<エキドナ>強襲作戦 其の十五
「兄貴ィ!!」
ヘイブンは、ヴァリアブルピッグブランの腕を突き刺し、ボロボロになったヴァリアブルピッグノアールの胸をこじ開け、コックピットを露わにした。
中も機械やらなんやらでぐちゃぐちゃになっており、ヘイルすら見つからない。
「兄貴、言ったよな?俺らは、一緒にヘイブンに行くんだって……!何、先にヘイルに行こうとしてんだ、バカ兄貴ッ!!」
しかし、ヘイルの体の一部すら見つからない。
当然だ。
「……ッ!そうか、コイツか……!」
ヘイブンがそう言うと、何も関係のないヴァリアブルピッグノアールの肩の装甲を思い切り引き千切った。
「ここに隠れて、休憩してるんだな!?待ってろ、俺が安全なところに行かせてやるッ!!」
このすべてを聞いていたナイトモスキート隊の全員が、頭に?のマークを浮かべたのは、最早言うまでもない。
「おい、何言ってんだ、こいつ……」
「頭イッちゃんてんじゃねぇか?」
ナイトモスキート隊の二人の会話に加わるように、モスマンが口を挟む。
「いや、実際イッてるぞ。だってそうでもなきゃ、こんな発言、オープンの通信に乗せるか?明らかにおかしいだろ。こいつは今、相当気が混濁してるんだろうな」
モスマンがそう言うと、ナイトモスキート隊の面々は、ヴァリアブルピッグブランが大事そうに、なんでも無い装甲を抱える様を、ただ、見ていた。
ヘイブンの奇怪な発言の少し前。
バンディックとガァルの熱と氷の戦いは、接戦を超えて、極限状態になっていた。
「やるじゃあないか!!」
「あんたに認められる筋合いは、無いッ!!」
バンディックはガァルの放つ斬撃をヒート・ランスで弾きながら言う。
しかし、こんな会話をしているが、ガァルの方は、内心、焦っていた。
何より、敵の攻撃を喰らってしまえば、機体が凍結させられ、動きが鈍くなることはほぼ間違いが無いと言っても過言ではない。
だからこそ、一撃一撃が死と隣合わせなのである。
正直、これ以上は集中力が持たないであろう。
(このままじゃ持久戦で敵の勝ち……。とすると、こちらからなにか仕掛けないと、そろそろやばいわな)
実は、ガァルには、秘策を超えた、最終手段があった。
しかし、あくまでも最終手段であり、もしこの手段が失敗してしまえば、負けは間違いなく、確定。
正直、ガァルはまだその決断に至っていなかった。
そんな時だった。
「兄貴ィィィィィィィィ!!!!」
ガァルに、ヘイブンの叫びが耳を貫いた。
ヘイブンのこの叫び声。
その方向を見なくても分かる。
ヘイルが逝ったんだろう。
「こぉれは、決断を迷ってる暇なんて無いな」
仲間が、命を賭して戦っている。
仲間が、様々な決断を乗り越えている。
仲間が、涙を流している。
「そんな状況で、トップが迷ってる暇なんて無いよなァ……」
決断はもう、した。
「後は、やるだけだ」
ガァルは、真っ直ぐにモニターを見つめた。




