出会い
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ただ、そんなことが分かったところで、どうしようもないことは分かっている。
「━━まぁ、そうですね。もういいでしょう」
「━━え?」
「ですから、お帰りいただいていいということです。もう話すことはありませんので」
ピーターから出た言葉は、意外なものだった。
ここまで長時間縛り上げておいて、ピーターの独断だけでこの部屋を出る許可を出しても良いのだろうかとは感じるが……
「い、いいんですか……?」
「えぇ。よろしいですよ。ここにずっといてくれても特に何も起きませんし、何も代わり映えしないですので」
そこまで言われると、逆に悪い気までしてくる。
その後、何度も「出ていいのか」と聞き続けたあと、あまり気の向かないまま外へと出ていった。
後ろから、「もう二度と来るんじゃねえぞ!」と先程の取調官が叫んでいる。
それを無視しながらただ歩いて行く。
<イカロス>軍事施設の門を出ると、横から黒塗りのちょっとした高級車が一台、アサミの目の前で止まった。
車の窓が上から下に下がり、一人の男が車から顔を出した。
「アサミ・イナバだな?」
突如、名を呼ばれたので、その顔を見ざるを得なかった。
細身で好青年、という見た目からして好印象な男が、そこにはいる。
だが、
「乗れって言われて素直に車に乗る人なんていないですよね?」
「あぁ。確かに、それもそうだが……」
男は言葉を続ける。まるでアサミをねじ伏せるように。
「これはピーター兵器長からの命令だ。いいから乗れ」
「ピ、ピーター兵器長!?」
結局、車に乗り込んだのはいいが、説明がまだだ。
とりあえず、聞きたいことがある。ずっと疑問に思っていることだ。
「結局、ピーターさんって何者何ですか?」
「ピーター兵器長は、その名前の通り、兵器を基本的に管理している人だ。まぁ、裏ではこの国の政治を牛耳っているんじゃないか、なんて言われてるけどな」
「そうだったんですか……で、あなたは?」
「俺か?俺はテイム・プロスル。軍の階級は一応、大尉だ」
それを聞いて、アサミの中で点と点が繋がった気がした。
アサミの記憶の中から掘り出された、一つの景色。
赤色と金色の、スノウラビットよりマッシブな見た目をしていたASCOF。
スノウラビットの中で時々拾っていた通信の中でそのパイロットの名前が、聞こえたのを、何故か妙に覚えている。
「テイム・プロスルって……もしかしてあの赤と金の機体に乗っていた……」
「バーストタイガーだ。あぁ、俺がテイムプロスルだ」
そんなまさかとは思ったが、本当にあのASCOFに乗っていたテイム・プロスルが目の前にいるとは思わず、無駄な緊張がアサミに突然降り掛かってきた。
するとテイムが、
「今から俺の家に来てもらう」
と告げた。
「は?嫌ですけど」
「だろうな。だが、これは命令だ。それに、君は今一時的に釈放されているだけであり、本来なら今もあの殺風景な取調室の中なんだ。我慢してくれ」
その後、結局テイムの家に来ることになった。と言っても、軍から支給されている小さめの兵舎だったが。
少しだけ大きめの扉を開けると、取調室より少しマシになったくらいの殺風景な部屋が、そこには広がっていた。
部屋にはいると同時に、テイムは、少しだけ距離を置いていたアサミに言った。
「そう警戒するな。警戒することは、時に身をも滅ぼすことになるぞ」
バーストタイガーの型式番号は、TRー024Jである。




