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国家間会議

 クルックは足を組みながらその場に投影された。

 この中で一番若いとは思えない、偉そうな態度だ。


「いやぁ。遅れてすいません。<クロノス>のエンゲル大統領がいるにも関わらず……」


 表情は冷静そのものだが、クルックの声からは密かにバカにするような笑い声が、そこに確かに存在する。

 そして、<クロノス>の()()()()()()()()という国の習慣を皮肉な言い方で返している。


 <アキレス>の大統領、クルック・デメキシスとは、こういう男だ。


「えぇ。本当です。時間が勿体ない。━━二アール殿。早く始めましょう」


 エンゲルは、クルックと言い争いをすれば更に時間が面倒くさくなるということは知っている。

 だから、この国家間会議を重ねる上で、クルックの躱し方(・・・)は既に会得している。


 ニアールは、エンゲルに言われた通り、話を進めることにした。


「今回、皆様にお時間を頂いたのは、知っていると思いますが、()()()でご相談と提案があるからです」


 <ノア>の大統領、オーゲルとアイコンタクトを取り、お互いにうなずくと、皆の目の前、つまりこの部屋の真ん中に、ゆっくりと回転する電子板が唐突に現れた。

 その電子板では、<イカロス>のASCOF(アスコフ)と<アポロン>のASCOF(アスコフ)が共に激戦を繰り広げている映像が流れている。


「これは、<アポロン>が我が国に奇襲攻撃を仕掛けてきた時の映像です」


 ニアールとオーゲル以外、興味津々でその映像を見ている。


「この奇襲攻撃によって、<アポロン>は我々との戦いの意思があることを示しました。よって、皆様にご提案があります」


 ニアールのただならぬ雰囲気。

 ニアール自身も、覚悟して次の言葉を紡いだ。


「━━この戦争に、<イカロス>の同盟国として、参加していただきたいのです……」


 エンゲルとクルックは、共に驚いたような顔をした。

 まさか、戦争をする、という報告ではなく、戦争をする前提で同盟国になれというのだから。


「なるほど、そうきましたか……」


 エンゲルは顎に手を当て俯いた。

 流石に考えることが多すぎる。


 しかし、悩みもせずに、一言、答えを出した者がいた。


「俺はならないぜ━━?」


 クルックであった。


「……一応、理由をお聞きしてもよろしいでしょうか?」


「こんなの、考える余地もない。我々<アキレス>は、確かに<ノア>と技術提供や物品提供を頻繁にしあっている仲だが……残念ながら、<アポロン>と仲良しの国、<クシナダ>とも、我々は貿易を頻繁にする仲だ。<クシナダ>を捨てることになる。到底、その誘いを受け入れることはできないな」


 ニアールは、心の底から悔しく思う。

 そう。

 <クシナダ>が<アポロン>の味方をしている限り、同盟国の条約を結ぶことはまず不可能と言っていいだろう。


 だが、<クロノス>ならば、日々のアタックがとうとう実を結ぶかも知れない。




 <クロノス>には、過去から<イカロス>が猛アタックを仕掛けている。

 戦争あるなしに関わらず、昔から<イカロス>は<クロノス>と貿易や取引をしたいと思っていた。

 しかし、その話題は先延ばしにされ続けてきた。

 <イカロス>の様子を伺っているのだろう。


 しかし、ここで同盟を結べれば、今後の活動に<クロノス>と協力が可能になる、いい口実になる。


 <クロノス>とは、なんとしても同盟を結びたい。


 もう聞くしか無い。


「━━では、エンゲル大統領はどうしたいですか?」


「どうしたい、ですか。そうですねぇ……」


 エンゲル大統領が悩んでいる。

 時間のムダと思っている悩む時間を取ってしまうほど、悩ましい問題だったのか。


「━━少し、考える時間をください」


「はぁ?あの<クロノス>の大統領、エンゲル殿が物事を保留!?はははっ、明日は槍の雨ですかなぁ!」


 エンゲルの誠実な答えに、クルックが口を挟んだ。


「クルック殿、少し落ち着いて━━」


「エンゲル大統領、そろそろ言ってしまっては?<イカロス>からの勧誘は迷惑だと!」


「なんてこと言うんだ━━!私はそんなこと言っていないだろう!」


 エンゲルの沸点が限界に達したのだろう。

 エンゲルはクルックに言い返してしまった。


「じゃあ、実際どう思っているんです?<イカロス>の事?」


「それは━━」


「答えられないじゃないですかァ!ニアール大統領、どうやら迷惑らしいですよォ!」


 クルックはケラケラ笑っている。

 何がそんなにおかしいのか。誰にも理解し得なかった。


「迷惑と思われていても結構です。いつか<クロノス>と共に歩みたいという気持ちは変わりませんので」


 その二アールの異様に落ち着いた返しは、クルックも流石にボロを見つけるのは難しかった。


「じゃあいいですよ。好きにやってください。私は同盟国には入りませんので」


 そうクルックは言い残して、この場から消えた。


「私もすいませんでした、色々と」


 今度はエンゲルが申し訳無さそうに言っている。


「いえ、そんな事はありません。いつでも待っていますよ、エンゲル大統領」


「ありがとうございます。遅くなってしまうので、これにて━━」


 そう言って、エンゲルも消えた。


 残ったのは、ニアールとオーゲルのみである。

 ニアールがオーゲルに話しかけた。


「そう言えばオーゲル殿。()()()()をそろそろ行いたいのですが……」


「そうですね。こちらで進めておきます。また、連絡させていただきます。では、私もこれで━━」


 オーゲルも消え、とうとうニアール一人になった。


「はぁ……今回も短かったはずなのに、疲れた……」


 そう思いながら、ニアールは静かに部屋を出ていった。

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