<エキドナ>強襲作戦 其の十九
<エキドナ>、ASCOF正式パイロット三名。
ガァル・アル・ロイヤル大佐。
ヘイル・アロー中佐。
ヘイブン・アロー少佐。
この三人の戦いは、終わりを迎えようとしている。
「バンディック少佐!」
バンディックのコックピットに、若い男の声が聞こえてくる。
そして、バンディックの真横に、一機のナイトモスキートが並ぶ。
「モスマン・ファール中尉、たった今、敵の沈静化に成功いたしました!一機は撃破、一機は中のパイロットの意識が混濁、現在様子見の状況です!」
「よし、よくやった、モスマン中尉。こっちも、敵の総大将をやった。まだ倒していないが、時間の問題だろう」
モスマンはそう言われると、バンディックと対にいる位置のASCOFを眺める。
ヒート・ランス・カスタムがASCOFの腹を貫いており、確かに時間の問題という言葉にも納得がいく。
「よし、では、捕虜の用意を━━」
バンディックはモスマンに指示を出しかけて、思わず口を閉じた。
バンディックとモスマンの両方の機体を、上空からの巨大な影が徐々に包んでいく。
<アポロン>がとうとう戦場まで移動してきたのだ。
「<アポロン>……。一体、何をするつもりなんだ……」
<アポロン>はバンディックたちを超え、ガァルを超え、ヘイルとヘイブンたちの真上を超えていく。
そのまま斜めに上昇していき、最終的に<エキドナ>の上空で静止する。
その瞬間に、バンディックやモスマンだけでなく、他のナイトモスキートパイロット全員に<アポロン>の操縦室の声であろうものが流れ込んでくる。
『姿勢制御、異常なし。発射角、異常なし。熱圧縮、異常なし。エネルギー充填率、98%。【ガルガンチュア】発射まで、10秒前』
ガァルとヘイブンはおろか、バンディックとモスマンも状況を理解しかねない状況だ。
『10』
カウントダウンが始まる。
『9』
止まることはない。すべてが正常に動作している。
『8』
問題はないのだ。
『7』
ガァルもヘイブンも、眺めることしかできない。
『6』
まだ半分も経っていないことに驚く。
『5』
これは、歴史の一部だ。
『4』
歴史が、動くかも知れない、あくまでも一部。
『3』
この場にいる全員が、時間を長く感じる。
『2』
この瞬間、発射が確定した。
『1』
死のカウントダウンが、もうじき終わる。
『0。【ガルガンチュア】、発射』
瞬間、<アポロン>の下部から、凄まじい光とともに赤い筒のようなレーザーが発射された。
バンディックは思わず、目を瞑ってしまった。
━━━<エキドナ>内。
中はビルが少し立っているだけで、<イカロス>や<アポロン>と比べたら大分質素な風景である。
これが<エキドナ>の良いところであり、アピールポイントでもある。
しかし、そんな風景は一瞬にして崩れ去る。
”ドォォォォォォォン”
赤い光がその場を照らし、大きな爆発音と同時に、一つのビルのガラスが全て割れ、所々で爆発を起こしながらドロドロと溶けている。
「な、なんだ、何が起きてる!」
「まさか、レーザーとかか!?」
普通に生活していただけの<エキドナ>の国民達は、その光景に疑問と恐怖を同時に抱く。
その場にいた男の一人が、赤い光の中に女性がひとり取り残されているのを目視した。
男は、ただ、その光景を見ていることしかできない。
「キャァァァァァァァァァァァ!!たッ、助けッ━━━!」
女は、頭からドロドロと溶けていく。
悲鳴は徐々に消え、最後は恐怖の中に消えた。
「に、━━━逃げろぉぉぉぉぉぉ!!」
周りにいた者は、赤い光の恐ろしさをその瞬間に、思い知る。あれに触れただけで、死に直結するものだと。
悲鳴、絶叫、その全てが<エキドナ>の中心街を包み込んでいく。




