<エキドナ>強襲作戦 其の十
敵は一機に対してこちらは手練れの兵士三人。
まず負けることはないだろう。
しかし、敵の戦力がまだ図り知れていない。
というかそもそも、<アポロン>が15機のASCOFなのに対し、<エキドナ>は僅か三機だけのASCOFで出撃し、堂々と出てきたのだ。
いくら物資がない国でも、もう少し兵力を投入するはずだ。
であれば、敵のガァル・アル・ロイヤル、ヘイル・アロー、ヘイブン・アロー、この三人はよほどの力を持っているんじゃないかという推測も可能である。
「不味い!モスマン中尉、敵ASCOFがナタリーの機体に追いつきます!」
「全速力だ!この際、バッテリーのやけどは気にするなッ!」
「「了解ッ!!」」
ヘイブンのヴァリアブルピッグブランを追う三機のナイトモスキートのスピードが更に早まる。
しかし、どれだけのスピードを出しても間に合わず、ヘイブンのヴァリアブルピッグブランはナタリーのナイトモスキートに手をかけた。
肩を掴み、ナタリーの乗るナイトモスキートを完全にその場に停止させる。
「キャァァァァァ!!」
通信越しに聞こえてくるナタリーの悲鳴。
それを聞いていたモスマン以外の二人が、怒りを抑えきれなくなった。
「あのやろォ!」
「そこで待ってろ、ナタリー!今そいつをブッ殺してやるッ!!」
しかし、その熱を冷ますかのようにヘイブンが口を挟んだ。
「馬鹿かお前ら、正気か?今、そのナタリーとかいう女の命は、今、俺が握ってるということを忘れるなよ!?」
そう言って、ヘイブンのヴァリアブルピッグブランは腰からヒート・ソードを取り出し、ナタリーのナイトモスキートの首に突きつけた。
ナイトモスキートの首の部分が外側からどんどん剥げていき、ドロドロと溶けていく。
中のコード線のような物が火花を放ち、これ以上やると、メインカメラのケーブルが切り取られ、ナタリーの目の前が真っ暗になることだろう。
だが、この時のモスマンは、実に冷静だった。
「あぁ、いいぜ、やってみろよ。その瞬間、俺ら三人のヒート・スピアーがてめぇのコックピットを貫くぞ」
ヘイブンはその言葉を聞いたとき、体の中から何か熱いものが湧き上がってくるようだった。
「フフフフフ、ッハハハハハハ!!おもしれぇ!かかってこいよ!このナタリーとか言う女は死ぬがな!」
その瞬間、先頭にいたモスマンのナイトモスキートが一気にヴァリアブルピッグブランに突進する。
「アイツッ!マジで来やがった!」
モスマンの想定外の行動に、ヘイブンは内心焦る。
今捕えているナタリーのためにここまで追ってきたのに、それを見捨てるような行動を取るなんて。
だがまぁ、これも全て、ヘイルの想定の内、だろうか。
モスマンのナイトモスキートを筆頭にヴァリアブルピッグブランに迫ってくる三機のナイトモスキートの内、一気が急に進路を外れた。
モスマンはその光景を、「進路が外れた」のではなく、「進路を外された」と一瞬のうちに判断できた。
モスマンは思い切りコントロールマウスを手前に引っ張り、ナイトモスキートの全力の前進を止める。
もうひとりのナイトモスキートは止まることなく前進した後、またもやヴァリアブルピッグへの進路を外れていった。
偶然じゃない。
瞬間、
”ドォォォォォォン”
”ドォォォォォォン”
爆発音がモスマンの前後から二つ聞こえてきた。
「やっと来たか、遅いぜ、兄貴!」
モスマンの後ろの爆風の裏には、黒いヴァリアブルピッグの影が見えた。




