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<エキドナ>強襲作戦 其の十一

 二人も仲間が死んだのに、モスマンはまだ冷静でいられた。

 爆風の中から顔をのぞかせる影は、ヘイル・アローが操る黒いヴァリアブルピッグ、ヴァリアブルピッグノアールだった。


「待たせたな、ヘイブン。二機しか()れなかった。すまない」


「十分だぜ、兄貴」


 ヘイブンはそう言っていたが、先程まで掴んでいたナタリーのナイトモスキートが忽然と消えていたことに気がつくのは、この数秒後である。


「なっ!いねぇ、あの女はどこだ!?」


 そう言い放つヘイブンに対して一言。


「ここだよ」


 通信から、冷静で、かつバカにしたような印象の男の声が聞こえてきた。


「まさかッ!さっきのモスマンとか言う野郎か!」


 声の主はモスマンであり、ヘイブンの目の前にいつの間にか存在しており、そのナイトモスキートの腕にはナタリーのナイトモスキートががっしりと掴まれていた。


「い、いつの間にッ……」


「お前が勝ち誇ったかのようなにやけヅラしてる間に奪ったんだよ、バァカ」


 なぜあれほど冷静だったのか、最初ヘイブンには理解できなかったが、納得した。

 この男はできる(・・・)、と。

 するとモスマンは、ヘイルとヘイブンの二人をほぼ無視しながら、ナタリーの乗るナイトモスキートの肩をガシりと掴み、向き合った。


「━━ナタリー准尉!いいか、よく聞け。俺やお前が参加しているこの戦いは、様々なモノが積み重なっている。国の未来は勿論、これまでに死んでいった仲間の想いもだ!そしてお前は今、自分の身勝手な行動で仲間を二人も殺した。将来有望、この戦いに勝てば出世確定の仲間が二人もだぞ!」


 この言葉で、ナタリーは肩を震わせた。涙が止まらなかった。

 事実を受け止めきれず、先に涙が溢れ出たのである。

 しかし、モスマンの話は、事実を受け止めさせることが目的ではない。


「二人も死んだ。だが、それは俺とお前のせいで死んだんだ。だから━━だから、俺ら二人は他の奴らよりも更に二人分、命と想いを背負わなくっちゃならなくなったんだッ!後は言いたいことは分かるな!?」


 ナタリーは涙を拭き、見えないにもかかわらず頷いた。

 その動作で、言葉に出さなくともその意思はモスマンには、はっきりと伝わってきた。


「よし、なら、今から迷わず突進する。そうしたら━━」


 モスマンがナタリーに対して指示を出そうとしたときだった。


”キィィィィィン”


 遠くから小さく、金属のぶつかる音が聞こえてきた。その方向は━━


「━━!!バンディック少佐!?」


「ガァル大佐!!」


 通信にモスマンの声とヘイブンの声が木霊する。

 その金属のぶつかる音の方向を見てみると、桃色の閃光と灰色の閃光がぶつかっては距離を取り、そしてまたぶつかり、距離を取る。そしてぶつかる瞬間には遠くからでも分かるスパークが飛び散っている。

 こんな異次元な戦い、いくら宇宙とは言え予想外すぎる。

 まるで漫画のワンシーンを見ているかのような感覚だった。

 ヘイブンがその光景に感動してる隙きに、モスマンはナタリーのナイトモスキートの背中を少し強めに押すと、機体を急発進させ、ヘイブンとヘイルの間をすり抜けていった。


「なッ、またか!!」


 モスマンがその行動に出て数秒経った時に、後ろを振り向きながらヘイブンは気づいた。

 ナタリーは一瞬、何故背中を押されたのか分からなかったが、モスマンの言いたいことを察知し、ナタリーのナイトモスキートも同じようにモスマンの背中を追うようにしてすり抜けていく。


 ナイトモスキート隊は二人も仲間を失ってしまったが、ナタリーがパニックを起こし、その場を離れていってしまったその前の状況にまで状況を戻すことに成功した。

 その光景に、コックピットの中でヘイブンは腕を組みながら言う


「━━へぇ、まさかラウンド2まで持っていくとは思わなかったよ。予想外ってやつだ」

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