混乱、その後(のち)
跳び上がった純白のASCOFは、腰にあるナイフを取り出し、逆手持ちにし、頭上の隕石(と思われる物)に向かって行く。
しっかりとカメラでそれを捕らえると、激しく燃えている隕石━━━いや、ASCOFを確認した。
「ASCOF!?なんで!?」
ただ、この燃え方は最早中のパイロットは生きていないだろう。それに、落下してくるのならもう隕石と何も変わらない。
純白のASCOF
白い雷は、そのまま燃え盛りながら墜ちてくるASCOFとすれ違った。
数秒後、激しく燃えているASCOFは、
”ドゴォォォォォォン”
空中で、地面に被害を出さずに爆発した。
しかし、高度の高い場所で、アサミは思う。
「……あれ、これどうやって帰ろう……」
”プスップスッ”
同時に、バーニアから吹き出る炎が消えた。燃料のバッテリー内の電気が消えたのだ。
「━━あ」
純白のASCOFは、<イカロス>の重力に引かれ、パーツをボロボロ落としながら落下していく。
それを見ていたテイムはとにかくその場から引いた。いくらバーストタイガーでもASCOFの直接的な落下に耐えられるほど頑丈にできていないからだ。
数秒後、
”ズドォォォォォン”
ものすごい勢いで純白のパーツとASCOFの素体が降ってきた。先程まであれほど白く、輝いて見えたASCOFは、最早、影も形も残っていなかった。
しかし、落下してきたパーツもASCOFも無傷に近い状況であり、装甲に関してはその白さを保ったままであった。
目を覚ますと周りのコンクリートはめくれ上がっていた。
瓦礫と化した道路から這い上がるようにアサミはASCOFから飛び出した。
その様子を見ていたテイムであったが、その姿を見てバーストタイガーの中で驚愕して思わず声を上げた。
「お、女ァッ!?」
バーストタイガーの足元まで歩んだアサミは突然、後ろから光に照らされた。
それはアサミの頭上からであり、その光の元を辿っていけばそこにはヘリコプターがあり、アサミの後ろとバーストタイガーの後ろ(アサミの目の前)、その前後からは硬そうな装甲の戦車が2〜3機、迫ってきている。
”バラララララララ”
”キャルキャルキャルキャルキャル”
前からも後ろからも、静かな街中をやけに騒がしくしている。
その数秒後、両手を頭の後ろに回していたアサミは、呆気なく捕らえられた。最早、降伏に近かった。いや、もう降伏していたのだ。
アサミの乗っていたASCOFは、奇跡とも言うべきか、傷はよく探さないと見当たりもしない程度であった。
”バンッ”
アサミの目の前に大きな手が突如として現れ、目の前に広がる真っ白な机を勢いよく叩いた。
「何で勝手にASCOFに乗り込んだ!理由を話せ!」
(━━この質問、もうこれで176回目……)
アサミは今、殺風景で真っ白な部屋にいた。どうやら軍の中の取調室らしい。『軍』というワードを、脅しのために何回か使われたのを覚えている。
「だから何度も言ってるじゃないですか!落ちてくる隕石が見えて、それを止めようとしてASCOFを起動させて乗り込んだんです!」
「だからって、誰が乗っていいと言ったんだ!?我が軍のエリートパイロットでさえ、出撃許可が無ければ出撃した瞬間に死罪だぞ!」
確かに。いやいや。何納得してるんだ。
「━━じゃあ、あのまま放っておいたら軍は地面に被害を出さずにアレを破壊できたんですか!?」
「……」
取調官は黙ってアサミを見下したままである。
それに対してアサミは苦笑とともに取調官を見つめた。
「━━無理ですよね……?てか、被害が出るどころか、火の海になってたかも?いや、そもそも<イカロス>が残ってるかどうかすら怪し━━」
「ッ!━━ッ!」
話している途中でアサミは言葉を止めた。
目の前の取調官が今にも血管が弾け飛びそうな顔をしていたからである。
その時だった。
「まあまあ、いいじゃないですか。━━私に変わってください」
聞いたことのある声だった。
名も知っている。
アサミはその男の顔を見上げ、名前を呟いた。
「━━ピーター、ウィッグネン……さん…!」
「やぁ。覚えててくれて光栄ですよ、アサミ・イナバさん……」
ASCOFは素体に装甲を装備することで完成する。なので、フレームの状態で既にそのASCOFの未来は8割型決まっていると言っても過言ではないのだ。




