託されたナイフ
「命は助ける」、なんて言葉、信用しきれないだろ、なんて思ってしまった。
しかし、そんなことを考えるよりも先に、体が動いていた。
”ズシャアッ”
金属が切り裂かれる音。それと同時にナイトモスキート隊が目撃した。恐ろしい速さでナイトモスキートの一機の首にナイフを刺し、人質の構えを取るクワイエットビーの姿を。
「動かないでくださいっ!」
この場にいる全員の耳にラァラの声が響き渡る。
「人質、だと……?この期に及んで、まだそんな真似をするのか……。残念だよ」
「五月蝿い!私は、他国に亡命もしないし降伏もしない!そもそも負ける気がない!」
全員に緊張が走る。抵抗する可能性を考えていなかったわけでは、勿論、無い。ただまさか後ろでスナイパーライフルを構えていた支援機が、ここまで俊敏に動き、格闘術を披露したことに驚きを隠せなかった。
「黙って降伏すればいいのに……。やはり君も、哀れな<イカロス>の民だったか……」
ノーマンはそう言うと、ヒート・スピアーを構え、クワイエットビーに向かって突撃する。
「━━なっ、人質がいるんですよっ!?」
「構わんさ!彼はそんなに軽々しい気持ちでこの場にはいないだろう!?」
「えぇ!!<アポロン>に栄光あ━━……」
人質に取られていた彼の最後のセリフだった。クワイエットビーが握るナイフがそのまま人質のナイトモスキートの胸を貫き、手元から小さな爆発を起こしていく。
それと同時に、他のナイトモスキートが恐ろしい勢いと速さでクワイエットビーに向かっていく。
「本当に、仲間のことなんてどうとも思ってないんですね……っ!」
「想っているよ!この場にいる全員、大切な仲間だよ!それでも、悪は討たねばならないのだよ!」
「口ばっかり……!」
特攻してきたナイトモスキートをナイフで次々と捌きながら怒りを露わにする。
そう、このナイフとは、元々、アサミとスノウラビットが使っていた『旧ヒート・アサシン・ナイフ』なのである。
「私には、アサミさんがついてる……!だから、負けない!」
クワイエットビーが、17機にも囲まれている中、次々と敵を捌いていく。右足が無くなったせいでバランスも取りにくいだろうに、なぜこんなにも素早く動き、対応できるのか。ナイトモスキート隊の面々には全く持って理解が追いつかなかった。
横からヒート・スピアーが突き出されるも、そのヒート・スピアーの剣先をヒート・アサシン・ナイフで切断、そのままナイトモスキートの胸部へとヒート・アサシン・ナイフを突き刺す。
その隙を狙ったナイトモスキートが、更にヒート・スピアーで突き刺そうとしてくる。しかし、それを大胆に手で掴み左手に持つパールスペック︰ドラゴンを超至近距離で発射する。スナイパーライフルの弾を目の前で喰らったら、一溜まりもないだろう。
なんとこの一瞬でナイトモスキートが二機も撃沈した。
ノーマンは今、あり得ない光景を目撃している。
「何だ貴様はァ!!支援機だろ!後ろでスナイパーライフルを構えて弾を飛ばすことしかできない、無能陰キャスナイパーだろォ!!なんでそんな動きができるんだァ!!」
ノーマンの怒りが最高潮にまで達し、他のナイトモスキートを退けてヒート・スピアーでの攻撃を仕掛ける。
「私にはっ!私にはっ、アサミさんがついてるっ!!負ける道理は━━……ない!!」




