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正論を振りかざす先

 戦いは終わった。


 結果はバーストタイガー、そしてスノウラビットの活躍により、<イカロス>の大勝利に終わった。


 これによって三つの結果が生まれた。


 まず一つは<アポロン>のASCOFアスコフの技術力の理解である。

 ナイトモスキート一機を機体の大まかな形が残ったまま捕獲できたので、重点的に調べ上げられた。

 結果、<イカロス>の機体よりも性能は劣っており、スノウラビット一つでナイトモスキート十機は相手できるだろうという計算になったのである。


 この結果は<イカロス>の技術関係者全ての人の喜びに繋がる結果であり、最終的には設備班の志気向上に繋がった。


 もう一つは、アサミとテイムの階級昇格が許されたことである。

 これによってアサミが少尉、テイムは少佐となった。


 そしてもう一つの結果は━━━━






「ねぇねぇ、見た?昨日のアレ・・


 街中の喧騒の中で若い女性が話しかけた。


「あー、なんだっけ、ASCOFアスコフ━━だっけ?」


 もうひとりの若い女性はあまり関心なさそうに答えた。


「そうそう。アレさぁ、私家からずっと覗いて見てたんだよね」


「えッ、マジ!?」


 初めて興味を持ったような声色に変わった。


「ど、どうだったの!?」


「めちゃくちゃ大きかったんだよ!それに何よりあの白いの、かっこよかったなぁ……」


「でもさ、ニュースとかやってないよね」


「あ、やっぱそうだよね!?なんでなんだろ」






「情報が漏れ始めているようだな」


 年をとった男が低い声で言う。


「えぇ、そうですね」


 それに金髪の男━━ピーターは答えた。


「……何も思わんのか?」


「思うところはありますが、この際、公表してしまってもよろしいと思いますがね、大統領」


 そう。

 ピーターの話している相手はニアール<イカロス>大統領。

 ピーターの提案にあまり納得がいかないのか、ニアールは首をひねった。


「公表したところで、国民の不安を煽るだけではないのかね?」


「いえ、そんな事はありません。公の場で<ノア>と兵器貿易が可能ですし、何よりこのまま国民を放っておくことの方が政府に不安を覚える原因となってしまうのではないでしょうか?」


 笑顔のまま言うピーターの言うことは、全て正しい言葉で連なっており、正論と言わざるを得ないほどの完璧な反論だった。


 ニアールは大きく息を吐いた。


「━━分かった。今回君の口車に乗せられよう……ASCOFアスコフ発表の会見の場は君に全て任せる。━━これでいいか?」


 ピーターはより笑みを強くして、


「えぇ。大丈夫です」


 と答えた。


「では、これで失礼いたします」


 そう言って部屋を後にしようとしたピーターを、待て、と言ってニアールはいいとどめた。


「あんまりこういうことは言いたくないんだがね、ピーター君。世の中、正論だけで動くことが全てではないということも理解してほしい。君は実に仕事が早い男なんだから、変な理由・・・・でキミを失いたくないんだよ。そこも、理解してほしいんだが、どうだね?」


 ピーターはニアールに顔を背けたまま少し間をおいた後に口を開いた。


「えぇ、理解してますよ。痛いほどに」


 そう言ってピーターは部屋を後にした。






 <イカロス>の地区には一つの地区に一つの大画面モニターが見やすいところに設置されている。

 これは、貧民の国民にもどうにかして情報だけは伝えようと、ニアール大統領が設置するよう指示したことでできたものだ。

 そしてその地区は合計で五地区あり、五つの公共用大画面モニターがこの国には設置されている。


 殆どの人間が、モニターを舐めるように見た後、またどこかに去っていく。

 公共用モニターなど、そんなものである。


 しかし、次の瞬間、モニターの前を通り過ぎようとしていた人々全員がモニターの前に立ち止まった。


 突如、金髪の男が画面にアップで映し出されたのである。


『こんにちは。私の名前はピーター・ウィッグネン。軍で兵器の販売や開発の主任をしている、兵器長という仕事をしています。物騒ですよね』






「おい、見ろよこれ……!」


 アサミとテイムは、初めてニーナとマヒルと出会った場所で休憩していたところ、ニーナが走ってきて薄いタブレットのモニターを突き出してきたのである。


「あれ、ピーターさんじゃん。どうかしたの?」


 タブレットの中では、ピーターが自己紹介している姿が映し出されている。


「あんたら、公共用電波ぐらいイヤホンで聞いとけよ!ピーター・ウィッグネンが、急に公共用電波で会見を始めたんだよ!」


 二人は一瞬理解ができず、頭の中で分かった瞬間、


「「はぁ!?」」


 アサミもテイムも大きな声を上げていた。

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