絶交と敗北と約束と音色
「ま、待って、アサミさん。実は、もう一つだけ、スノウラビットに機能を実装したんだ」
「えっ、そうなの?早く言ってよ!?」
これは、アサミとマルコヴナの会話の続きである。
「あぁ。でも、その機能は、なるべく━━いや、絶対に使わないでほしいんだ。もしその機能を使うって言うなら僕はアサミと、絶交する!」
どんな機能かも説明されていないアサミには、それは流石に納得しかねる言動であった。
「いやいや。何でっていうか、嫌だよ、そんなの!そもそもどんな機能なのかもまだ説明されてない!マルコがそう言う理由を聞かせて欲しい……!」
マルコヴナは、より一層険しい顔をしながら続きを話す。その様子は、どこか悲しそうだ。
「その機能は、パイロットに想像以上のとんでもない負荷をかける……。だからそれを使うと、アサミさんが死ぬかもしれないんだ……。だから頼む!俺だってッ!アサミさんと絶交なんてしたくないんだ!だから頼む!お願いだから!使わないでくれ……」
今でも、マルコの悲しい顔を、目を、表情を、覚えている。本当に苦しかったんだなって分かっている。
でも━━━━
「イナバシロウサギ、倒すなんて凄いィ!流石グラマス大佐だ!」
グラマスに助けられて遠くから戦いを眺めていたナイトモスキートが、クラッシュライノスの元まで近寄ってくる。
「おい、油断するなよ。ここは戦場だ。まだ落ち着いてるってだけで、戦いが終わってるわけじゃ……」
グラマスは言葉を紡ごうと続きを言おうとするが、何かの違和感に気づいて周りを見渡してみた。
「……何も、無いか」
何かがおかしい。なんだかは分からないが、本当に、何かが。
(なんだ……?何が足りない……?何かが無いんだ。でも、その何かが分からない……。考えるんだ。イナバシロウサギを倒した→イナバシロウサギが爆発した→じゃあそのイナバシロウサギを回収すべきだ。そうか、回しゅ……。あぁ、そうか、分かったぞ)
「おい、『イナバシロウサギ』がいねぇ!!お前ら、まだアイツはやられてねぇぞッ!!」
「━━???グラマス大佐、何言ってるんですか?」
「だから、何してくるか分からな━━。……?なんだ、これ、『雪』か?」
グラマスのクラッシュライノスのメインカメラに写ったのは、微量の光を放つ白い粒のような物だった。大きくなく、クラッシュライノスが手のひらをかざすと指先よりも小さかった。クラッシュライノスの手に触れた瞬間、溶けたのかそのままなのか消えていった。
「いや、雪なんて宇宙に降ってるわけ無いか……。じゃあなんだ?灰かなんかか?」
「な、何言ってるんですか?大佐?」
部下にはどうやら見えていないらしい。ということは、自分の周囲にだけこの雪のような粒が舞っているというわけなのか。益々訳がわからなくなってきた。
その時だった。
”キンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキン”
唐突に連続した金属音がこの場に鳴り響いてきた。
(なッ、なんだ!?この超高温で熱した鉄をハンマーで高速で叩いてるみたいな音はッ!?)
馬鹿みたいな例えだと思ったかもしれないが、実際にそんな音がしているのだ。それが遠くか、いや、近くか、それすらも分からない方角、距離から響いてくる。
「なッ、なんです!?この音は!?大佐!?」
どうやら部下の兵にも聞こえているらしい。
その音が4秒くらい続いた。
そして、次の瞬間。
”ドォオォォォォォォォンッ”
盛大な爆発音が近くから聞こえてきた。グラマスは周りを見渡す。すると、先程まで近くにいた部下の兵士のナイトモスキートが宇宙の闇に消えてしまいそうな黒い煙を出して爆発している。
「!?一体何が起きているんだ!?」




