苦痛の叫弾
流暢に会話してしまっていたが、まだ剣と拳の鍔迫り合いは続いている。そして、このまま行けば、お互いの武器が溶けて壊れる。
先にその不安に駆られたのはアサミの方だった。
アサミはコントロールマウスを思い切り後ろに引っ張り、スノウラビットを後退させる。その際、クラッシュライノスの拳は空ならぬ宙を切る。
「おいおい、ビビったのか?退くなよォ。こっからが楽しかったのに……。まぁいいや、アンタが退くなら俺がその射程を潰すだけだ」
ASCOFが成長したのは、何もスノウラビットだけではない。クラッシュライノスもである。
クラッシュライノスはバックパックにマウントさせていたヒート・ナックルを装備する。それだけでもアサミは初見なのだが、グラマスはそんな初見がどうとかの工程をすっ飛ばして、さらなる武装の装置を起動させる。
すると、ヒート・ナックルの右手の大きな五指が、関節とは反対方向にギチギチと音を立てながら曲がる。クラッシュライノスは全身が震え始め、まるで苦しんでいるようにも見える。その五指が関節とは反対方向に曲がると同時に、連動して手のひらから丸い筒状のような物が腕から出てくる。
「このヒート・ナックルを装備した時、全身の熱圧縮が腕に収束するようにさせてるんだ。それで最大火力で拳を叩き込もうってコンセプトなんだけど、実際に使ってみて、なんだか物足りなかったんだ。それで考えてみて、気づいた。拳で思っクソぶん殴ろうとするから力が分散するんだ、ってね。じゃあどうするか?簡単さ━━」
グラマスはスノウラビットの胴体目掛けて手のひらの筒状の物を向ける。
「力を一点に集中させて━━━、放つッ!!」
”ドォォォォォンッ”
まるで戦車の主砲のようなどでかい音が戦場に鳴り響く。その音と同時にスノウラビットに向かってきたのは、一つの火球だった。
まさか、何か丸い塊に熱で引火させて、エネルギーと一緒に放っているということだろうか。
「流石に喰らったら死ぬ!!」
スノウラビットは急激に背中のバーニアの火を強くし、弾を避けようとする。しかし、その弾のスピードが速すぎて、スノウラビットの右腕はとんでもない衝撃とともに吹き飛ばされた。
「ぐぅぅぅぅっ!!!!」
その弾が速すぎたせいか、一瞬、その衝撃に引っ張られる。
アサミはコックピットの揺れに耐えながらも、体制を立て直すことに成功した。スノウラビットの右腕は諦めた。と言うより、むしろ倒されていないことが奇跡だ。スノウラビットの機動力に今更、アサミは感謝している。
だがしかし━━
「だぁれがこれで終わりだと思ったんだァ!?溜まってる熱圧縮エネルギーは一発じゃ消費しきれねぇぞォ!?」
そう言って、またスノウラビット目掛けて弾を込め、発射の体制になる。
(時間は━━9分47秒……。後、13秒……13秒の時間稼ぎができれば……)
「グラマス?またちょっとだけおしゃべりしない?」
「またそうやって何か作戦のために時間稼ぎしようとしてるんだろ?そんなに甘くはないぜ、俺はよォ!」
そう言って、クラッシュライノスは熱圧縮弾を発射した。
(あと4秒……)
スノウラビットの胴体まで、もう数百メートルも無い。
(あと3秒……)
急激な速度で、弾は迫ってきている。
(あと2秒……)
もう弾が手を伸ばせば触れられる位置まで飛んできている。だが、逃げる気はない。
(あと1秒……)
メインカメラから弾が消えた。映らないくらい、迫ってきていたのだ。というより、もう胴体をかすっていた。
”ドゴォォォォッ”
盛大な爆発音が鳴り響いた。丁度スノウラビットの身長程の爆発と煙だ。
それは、グラマスが勝利を確信するには十分なものであった。
「ぃやったッ!遂にあのスノウラビットを、『イナバシロウサギ』を墜としたぞォ!」




