<エキドナ>強襲作戦 其の十六
バンディックからすれば、もう終わりたい戦いではあった。
何せ、こちらからの攻撃を、敵はさせてくれないのである。
攻撃しようと思っても、何度も敵の攻撃が来て、その受けに立ち回らなくてはならない。そうなると、こちらからの攻撃ができず、正直、何度も命を失いかけた場面があった。
「━━ッ、そろそろキツイな……」
このままでは、こちらが負けてしまう。
そう、考えていた。
今、この瞬間までは。
ヴァリアブルピッグMK3がバンディックのナイトモスキートと真反対の方向に駆け出していったのだ。
これは、ズバリ逃走というやつなのだろうか。
だとしたら━━
「な、何逃げてんだ、テメェ!!」
怒りが抑えきれない。
怒りのままに、バンディックはナイトモスキートを、ヴァリアブルピッグMK3の向かう方向へと進める。
追うものと追われるものの立ち位置へと戦況が変化した今、完全にガァルの思い通りになっている。
ならば、実行するまで。
「装甲離脱!!!」
ガァルはそう叫ぶと、頑丈に守られた機体についている肩の装甲を、勢いよく飛ばした。
反動か、その装甲はまるで隕石のようにナイトモスキートの方向へと向かっていく。
しかし、バンディックも、甘い存在ではない。
バンディックは、持っているヒート・ランスで薙ぎ払い、飛んできた装甲を吹き飛ばした。当たったらどうしようもないような頑丈な装甲だが、あくまでも、当たらなければ、だ。
「おい、ジジィ!!まさかテメェ、これが攻撃だとでも言うんじゃねぇだろうなァ!!」
「そのまさかだ!!」
ガァルは本気で応える。
その返答の合間にも、もう片方の肩の装甲と、太ももの装甲を外す。
「しつこいんだよッ!」
バンディックのナイトモスキートは二つ同時に飛ばされた装甲を、なんの躊躇もなくヒート・ランスで薙ぎ払うことで呆気なく危機を回避する。
しかし、それでもなお、本体から外れていく装甲は後を絶たず、気づいたときには離脱された装甲たちの流星群が眼前に広がっていた。
「関係ねェ!!」
まだ装甲が飛んできていない瞬間に、ナイトモスキートはヒート・ランスを振るう。
すると、急激に目の前の空間が凍りついていき、急造の氷の壁ができた。
「そんなこともできんのかよ」
急造でできた氷の壁が、飛んでくる装甲たちを受け止め、丁度最後の装甲が飛んできたときに真っ二つに割れた。
その中を、バンディックは突き進んでいく。
今、もしここで止まってしまえば、絶対に逃してしまう。
これが作戦だとしても、作戦に乗らなきゃ倒すことさえできない。
「だったらやってやろうじゃねぇかよ、このやろォ!!」
飛んでくる装甲の流星群をすべて受け止め、薙ぎ払う。
通り道には装甲の山ができるほどであったが、それもいつかは終りが来る。
ヴァリアブルピッグMK3の装甲が、なくなる瞬間である。
「もう装甲がねぇなァ!?」
「あぁ、たしかに装甲はないかもな。だが、弾はあるんだよ!!」
そう言い、ガァルはヴァリアブルピッグMK3のバックパックのバーニアの炎を止め、体を180度回転させた。
バンディックも、なにかしてくると踏んで、バーニアの炎を少し弱めた。
正面を向いたヴァリアブルピッグMK3は、全ての装甲が外れており、中身のフレームやらがすべて見えている。
互いにASCOFの目が合い、ナイトモスキートの方から徐々に近づいていく。
「よォ。なんでそんなに強いんだ、お前?それ、量産機だよな?」
「知るか。敵と話すつもりはない。黙れ」
バンディックの一言によって、会話は途切れる。
「じゃ、お前が話す気ないなら、俺も最後の攻撃をするしか無いよなぁ」
そう言い、胸にあるフレームのようなモノがゆっくりと回りだす。
その光景を見て、バンディックはやっとガァルの狙い、そしてASCOFの、隠された能力に気づくのだった。




