この広大な宇宙で
クワイエットビーは突き出されたヒート・スピアーを頭で受け止める。勿論、頭は玉砕され、次々と爆発している。だが、それでいい。
「捕まえたぁぁぁ!!」
そのあまりにも恐ろしい戦法が、相手の思考回路を上回った。
クワイエットビーはパールスペック︰ドラゴンを構える。
━━何を考えたのか、持ち手ではなく、銃口を握りしめながら。
銃を握る。相手に銃口を向ける。トリガーに指をかける。引き金を引く。爆発に巻き込まれるのを耐える。あぁ、動作が多すぎるよ。だったらもう、何も考えずに━━
(銃弾たっぷり積んだこれで殴れば、動作なんて考える必要、無いっ!)
クワイエットビーの腕が大きく動き、恐ろしい程の破壊力でノーマンのナイトモスキートの頭部を吹き飛ばした。そう、壊したのではなく、吹き飛んだのだ。
吹き飛んだ頭部はバラバラに砕け、それを殴ったパールスペック︰ドラゴンも銃身が折れ曲がり、マガジン部分が粉々に爆発する。
頭部がヒート・スピアーで貫かれてしまっている為、何処に当たったのかもわからない。しかし、攻撃は確実に当たっており、最早倒したも同然だろう。
ラァラの耳に怒りに満ちた声が入ってくる。
「貴様ァ!よくもノーマン軍曹をォォォォォ!!」
そして、その兵士はクワイエットビーに向かってヒート・スピアーを突き立てる。しかし、ラァラにはそれは見えない。
だが、ラァラには関係がなかった。
ゾーンだ。
この危機的状況においてゾーンに入ったラァラは、最早視界など関係がなかった。倒すべき敵がどこにいるかが、感覚で分かる。
「あああああぁぁぁぁ!!」
叫べるだけ叫ぶ。そして、ナイフを構え、目の前の敵の胸部を貫く。完璧な攻撃だ。
一機撃墜し、そして次の攻撃体制に入ろうとした時、突如、
”プシュゥゥゥゥゥ……”
クワイエットビーは白い煙を体中から吐き出し、動かなくなった。
「え!?なんっ……で……」
その時、クワイエットビーから声が聞こえてきた気がした。どこか静かで、悲しい声。
クワイエットビーが何故動かなくなったのか、それがラァラには分かった気がした。
「━━そっか……。元々は<アポロン>の子だもんね。人間からしたら操られて故郷の人たちを殺してるようなもんだもんね……」
妙に納得ができた。クワイエットビーは、元々、<アポロン>のペインホッパーを鹵獲して改造したもの。
クワイエットビーは、だから止まったのではないだろうか。
「分かったよ。あなたがそう言うなら、私も受け止める」
ラァラは自分の手元にあるモニターを優しく撫でた。
静かな爆発音が、この広すぎる宇宙に小さく鳴り響く。あまりにも広すぎて、この広大な宇宙では一つの命が散ることなど、虫が知らず知らずのうちに死んでしまっているようなものなのかも知れない。
しかしそれでも、儚き少女の魂が消えていったのは、紛うことなき事実である。
アサミもテイムも、そんなこと、知る由もなかった。




