<エキドナ>強襲作戦 其の一
『どうも、<イカロス>の皆さん。私の名はウェルナー・ウェルスタンと申します。ご存知かもしれませんが、<アポロン>の大統領をさせてもらっています』
<イカロス>の大画面公共用モニターに、何故か<アポロン>の大統領と名乗る男がでかでかと写り込んでいる。
アサミはそれをただ、見ていることしかできなかった。
何故こうなったのか。
それはアサミにもテイムにも、またピーターやニアールにも分からなかった。
ただ、宣戦布告なのだろう。<イカロス>に対しての。
それだけは、<イカロス>国全員の共通認識となった。
突如、大画面モニターにウェルナーという男が映し出され、<アポロン>の大統領だと言い放っている。
しかし、いくら<イカロス>の国の国民だとしても、<アポロン>の大統領の顔と名前ぐらいは知っている。
ウェルナー・ウェルスタン。
彼は紛うことなく、<アポロン>の大統領である。
『今回は、話すことがあってモニターを貸してもらいました。あぁ、勿論、ハッキングしてね』
そんなことを平然と言ってくる大統領なんて、見たことがなかった。
彼は既に、臨戦態勢に入っていたのだ。
<イカロス>との戦争の、臨戦態勢だ。
『それで本日は、色々とお話したいことがあって、この場に現れました。そして━━━━』
━━━━二時間前。
<エキドナ>宙域手前。
<エキドナ>。
人類史上初となる、宇宙でも生活が可能なコロニー空間、『ムーブ・パレス』。
全てはここから始まった、なんて言葉が正に相応しいと思われる国だ。ムーブ・パレスの歴史はここから始まったのだ。
そんな<エキドナ>という国の思想は、『人類の行く末に身を任せ、その行く末を受け入れる』ということである。
そんな人類の歴史の転換点でもある場所、<エキドナ>の前に、<アポロン>は移動していた。
そう、<エキドナ>の宙域に、<アポロン>が進行してきたのである。
そして<エキドナ>に向かって進み続ける<アポロン>の前方に、15機ばかりのASCOFの中隊がいた。
全てナイトモスキートであるため、見栄えとしては大量に向かってくるゴキブリだろうか。
そして、この中隊を指揮するのは、一番前方にいる彼、バンディック・ギルミールである。
「お前ら、気ィ引き締めてけよ、今日はグラマスいねえんだからな!」
そう、この場にグラマス・パナ・ゴーマスがいないのは、この前に謎のASCOFの集団と戦った時に、クラッシュライノスの全身に回った熱で気絶してしまったからである。
そのため、今は回復し、目覚めたが、回復して間もないため今回の作戦にはグラマスは参加していない。
「ところでバンディック少佐。今回の作戦、なんで後ろに<アポロン>が控えてるんですか?」
「俺にもわからんが、俺らの作戦内容は、後ろで大突進かましてる<アポロン>をとにかく防衛しろってことだ。まぁ、噂によれば、<アポロン>の下にくっついてるでかい砲台、ガルガンチュアで<エキドナ>を攻撃するんじゃないかって言われてるがな」
今、<アポロン>のドーム状になっているその下に、色んなバーニアやダクトに紛れて、大きな砲台のような物が設置されている。
名は『ガルガンチュア』(中世フランスの伝説に登場する、大食らいの巨人)と呼ばれ、名前からしてやばい雰囲気が漂っている兵器なのは確かだ。
あんなもので攻撃したら、<エキドナ>の中心に穴が空き、大爆発を起こすのは間違いないだろう。
「そういう事だ、気を引き締めていけよ!!」
「「「了解ッ!!」」」
バンディックを除く、14の兵士が返事をした。
そんな時だった。
「バ、バンディック少佐!<エキドナ>から<アポロン>に向けて通達!『コレヨリ先、<エキドナ>ノ領域也。コレヨリ先ヘノ進行ハ、攻撃と判断ス』、と……」
「そんなのに構うわけがないだろ。皆、こっからは敵が出るだろうが、俺らが負けることはない。全速力で進め!」
ASCOFの中では、<アポロン>の兵士による雄叫びが高々と響いていた。




