<エキドナ>強襲作戦 其の二
ただ進む。
そう命じられているのだから。
ただ、<エキドナ>の雰囲気が先程とは何かが少しだけ変わっていたような気がした。
殺気とも覚悟とも違う。しかしそれが何かはわからない。
「<エキドナ>まで、後12キロメートル……。敵は攻撃してこないのか━━?」
「敵が来ないに越したことないだろ。なぁ?」
「そうだな。敵が来るということは、こちらに損害が出る可能性も出てきてしまうのだからな」
バンディックの耳に、中隊の隊員の声が入ってくる。
やる気があるのか無いのか……バンディックには分からない。しかし、バンディック自身はそこまでやる気が出なかった。
何故か?敵が出てこないからだ。
中隊のほとんどの隊員は遭遇したくないようだが、バンディックには、遭遇しなければ自分の存在意義を見失ってしまうようでどことなく怖かった。
しかし、バンディックの不安は、次の瞬間、すぐに払拭された。
「━━ん?おい、皆あれ、敵じゃないか?」
バンディックの機体カメラに映ったのは無数の宇宙用航空戦闘機である。
そして、その戦闘機を見て、バンディックは一瞬で察した。
「全機、戦闘準備!敵の航空戦闘機、多数接近!観測班は敵勢力の数の確認、主戦闘班は熱圧縮装備の熱圧縮開始!急げ!」
「「「「「了解ッ!!」」」」」
全機が、バンディックの命令で即座に動く。
この光景こそ、団体戦の強みである。
「敵勢力数、確認しました!数30!こちらの二倍です!」
<アポロン>勢力はASCOF15機、<エキドナ>勢力は戦闘機30機。
「いや、勝てる!このまま進め!たかが航空戦闘機の攻撃が、ASCOFの装甲を敗れるはずがないッ!」
このバンディックの言葉に、<アポロン>の軍勢15人、全員の士気向上に繋がった。
そしてこの瞬間、多数対多数の戦いが幕を開けた。
最初に動いたのは<アポロン>軍3番機のナイトモスキートであった。
ナイトモスキートが放ったライフルの弾は、航空戦闘機を一機堕とした。
「━━やった!やったぞッ!初めて敵を堕としたッ!」
3番機のパイロットが喜びの声を上げた。
その行動から、次々とナイトモスキートがライフルを乱射する。
当たらない弾の方が多いものの、やはり数うち当たる、というのは間違いではなく、ほとんどの戦闘機が無惨にも爆発していった。
━━━しかし。
勢いは向こうにもある。
向こうは何より数が多く、どれだけ倒しても爆炎の中から戦闘機が飛び出してくる。
そして何故か、全ての戦闘機は、こちらに向かってくるのみであり、避けようとしないのが、また不気味な点でもあった。
このまま、突撃されて自爆でもされたら、流石のASCOFでも耐えようがないだろう。
(チッ、やはり自爆でこちらを倒す気か……)
「全機、敵の突進に気をつけろ!自爆されたら死ぬぞ!」
以前、有利な状況であることに変わりはないが、敵の自爆が次々と成功されてしまったらこちらの戦力では有利な状況を失いかねない。
そして何より、死と隣り合わせという状況に、バンディックは背中を汗で濡らしていた。




