだとォ!?」


 こうして、始まった史上最大規模の宇宙艦隊戦。

 その始まりは、意外にも<イカロス>艦のミスから始まってしまったのだった。

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