<エキドナ>強襲作戦 其の十八
「お、おい、どうなってやがる……」
ガァルの目に写った信じられない光景。それは、ナイトモスキートによって投擲されたヒート・ランス・カスタムの後ろを、ミサイルが追従する光景だった。
「な、なんだ、何がどうなってんだ!テメェ、何をしたッ!」
ガァルは動揺を抑えきれない。
目の前の信じ難い光景を、素直に受け入れることができなかった。
「わかってねぇようだから教えてやるよ。俺が氷の壁を作った時、後ろから飛んでくるミサイルにどこか違和感を覚えたんだよ。ミサイルが横に少し逸れたっていう違和感がな。だから、ヒート・ランス・カスタムを一つにくっつけて、振り回してみたんだよ。そしたらよォ?ミサイルが小刻みにグルグル、まるで目ぇ回したみたいに回ってたんだよ!後は言いたいこと分かるな?」
ガァルは理解する。
理解したくなくとも、自分の体が直感で理解してしまったのだ。
「ま、まさか……」
「そうだよ。俺も信じられねぇが、お前は俺じゃなく、ヒート・ランス・カスタムをロックオンしてミサイルぶっ放してたんだよ!!」
「だ、だからなんだァ!!そんな槍、ミサイルが粉々にして終わりだッ!」
ガァルの言うことは間違いない。
ガァルとバンディックの丁度真ん中で、ミサイルとヒート・ランス・カスタムがぶつかり、大きな爆発を引き起こした。
”ドォォォォォォッ”
しかし、その爆発の煙の中から、ヒート・ランス・カスタムは飛び出してくる。
「な、なんだってェ!?」
ガァルは目が飛び出すんじゃないかというほど目を見開く。
それほどの驚き、ということである。
「ミサイルが爆破したのは片方のヒート・ランス。お前から見てロックオンされたヒート・ランスが後ろになるように投げたんだよ!そしてその爆発は、お前に飛んでいくヒート・ランスの、推進力となるッ!!」
爆発の煙の中から飛び出してきたヒート・ランス・カスタムは、確かに先程よりも速度が大幅に上がっている気がする━━と、考えている隙に、ヒート・ランス・カスタムとガァルは、もう目と鼻の先である。
「ハハッ、避けようがない」
ガァルがニコニコしている間に、ヴァリアブルピッグMK3は貫かれた。
「カハッ!」
偶然にもコックピットの中までも貫いたものの、ガァルの中心を貫いたのではなく、丁度横辺りに逸れ、左目と左腕を持っていかれる。ガァルはヘルメットの中に血反吐を吐いた。
「クッ……。中途半端に、生きちまったじゃねぇか……」
ガァルには粋がる気力もなく、ただ、壊れかけのモニターに映るバンディックのナイトモスキートを真っ直ぐ見つめる。
「なァ、もう一度聞く。いいか?お前の、名前をッ、教えてもらっても、いいか?」
「……バンディック・ギルミール」
「やっと……、名前、言ってくれたなァ……。バンディックか。ハハッ、強そうな、名前、だ……」
ガァルは死を受け入れているのか。それともまだ勝つ気でいるのか。
どちらにせよ、ガァルの顔には、まるで貼り付けたかのように笑顔がこびりついていた。




