<エキドナ>強襲作戦 其の四
戦況は未だ膠着状態である。
正確に言えば、膠着状態にならざるを得ない状況に、お互いにしてしまったのである。
しかし、<エキドナ>にはまだ奥の手があった。
━━<アポロン>、<エキドナ>の頭上到着まで後8km。
<アポロン>が後ろから迫ってきてしまっているため、段々と<エキドナ>から射出され続ける航空戦闘機との距離も縮まってきてしまった。
このままでは、自爆特攻がしやすくなってしまう分、敵の方が有利に近づいていっていると言わざるを得ないだろう。
「不味いな……押され始めている……かといって、<アポロン>の進行を止めるわけにもいかない。━━どうするか……」
敵航空機の数は減り始めている。
流石に数が尽きてきたのだろう。
敵は人の命を割いて数を保っているが、こちらは弾を補充するだけでいいのだから、どちらのほうが消耗が早いかは分かりやすかった。
しかし、辛い状況であることに変わりはない。こちらが押されつつあるのも事実だ。
だが、勝機はまだこちらにある。
ならば、もう乱射し続けるしか無いのだ。
「攻撃の手を止めるなァ!止めた瞬間、そいつから死んでいくと思えッ!!」
これが、皆に対する最後の発破になりそうだ。
「「「「「━━了解ッ!!」」」」」
これで、最後の攻撃を始めるんだ。
そう思った束の間であった。
「バンディック少佐!!<エキドナ>から更に航空戦闘機が球状に射出!!数にして約50ッ!!」
部下の言葉の通り、モニターには先程までの航空戦闘機がまるで花火のように、球状の陣形で射出された。
「あっちも最後の力を振り絞った感じだなァ……陣形も変わっている……よし、攻撃開始ィィ!!」
攻撃の手を止めたほうが負ける。
お互いの共通認識だった。
だからこそ、<エキドナ>側はまだ、隠し玉を用意していた。
バンディックは何も不思議に思わなかった。
ただ陣形が変わっただけだと思い、特に何も感じなかった。
ここで、バンディックは不思議に思うべきだったのだ。
「ッ!敵のスピードが異様に速いです!少佐!」
「敵が速い━━?なんか意味があるのか?せいぜい自爆特攻がしやすくなるだけだと思うが……」
敵の狙いが分からなかった。
(ここに来て、敵が速くなる必要性ってなんだ?)
「よぉし、相手はまだ気づいてないみたいだなァ」
「そんな安々とバレはしませんよ、ガァル大佐」
「そうですよ、ロイヤル大佐の完璧な作戦に、相手が気づけるはずがない!」
「ハッハッハッハッハッハ!!確かにそうだな!お前らの言う通りだ!ヘイル、ヘイブン!」
この会話は、球状陣形の真ん中から発された会話だ。
「よぉし!後もう少しで前面の戦闘機の殲滅が完了するぞ!」
先程射出された約50機中の、既に15機は殲滅しており、前方にいる戦闘機はもう少し手を加えれば後ろが見えそうになるくらいには殲滅した。
しかし、敵が奇怪な行動に出る。
「お、おい、何してるんだ?アレは……」
中隊の一人が驚いたような声を上げたので、中隊全員がそちらの方向を向いた。
声を上げたのは7番機のナイトモスキートで、ASCOFごとその光景を指さしている。
その指を指している方向は紛れもなく敵の戦闘機の集団であり、皆は一瞬なんのことか分からなかった。
だが、直ぐに全員がその光景の違和感を感じ取る。
「前方に戦闘機が……集結していくぞ……」
そう、後ろに控えていた戦闘機たちが、まるで前方の空いた穴を埋めるかのように割り込んできていたのだ。
まるで、後ろに何か見られたくないものでもあるかのように。




