<エキドナ>強襲作戦 其の十三
モスマンがヘイブンとの戦いに身を投じている頃。
ヘイルは二機のナイトモスキートが迫ってくる光景に、どう対処するかを悩んでいた。
「目の前の一機を殺っても、その後ろに続いてるASCOFに攻撃されて終わり。かといって、後ろの一機を殺ろうとすれば今度は目の前の一機に追い回されて終わり。なるほど、敵はよく考えるじゃないか」
ヘイルがこう関心している間にも、二機のASCOFはこっちに迫り続けている。
もう少しで攻撃圏内だ。
「でも、一つ、考えていなかったことがあるんじゃないか?それは━━」
ヘイルは腰からヒート・ソードを鞘走らせ、すぐさま熱圧縮装置の電源をONにした。
”キィンッ”
そして二機が近づいてきた瞬間、剣を薙ぎ払うではなく、前に突き出したのだ。
「二機まとめて倒されることだ!!」
しかし、ヘイルのその目論見は甘く、なんと、目の前の一機がヘイルの更に真上へと、全速力で上昇していったのだ。
「なッ、上昇だとッ!?」
ただの一般兵だと思っていたが、この急激な速度での上昇の負荷に耐えることができるとは、相当、肝が座っているに違いない。
しかし、ヘイルには、何故一機だけ上昇していったのかが分からなかった。
それに、ヒート・ソードは前に突き出したままであり、このまま行けば確実に一機は仕留めることができる。
━━━━と、思っていた。
「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!」
目の前の機体は唐突に背中を下にし、機体を更にブーストさせる。
バックパックが火を吹き、ヘイルのヴァリアブルピッグノアールからギリギリの所で離れていく。
「……?なんだ、一体。なんのための突進だったんだ?」
ヘイルからも、ナイトモスキートからも攻撃圏外へと出ていった目の前のASCOFは、そのギリギリのラインでヒート・スピアーを構えながら待機した。
”ブゥンッ”
「あ?なんだ、レーダーに反応が……━━ッ!?」
ヘイルの目の前のナイトモスキートに反応し、レーダーでは目の前に反応を意味する赤点が表示されていた。
しかし、突如、レーダーがおかしくなってしまったように、
”ブゥンッ”
右に、
”ブゥンッ”
左に、
”ブゥンッ”
はたまた後ろに、
”ブゥンッ”
そして最後には自機にも敵反応を意味する赤点が表示される。
「なッ、何が、どうなっているというのだ━━?」
ヘイルが周りを素早く見回すと、周りにはいつの間にかナイトモスキートが四方八方にヒート・スピアーを構えながらそこに存在していた。
更に、逃げ場をなくすように、真上と真下にも、ナイトモスキートが睨みを効かせながらそこに存在している。
この時気づいた。二機のナイトモスキートがこちらに近づいてくるその前。左と右に分かれていったナイトモスキート達は、こうして後ろや左右を囲むために派生していったのだと。突進してきた二機のナイトモスキートの処理をしている間に、他の機体は下や残っていた左右に移動していたのだろう。ここまで完璧だと笑えてくる。
そして四方八方を囲むナイトモスキート達は、皆一斉に、徐々にヘイルへと近づいてくる。
「なるほど、それで囲んだつもりか。確かに考えたなァ。だが、目の前の一機を倒せばどうにでもなるッ!」
この二秒後に思い知る。
ヘイルのこの考えは甘いのだと。
目の前のナイトモスキートに急激な速度で近づくヴァリアブルピッグノアールだが、その後ろを囲んでいたナイトモスキートがそれと同じ速度で近づいてくる。
それに気づいたヘイルはコントロールマウスを引っ張り、機体を急停止させた。
「仲間が死んででも俺を殺すつもりなのか。なるほど」
ここまで来ると逆に呆れてくる。が、この執拗さが面白い。
また四方八方のナイトモスキート達は、徐々にヘイルへと近づいていく。
「ならこれはどうだァ!!」
そう言い、ヘイルは上にいるナイトモスキートに向かってヒート・ソードを思い切り投げた。




