未知との遭遇
まさか、何も聞かされていないとは思わなかった。
ニアール大統領は、実は意外と大雑把な人間なのかも知れない。
「えっと……な、名前だけなら、知ってますよ……!た、多分……」
アサミとマルコヴナは、最後の「多分」というワードで、一気に不安になってしまう。
「んー、まぁ、取り敢えず、今から出発するから、準備して?」
まぁ、無理もない。
今どき、宇宙獣の知識なんて知っていたところで、なんの役にも立たない。
そんな事を自分たちから知りたがっている変態なんて、そこらへんの頭のイカれた生物学者くらいだ。
ただ、宇宙獣がほとんどの生物を締めている時点で、そもそも生物学者すら少ないという状況だ。そんな現状で、ただの一般人が、知っているはずもないのだ。
「わ、分かりました!あ、あ、アサミ先輩っ!」
「せせせ、先輩っ!?」
ラァラの大胆なアサミの呼び名に、思わずアサミが言葉につっかかりを覚えてしまった。
ラァラがほっぺたをプクリと膨らませているのを見る限り、どうやら変更の考えは無いそうだ。(というより可愛い)
アサミが困惑の渦に包まれる中、マルコヴナは、耳元でそっと「アサミ先輩」なんて言ってきた。
「━━ッ!マルコさんッ!!」
アサミは顔を真っ赤にしながら、マルコヴナに説教を始めた。
結局、ラァラは意味もわかっていないまま、宇宙へと放り出されてしまった。
三人は、ジャイアントパンダの情報の出どころである場所へと向かっていた。
マルコヴナも着いてきているが、ASCOFには残念ながら乗っていない。
しかし、着いていきたいと強い意思を見せたことで、『偵察ポッド―0015』通称『ワンコ』に乗ることだけは許された。
アサミとしては、そんなラァラよりもラァラの乗るそのASCOFに注目していた。
どこかで見たことある形のASCOFだなと思っていたら、その脚を見て理解した。
<アポロン>からの刺客、そのリボウルとか言う小隊長が乗っていたASCOF、ペインホッパーの逆関節を採用した脚だったのだ。
多分、別の宇宙獣のDNAを取り込み、全く別の機体へと変化を遂げたのだろう。
気になって、思わず聞いてみた。
「ねぇ、ラァラ。その機体の名前は、なんて言うの?」
すると、スノウラビットのコックピットの中に、ラァラの声が反響して返ってきた。
「あっ、こ、これは、『クワイエットビー』っていうらしいです。英語の、ビークワイエットと掛かっているそうですよ。お、面白いですよね……!」
((可愛いッ!))
(可愛すぎない?)
(そのダジャレ、どんな顔で言ってんの!?)
マルコヴナがダジャレでは無いという思考回路に至ることは無かった。
ビークワイエット。
確かに、その名前なら、その背中に背負っている狙撃銃にも納得がいく。
しかし、ラァラに狙撃者なんてできるのだろうか?
アサミとしては、不安が募っている。
そして、そんなラァラを守るためにも、自分がしっかりしなくては、と強く思う。
勿論、戦うことすらままならないマルコヴナも、守るために。
気づいたときには、アサミに過度な責任感が募っていた。
(私がしっかりしなくちゃ……みんなが死んじゃう……)
そんな不安と責任感を感じ取ったのか、スノウラビットの背中を自動追尾するマルコヴナは、アサミに問いかけた。
「アサミ・イナバさん、大丈夫ですか?」
「ん!?あぁ、大丈夫。なんでもない。ちょっと考え事〜。あはは……」
(その反応は大丈夫じゃないやつだろ……)
そんな事を考えていると、マルコヴナのレーダーに、宇宙獣の反応を示す赤い点が映り、コックピット内で甲高い音が鳴り響く。
”ピピピピピピ”
「ッ!二人共、前方2km先に宇宙獣の反応、数一!恐らくこれは━━」
「パンダの反応ね!?」
アサミはマルコヴナの言葉を遮ってまで確認した。
しかし━━
「ここら辺、ちっさい石ころがたくさんあるわね……」
目の前に映ったのは、小さな石のたまり場だ。
そして、その奥に白い影が通り過ぎていく感覚を感じた。
「待って!今━━居た……!」
偵察ポッド―0015
偵察、戦闘記録の観察をするための小型メカ。
ASCOFではない。
なぜワンコなどという呼び名がついているのかと言えば、理由はいくつかある。
まずは、名前に0015とついていることから来ている。
次に、このメカの機能にある。
ASCOFに自動追従する機能が備わっており、そのASCOFについてくる姿から、皮肉の意味も込めて、ワンコとなっている。
戦闘能力はほぼ皆無だが、自衛用の小型マシンガンが一応装備されている。




