<エキドナ>強襲作戦 其の十七
ゆっくりと回りだしたフレームのようなもの━━実際にはフレームではないものが、バンディックの焦りと恐怖を駆り立てる。
バンディックの考えが間違いでなければ、今、ヴァリアブルピッグMK3の胸で回っているものは━━
「マシンガンだ」
瞬間、ヴァリアブルピッグMK3の胸から勢いよく、鋭い弾が次々と間隔を開けずに発射される。
やはり、マシンガンだ。
しかし、マシンガンだけではなかったのが、バンディックの読みの甘さだった。
ヴァリアブルピッグMK3の、肩からはミサイルが発射、頭からバルカン砲を細かく撃ち出し、腕、腰、脚、全ての場所からマシンガンが放出され、ロケットランチャーらしき高速の弾、手に持つスナイパーライフルを乱射させ、更には背中のバックパックからミサイルが飛び続けている。
”ピピピッ”
「パールスペック:ドラゴン。頭部90mmヘッドバルカン✕2。胸部180mmサブマシンガン✕8。胸部300mm接爆式ロケットランチャー。肩部270mmマルチミサイル✕2。腕部160mmドラム式マシンガン✕2。腰部180mmサブマシンガン✕4。太もも部100mm小型マシンガン✕2。つま先部100mm小型マシンガン✕2。バックパック240mmマルチロックミサイルランチャー」
ガァルがまるで呪文のように読み上げるそれは、きっと今発射している、ヴァリアブルピッグMK3の身体中の全武装だろう。
弾がまるで滝のように雪崩込んでくる。
まず、弾速から考えて、パールスペック:ドラゴン(スナイパーライフル)の弾が真っ先に速いだろう。そこから、マシンガン、ミサイル、の順で弾速はほぼ決まっているだろう。
スナイパーライフルの弾一つなら、横に少し逸れるだけで避けることができる。何せ、ヴァリアブルピッグMK3とナイトモスキートには距離がある。
だがしかし、その後のマシンガンの弾やミサイルにはそれでは対応できない。対応できる気がしないというのが本音だが。
「……なら、試したこと無いけどよォ……。イチかバチかで、やってやらァ!」
バンディックが言うやいなや、両腕で持つヒート・ランス・カスタムをなにもない虚空の宇宙を薙ぎ払う。
すると、尖った氷の壁がどこからともなく出現する。
そして、その氷の壁がスナイパーライフルの銃弾、更にはマシンガンの弾も次々と受け止めていく。
「おいおい、ファンタジーじゃねぇんだぞ、なァ!?」
ガァルはその光景を見て素直に思ったことを口にした。
「バァカ、なにがファンタジーだ。これは目の前の空間を一気に凍らせただけだ!」
結構強引な行動にも思えるが、実際、目の前で起きてしまっているのだから、信じるしか無い。
氷の壁はマシンガンの弾を全て受け止めた瞬間、粉々に砕け散る。
「十分だ!!」
この後、迫ってくるミサイル、これをどう処理するかにこの戦いの勝敗がかかっているだろう。
バンディックは脳に一度よぎった答え以外、何も考えられなくなるタイプである。
そして今、一つだけ、一か八か、究極の賭けに出るしか無いような考えが頭をよぎる。
失敗すればそのままミサイルが全部当たって負け。成功すれば勝ち。
「なぁに、簡単な話だ」
バンディックは覚悟を決め、両手に持つ、分割されたヒート・ランス・カスタムをまた一つに、両端を合わせた。
ヒート・ランス・カスタムをブンブンと器用に回し、決めポーズまで取って見せる。
「……何をしている?貴様?そんな事したって勝てないぜ?」
「それはどうかなッ!」
そう言い、バンディックはナイトモスキートの手を鋭く動かし、ヴァリアブルピッグMK3に向かって合体させたばかりのヒート・ランス・カスタムをぶん投げる。
その光景に、ガァルは最早笑いが出てしまった。
「プッ、フハハハハハハハハハハッ!教えてやるよ。投擲よりもミサイルの方が格段に速度は速いんだぞ?」
ASCOFの投擲なので、遅いわけではない。時速160kmは出ているだろう。しかし、ミサイルと比べられてしまっては、流石に投擲されたヒート・ランス・カスタムの方が速い訳はないのだ。
「あぁ、知ってるよ。投擲だけの速度じゃミサイルには敵わないってなァ」
そうこう言っている間に、ミサイルとヒート・ランス・カスタムはナイトモスキートに近い地点ですれ違う。
そして、その瞬間、ガァルの目には、信じられないような光景が広がっていた。




