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終結と開戦

 時は少し戻る。

 <イカロス>ではあいも変わらず、何を言いたいのかよく分からない<アポロン>大統領、ウェルナー・ウェルスタンの演説が延々と続いている。


「おい、これいつまでやるんだ?」


「そうだよ、もうそろそろ仕事に行かなくっちゃならないのに、なんでこんなので電車止まってんだよ!」


「ねぇ、これだけだったら別にもう行ってもいいんじゃない?」


「そうだね、もう学校間に合わなくなっちゃう」


 路上の大画面モニターから次々と人が離れていく。既にこの演説は10分続いており、その10分間で何も変わったことが起きないためである。

 半分以上の人集りが消えたが、ウェルスタンから画面の外は見えているはずもなく、機械的に演説が続く。だが、ここで急に画面の中に変化が起きた。画面横から秘書か何かだと思われる男が入るやいなや、ウェルスタンに耳打ちだけしてそこから去っていく。


『おまたせいたしました、皆さん。先ずは、こちらをご覧下さい』


 ウェルスタンがそう言うと、画面の端にまた別のカメラの画面が現れた。そのカメラにはムーブ・パレスが上下に二つ、写っている。


『こちらの二つのムーブ・パレス。上が<アポロン>で下が<エキドナ>です』


 ウェルスタンが説明口調でそう言うと、場面に衝撃の映像が流れる。<アポロン>の()()()()()()()によって、<エキドナ>が爆発しながらどんどんレーザーに飲まれていく光景が、繰り広げられているのである。


『これは加工でもなんでも無い。我らは、宇宙人類生誕の地、<エキドナ>を自らの手で破壊しました。そしてこれは、我々の宇宙平和条約の破棄、そして<イカロス>への宣戦布告とさせていただこう!』


 恐ろしいことが今、起きている。

 国が、国を滅ぼしてしまった。


「ふっ、ふざけてんのか、この国はァ!?」


 勿論、<イカロス>の国民も理性を保てず、モニターに怒りを露わにする人がほとんどである。


「せ、戦争だ!戦争だ!」


 戦争が現実みを帯びてきた瞬間、彼らは恐怖に駆られる。それもそうだろう、自分たちが戦争でASCOF(アスコフ)に乗って戦うわけではなく、他人事と思っていたところに、<アポロン>のような国ごと滅ぼす兵器を使われては、無意味なのだから。




「不味いな、これは」


 <イカロス>大統領のニアールが、この光景を見て軽く絶句する。まさかこんなことになるとは思っていなかったために、国民の混乱をどう解消すればいいのか、全くと言っていいほどわからない。

 ニアールはこういう時、()()()()()()()()()()()()()と考える。

 ピーターなら、こういう場合、うまいこと言いくるめて国民から少しでも不安を取り除けるのだろう。しかし、大統領という立場に立っておきながら、そういった能力は二アールの方が下である。こんなことだから、ピーターが政府を裏で動かしているなんて考える輩もいるのだろう。

 だからニアールは、一つだけ残された道を手繰り、なんとかそこに辿り着く。

 これしかないのだ。そうやってきたのだ。これまでも、そしてこれからも。


「戦争、するしかないんだろうな。<アポロン>と。自分たちの撒いた種だが、こうもなると、とうとう、という感じだな……」


 ついに始まろうとしているのだ。


 <イカロス>と<アポロン>の全面戦争が。

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