圧倒的失態
日常回です。
アサミは、ジャイアントパンダと戦っているのに必死だったが、よく考えれば一日のうちに出発を志し、そして一日の間に戦闘を終わらせたということに、違和感を覚えていた。
スノウラビットから降り、いつも三人が集まっている部屋に戻って休息しようと考えたときに、一つ思ったのだ。
あの争奪戦のあと、果たしてニーナは大量の酒を手に入れることができたのか。
そもそも、急に一人だけ居なくなって、帰ってきたらパンダのこと討伐してたなんて言ったらどれほど驚くのだろうか。
なんだか心配になってきた。
目の前にはいつも三人がいる部屋がある。
テイム、ニーナ、マヒルの三人がここにいるという確証はないが、このあまり使われもしない寂れた部屋にわざわざ休憩のために来る人なんて居ない。
そして、部屋の中からは話し声がする。
あの三人がいるのだろう。
部屋のドアに手をかけ、横を向いた。
実は横には、マルコヴナがいる。
皆にも紹介したいなと思い、わざわざ疲れた目をしたマルコヴナを連れ出したのだ。
ラァラも呼びたかったのだが、残念ながら今回の戦果の報告のためにしばらく時間がかかるらしい。
横を向いたアサミに、マルコヴナはアイコンタクトで答える。
どうやら、OKらしい。
何故か緊張するが、別に緊張する必要もない。
扉を静かに開けた。
やはり、目に真っ先に飛び込んできたのは、ニーナ・ペンドラゴンの姿だった。
「ん━━?おぃ、アサミじゃねぇか!」
ニーナはアサミの気配に気づくと、すぐさまこちらに来てアサミと肩を組んだ(一方的にだが)。
そして、ニーナはマルコヴナの気配に気づかないわけもなく、
「ん?誰だ、オメー。アサミの彼氏かなんかか?」
容赦ない一言を投げかけた。
勿論、奥にテイムとマヒルの姿も見えるが、マルコヴナ諸共、衝撃を受けた。
効果音で例えるなら、
”ピシャァァァァン”
だろうか。
マルコヴナは驚きのあまり、思わず言い返してしまった。
「おっ、お前こそなんなんだよ!ア、アサミ・イナバさんにくっついたりして!お前こそ彼氏なのかよ!」
「んあ?彼氏?何いってんだ、俺は正真正銘の女だぞ」
この言葉にはアサミもマヒルも笑いを堪えざるを得ない。(テイムは無表情である)
この下りは、何度やっても可笑しい。
「ふーん。つまり、俺らにナイショでパンダを討伐してたと……」
三人にはすべての事情を話した。
マルコヴナに出会った経緯、そこからパンダの討伐に出撃したこと、そこにラァラ・マリンスノウという女の子(成人済み)に出会ったこと。
そのすべてを話した。
「実は私も相当やばいことがあったんだよなぁ……」
「やばいこと?」
「あぁ、『ニーナちゃん考案っ!スペシャルお酒大作戦っ!』の後、勿論のごとく一番乗りで酒屋についたんだけどさぁ……」
ニーナちゃん考案っ!スペシャルお酒大作戦っ!を真顔で言うのはやめて欲しいと思ったが、アサミは笑いをこらえながら聞く。
「それで、30万の大金を置いてドヤ顔でマヒルが言ったのよ」
『これで買える分、全部よこしてくれ』
店員はそれに答える。
『お前さん、成人済みか?俺にはそうは見えねぇけど……一応、身分証明書を提示してもらえないと買えないからよぉ……』
『━━は?身分証明書?』
『身分証明書がなきゃ、酒は提供できねぇなぁ』
「ばッ、バカじゃないの!?」
ニーナは笑いをこらえながら言う。
いや、既にちょくちょく吹き出している。
「しかも、テイムも未成年だから、二人共買えないってさ!ギャハハハハハハハ!!」
「何笑ってんだテメェ!」
「テメェって……あんたのミスだよ、マヒル」
「ッんだと!?」
このままいつもの取っ組み合いが始まりそうだったので、アサミは話の続きを聞いてみた。
「そ、それで、お酒は買えたの?」
「あ?買えたよ。皆、酒屋に走っていったわけじゃなかったんだってさ〜」
そう考えれば、それもそうか。
あの場に居た大勢の人全員が酒屋に走っていくわけではないのだろう。
しかも、酒屋と言っても、流石に何件かはあるだろう。
「まぁ、その話はいいんだけどサ、マヒルがアサミに話したいことがあるってよ」
「え?マヒルが?」
マヒルはいつもの元気はなく、アサミと目があってもただうなずくだけであった。




