多勢に無勢
パールスペック︰ドラゴンの銃口が火を吹く。それと同時に、足場にしているディーネウンの主砲からも一直線に弾が飛んでいくのが見える。狙いは、三隻ある敵艦の内、その真ん中の艦である。真ん中の艦を撃破すれば、撃沈していった時のその爆発によってその隣の二隻も同時に落とせる可能性ができるからである。
無理と思うかもしれないが、ディーネウンの艦長も、はたまたラァラも、別にそんなに都合よく事が片付くとは思ってはいない。
ただ、できることがあれば最大限の策を持って相手をするべきだ。
これが、戦争の基本である。
しかし、策が通じない相手というのもいるものである。
「敵艦とASCOFからの同時射撃!2秒後に着弾!」
「舵を切れ!主砲が当たらんように、尚且つ狙撃弾も意味をなさない程度に避けるんだ!」
「了解!」
「……。艦長、こちらの狙撃と主砲、着弾が確認できません……」
「マリンスノウ准尉。こちらも確認できた。確かに当たっていないようだ。もう一度射撃をするか?」
「いえ、私は右の艦を攻撃します。そちらは引き続き中央の艦の攻撃を続行してください」
「了解した」
冷静な対処。
マリンスノウは艦長たちにそう思わせているだけであった。
内心、焦りと同様が隠しきれなくなっていく。
(な、なんで!?予測射撃も完璧だった……。なのに、主砲は愚か、狙撃も当たらないってどういうこと!?そんな事ありえるの!?そして何より、一番気がかりな点……)
そう、当たらなかった、というのは結果論に過ぎない。問題は、敵が『なぜ避けられたのか』である。
距離は完璧、ラァラの予測射撃も素晴らしい精度での射撃だった。なのに当たらないということは、何か敵に裏がある、と考える事もできる。
これはあくまで予想に過ぎないのだが、にしても先程の避け方は、まるでその攻撃が分かっていたかのような避け方だった。
ラァラは再びスコープを覗く。
今度は右の敵艦を狙って。
”パァンッ”
パールスペック︰ドラゴンの甲高い銃声が鳴り響く。
”キィン”
勿論、コッキングも忘れない。
レバーを引いて戻す。
その間に敵艦への攻撃が成功したか否かを見るのだが……。
「━━やっぱり」
またしても敵艦は不自然な動きで弾をギリギリのところで避けて見せる。勿論、下のディーネウンからも主砲の重い音と振動が伝わってきたが、中央の敵艦はびくともしていない。
ここで、ラァラは確信に至る。
「か、艦長!!やっぱりおかしいです!敵が不自然な動きで避けてる……。きっと彼らは、『後方の敵支援艦を叩け』とか、そんな命令でこちらに特攻まがいの攻撃方法を仕掛けてきたんじゃないですか!?」
「あぁ、私も考えていたところだ。色々と考察ができるが、まぁ、その線が一番妥当と言わざるを得ないか。それで、どうすればいいと思う?マリンスノウ准尉?」
「背を向けて逃げでもしたら、そのまま<イカロス>への進行を許してしまう形となっちゃう……。だったら、このままこちらも攻撃を続けるしか━━……!艦長!モニターを!」
ラァラの視界に写ったおぞましい光景を、艦長にも共有した。
「……な……。まさか、ASCOFか……?」
ディーネウンのメンバーの目に写ったのは、三隻の艦から大量に出てくるナイトモスキートの大群。数だけで言えば、ざっと90はいる。
その光景をみて、信じられないとでも言うかのように、ラァラの口から自然と言葉が出た。
「……一隻対、90……。多勢に無勢……」




