<エキドナ>強襲作戦 其の三
<アポロン>の命運、そしてグラマスのようにうまくできるのか。
そのような不安が、バンディックには最初からあった。
しかしここでまた、大きな不安がまた一つ、生まれてしまったのだ。それは何なのか。
恐怖だ。
死の恐怖、それが目の前に繰り広がっている。
敵航空戦闘機の自爆突進で死んだときのことを思わず想像してしまう。
航空戦闘機の先端がナイトモスキートの体ごと貫き、その先端はコックピットをも貫き、自分自身の身体を内蔵ごと貫く。すぐさま爆発し、ナイトモスキートごとバンディックの四肢は痛みを感じる暇もなく爆散し━━━━
(━━!ッぶねー……!なんてこと想像してんだよ、俺……)
自我を取り戻したバンディックに、最早死角はなかった。
「死ぬ夢はッ!地獄で見やがれッ!クソッタレェ!」
バンディックはマウスコントローラーを思いっきり前に押し込んだ。
”ボォォォォォォ”
そして、ナイトモスキートは戦闘機へとぐんぐん進んでいく。
その様子を見ながら、他の中隊員が笑いながらバンディックに言う。
「ハハッ、バンディック少佐、最高の一句ですね!」
(……一句?)
死ぬ夢は
地獄で見やがれ
クソッタレ バンディック・ギルミール
完璧に五七五の形である。
それに気づいたバンディックも、思わず笑い声を上げてしまった。
「ハハハッ、確かに!最高の一句だ!帰ったら縦の紙に書いてやるよ!筆でな!」
なんだか、負ける気がしない。
戦争中にこんな会話をしているのは正直頭がおかしいと思うが、頭がおかしくって結構だ。
むしろ、頭がおかしい状態が、最高にベストだ。
戦闘機の目の前まで来ると、槍を振るった。
その振るった場所から順番に、次々と戦闘機が爆発していく。
一気に全ての戦闘機を倒してしまった。
「よし、殲滅した!お前らも続け━━」
「少佐!危ない!」
そう言われ、バンディックのナイトモスキートは振り返ると、さっきの倍以上はあるであろう数の航空戦闘機が、またもや<エキドナ>から射出された。
「━━ッ!!」
バンディックは咄嗟の判断で後ろへと後退していく。
「どッ、どういう事だ!?」
「敵の増援です!数はさっきの倍以上━━は、80はいるかと思われます……」
「はッ、80だと?」
絶望的な数。
倒せない数ではないが、如何せん数が多い。
このままではこの中隊で死ぬ人間が出てくる可能性があるだろう。
しかし、退けない。退けないのだ。
「射撃始めェェェ!全て撃ち落とせェ!一つも<アポロン>に近づけるなァ!!」
中隊全員のナイトモスキートが一斉にライフル射撃を開始した。
敵は次々と爆発四散していくのが見えるが、その爆発よりも圧倒的にこちらに向かってくる敵の数のほうが多い。
このままじゃ不味いというのは、火を見るより明らかだ。
しかし、攻撃を止めるわけにもいかない。
「チクショォ!なんなんだこいつらッ!全然減らねぇぞ!」
「追い詰められてるわけじゃねぇ、焦んな!」
「じゃあ、この状況を打開できる策でもあるっていうのか!?」
「無いからこうやって乱射してンだろが!」
聞こえてくる、部下たちの悲鳴にも似た声の数々。それを聞いているだけで、全員が全員、不安だという気持ちが伝わってくる。
(この状況を打開できる策、か。残念ながらそんなものはない━━なんて言ったら、きっと暴れ出す奴らもいるんだろうな)
しかし、バンディックは気づいていなかった。
<エキドナ>の目的はこんな自滅特攻ではなく、もっと他にあるということが。




